牛乳頭腫症ワクチンなく切除で

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特徴

牛乳頭腫症パピローマウイルス科の牛パピローマウイルスによって起こる牛の腫瘍。品種や年齢、性別にかかわらず、体表皮膚や粘膜のさまざまな場所に発生するが、未経産の乳用雌牛に比較的発生しやすい。

発生頻度は非常に高いが、一般的に良性の経過をたどるため、本症によって牛が死亡することはほとんどない。搾乳牛の乳頭部皮膚に腫瘍が発生して乳頭が変形し、機械による搾乳ができなくなる事例が国内で発生している。

原因ウイルスは29種類の型に分けられており、乳頭部の病変からは1、2、6型が頻繁に検出される。1、2型は例外的に、牛以外の動物(馬や水牛)へも感染する。主な病気の広がり方は、感染牛の病変からウイルスを含む皮膚片が剥がれ落ち、それらが健康畜の皮膚へ付着することによる。皮膚に付着したウイルスは長期間感染性を保っており、擦り傷や除角などによって傷口から皮膚の奥へと侵入して感染し、発症する。


対策

現在、利用可能なワクチンはない。発症牛では形成される腫瘍の形や部位によって、切除可能であれば切除する。

切除できないものにはサリチル酸やヒノキチオールを成分とする薬剤を病変に塗布するが、効果は限定的である。吸血昆虫による皮膚の刺咬(しこう)傷も乳頭腫の発症の原因の一つとなることから、昆虫駆除対策が牛乳頭腫症のまん延防止に役立つ。

[写真:牛乳頭腫症によって変形した牛の乳頭]

(動物衛生研究部門 畠間真一)

参考情報

・動衛研ニュース 新型牛パピローマウイルスによる難治性牛乳頭腫症の集団発生
・成果情報 牛パピローマウイルスを効率的に検出するPCR法


情報公開日:「家畜疾病図鑑」『日本農業新聞』 2012年3月28日、16面に掲載。

情報更新日:2021年3月15日

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