牛ウイルス性下痢持続感染牛により感染が拡大

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届出
伝染病

牛、水牛

特徴

牛ウイルス性下痢牛ウイルス性下痢(BVD)は、ウイルスを病原体とする牛および水牛の届出伝染病であり、日本を含む世界各地に常在している。本疾病は主に鼻の粘膜からウイルス感染が起こること、BRDC(Bovine respiratory disease complex)と呼ばれる牛呼吸器病症候群の一因とされることなどから呼吸器感染症としての側面を強く持つが、実際には牛の全身性感染症である。

通常の感染では軽度の発熱や下痢などの軽度の症状を示すのみだが、妊娠牛に感染した際にはウイルスが胎子に伝播し、流産や死産、奇形子牛の分娩が起こる。受精後概ね3ヶ月未満の胎子への感染では胎子が生涯ウイルスを持ち続ける持続感染牛となる。持続感染牛は虚弱もしくは発育不良を示すことが多いとされるが、明確な症状を示さないまま長期間飼育されることも珍しくない。持続感染牛の体液には相当量のBVDウイルスが含まれることから尿などの排泄に伴い農場内を汚染して新たな感染を引き起こす。

 また、持続感染牛は消化管の粘膜が冒され、食欲減退や持続性下痢を起こす致死的な粘膜病を発症することもある。粘膜病は農場内の他の持続感染牛に伝播することが多く、この様なケースでの被害は甚大となる。


対策

一過性の感染では抗体産生に伴い体内のBVDウイルスは消失し回復するが、持続感染した個体を治療する方法はない。この為、基本的な衛生対策およびワクチンによる感染予防に加え、持続感染牛の早期発見と淘汰が重要である。

ワクチンは特徴の異なる複数の製品が販売されており、BVDウイルスの亜型および牛の発育段階に合わせた接種プログラムが構築できる。農場へのウイルスの持込みを防ぐ為、車両等の消毒や導入時の検査による持続感染牛の摘発に努める。胎子の感染は母体の検査では確認出来ないことから、妊娠牛を導入した場合には分娩後に新生子牛の検査を実施する。

[写真:粘膜病を発症し、痩せ細った持続感染牛]

(動物衛生研究部門 亀山健一郎)

参考情報

・家畜の監視伝染病 牛ウイルス性下痢


情報公開日:「家畜疾病図鑑」『日本農業新聞』 2011年6月22日、14面に掲載。

情報更新日:2021年3月15日

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