トリパノソーマ病
血液に潜む寄生原虫、国内への侵入阻止が重要!

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届出
伝染病

牛、水牛、馬

特徴

トリパノソーマ病トリパノソーマ病は、紡錘形で単一核を有し、一本の鞭毛をもつトリパノソーマ原虫の感染に起因する発熱・貧血を伴う疾病で、牛、水牛、馬の届出伝染病である。本病の病原体には、動物の血液中で増殖するトリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei、以下ブルセイ、以降ついても同様)、トリパノソーマ・コンゴレンス(T. congolense)、トリパノソーマ・バイバックス(T. vivax)、トリパノソーマ・エバンシ(T. evansi)、トリパノソーマ・タイレリ(T. theileri)、および馬の尿道・膣粘膜下織に寄生するトリパノソーマ・エキパーダム(T. equiperdum)が含まれる。このうちブルセイ、コンゴレンス、バイバックスの3種(アフリカトリパノソーマと呼ぶ)はツェツェバエ、エバンシおよびタイレリはアブやサシバエの吸血によって媒介されることが知られ、一方でエキパーダムは媒介昆虫なしで伝播する唯一のトリパノソーマであり交尾によって馬が感染する。日本国内にはタイレリのみ分布している。

アフリカトリパノソーマは牛に貧血、発熱、衰弱を起こし、種によってヒトに致死性の睡眠病を起こすが、ツェツェバエの生息地帯が限定されるため国内への侵入・定着の可能性は低い。エバンシによる動物の感染症はスーラ病と呼ばれ、貧血、発熱、削痩、ショック用症状などの急性・慢性症状を起こす。タイレリは通常は不顕性感染であり、合併症などがない限りは単独で病原性を示すことはない。エキパーダムは馬の外部生殖器の炎症と皮膚の浮腫を引き起こし、ときに50%以上の死亡率を示す。


対策

トリパノソーマ原虫は細胞表面のタンパク質を頻繁に変異させるため、ワクチン開発が困難である。そのため発生地域での予防は媒介昆虫の駆除が基本であり、殺虫剤や捕獲トラップなどが用いられる。日本国内においては、発生地からの動物輸入の禁止により病原体の侵入を阻止するほか、発病動物を摘発・淘汰して感染拡大を防ぐことも重要である。治療を行う場合はジミナゼン製剤などを筋肉内注射により投与する。

[写真:血液中に認められるトリパノソーマ・ブルセイ(家畜の監視伝染病)]

(動物衛生研究部門 西森朝美)

参考情報

・家畜の監視伝染病 トリパノソーマ病
・動物衛生研究所成果情報 エゾシカから初めて分離されたトリパノソーマ原虫


情報公開日:2019年7月10日

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