家畜伝染病

豚コレラ(classical swine fever, hog cholera)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:豚、いのしし

1.原因

 

 原因はRNA型ウイルスのフラビウイルス科ペスチウイルス属の豚コレラウイルス(classical swine fever virus)で、ゲノムは約12.3 kbの線状一本鎖(+)RNAである。抗原的には単一で血清型はないが、遺伝子型では少なくとも3型に分類されている。病原性の違いによってウイルスは高病原性株、低病原性株、生ワクチン株に分けられる。

 

 

2.疫学


 豚及びイノシシが感受性動物で、季節や性別に関係なくすべての発育段階において発症する。感染は罹患動物との直接接触の他、鼻汁や排泄物の飛沫・付着物との間接接触により起こる。侵入すると瞬く間に畜舎内に拡がる。わが国では清浄化に成功し、本病は海外伝染病に準ずる扱いとなっている。

 

 

3.臨床症状


 高病原性株の感染では100%の死亡率で、典型的な臨床症状はなく、発熱、食欲不振、うずくまりといった一般的な症状で始まる。さらに結膜炎、リンパ節腫脹、呼吸障害、便秘に次ぐ下痢がみられ、後躯麻痺や運動失調、四肢の激しい痙縮等神経症状が現れる。最終的には起立困難となり、急性経過の場合には1日以内に死亡する。慢性経過の場合にはこうした症状を繰り返し半数が1ヶ月以内に死亡するとされる。

 

 

4.病理学的変化


 臨床症状を呈して経過が長い場合には臓器の充出血が目立つ。特に膀胱粘膜の点状出血、リンパ節の髄様出血、腎皮質の点状出血がみられる。

 

 

5.病原学的検査


 扁桃の凍結切片を作製し、市販診断用蛍光抗体を用いて抗原を検出する。ウイルス分離は扁桃、脾臓、リンパ節等の乳剤の他、血清を含め血液を使用して豚培養細胞に接種する。増殖しても細胞変性効果を示さないためにその確認と同定のために市販診断用蛍光抗体を用いる。ウイルス遺伝子の5'非翻訳領域のRT-PCRは検出効率が高いが、BVDウイルス等も検出される上コンタミの問題もあるため補助診断にとどめる。当研究所ではモノクローナル抗体を用いた抗原識別が可能である。

 

 

6.抗体検査


 市販ELISAと中和試験が利用可能である。ELISAは中和試験のように生ウイルスを扱わず、数時間で判定可能であるものの、BVDウイルス抗体も検出することから注意が必要である。抗体識別のためには豚コレラウイルスとBVDウイルスの比較中和試験を行う。中和試験は増殖に細胞変性効果を伴わないことから通常判定時に酵素染色を行うが、特殊な細胞株を用いることにより細胞変性効果による判定も可能である。

 

 

7.予防・治療


 予防的使用のワクチン接種は平成18年3月31日をもって事実上禁止された。防疫措置に関しては豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針及びそれに係る留意事項に従い実施することとされている。

 

 

8.発生情報


 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 

9.参考情報


 豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針(平成25年6月26日)

 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第3版(近代出版)

 OIE: Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals 2013

 OIE: Terrestrial Animal Health Code (2013)

 OIE: Technical disease cards

 わが国における豚コレラの清浄化:畜産技術、第627号、30-33 (2007)
 豚コレラ解説
 

 最近の家畜衛生をめぐる情勢について:農林水産省・消費・安全局・動物衛生課(平成23年10月)

扁桃の陰窩上皮細胞の特異的な緑色蛍光
写真1:扁桃の陰窩上皮細胞の特異的な緑色蛍光

編集:動物衛生研究所・動物疾病対策センター・疫学情報室、文責:国際重要伝染病研究チーム、山田俊治

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