届出伝染病

伝染性胃腸炎(transmissible gastroenteritis of swine)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:豚、いのしし

1.原因

 

 コロナウイルス科(Coronaviridae)、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属する豚伝染性胃腸炎ウイルス(Transmissible gastroenteritis virus:TGEV)。ウイルス粒子は直径約100nmの球形または不定型で、エンベロープの表面に放射状に突き出たスパイクを持つ。ゲノムはプラス一本鎖RNAである。血清型は単一。同じアルファコロナウイルス属の豚流行性下痢(PED)ウイルスとはウイルス中和法や蛍光抗体法による交差反応性はない。しかし、豚の呼吸器より検出される豚呼吸器コロナウイルスは腸管親和性を失った遺伝子欠失変異株であり、ウイルス中和試験や間接蛍光抗体法によりTGEVと区別できないため、本病の診断にあたっては注意が必要である。

 

 

2.疫学


 主に冬から春にかけて発生するが、近年は4月から6月にかけて発生が多い。清浄農場にウイルスが侵入した場合は、ウイルスは急速に農場内に伝播し爆発的な流行を起こす(流行型)。通常、発生は数週間で終息するが、頻繁な種豚導入を行う農場や大規模一貫経営農場などでは感受性豚が連続的に供給されるためウイルスが農場に常在することがある(常在型)。ウイルスは、ウイルス保有導入豚や犬や猫など豚以外のウイルス保有宿主、汚染された器具機材や車両を介して農場に侵入する。感染豚は糞便中にウイルスを排泄し、経口または経鼻感染によって伝播する。

 

 

3.臨床症状


 食欲不振、元気消失に続く嘔吐と激しい水様性下痢を特徴とする。日齢を問わずに感染するが、発病率と致死率は幼齢豚ほど高い。妊娠・分娩豚では泌乳が低下または停止するため、哺乳豚の飢餓が誘発され致死率が高まる。常在型の場合、下痢は軽度で死亡率も低く、ロタウイルスや大腸菌感染による下痢に類似している。

 

 

4.病理学的変化


 肉眼的に胃の膨満と未消化凝固乳の貯留、小腸での未消化凝固乳または黄色泡沫状漿液の貯留と粘膜の菲薄化がみられる。組織学的には粘膜上皮細胞の変性・壊死による小腸絨毛の萎縮が認められる。

 

 

5.病原学的検査


 発症初期の小腸凍結切片または小腸粘膜スメアを用い、蛍光抗体法または免疫組織化学法により粘膜上皮細胞中のウイルス抗原を検出する。ウイルス分離には豚腎または豚精巣由来株化細胞を用い、材料のトリプシン処理と維持培地へのトリプシン添加が推奨されるが、分離は困難である。RT-PCR法による糞便中ウイルス遺伝子の検出は迅速性に優れ、豚流行性下痢(PED)との鑑別に有効である。また、前述の豚呼吸器コロナウイルスとの鑑別にはS蛋白遺伝子5'末端の遺伝子欠失部位を挟むようなプライマーを用いたRT-PCR法が有用である。

 

 

6.抗体検査


 中和試験により急性期と回復期のペア血清で抗体価の有意上昇を確認する。海外では豚呼吸器コロナウイルス抗体とTGEV抗体を識別できるELISAが市販されている。

 

 

7.予防・治療


 農場の出入り管理と衛生対策を組み合わせたバイオセキュリティー対策によりウイルスの侵入・蔓延防止に努める。また、乳汁免疫の誘導を目的とした母豚接種ワクチン(弱毒生ワクチンと不活化ワクチン)が市販されている。発生時の治療は二次感染防御のため抗生物質投与、脱水防止の補液投与等の対症療法が主となる。

 

 

8.発生情報


 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 伝染性胃腸胃炎・発生情報(2004年以前)


 

9.参考情報


 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第3版(近代出版)
 Diseases of Swine, 10th edition (Wiley-Blackwell)

 OIE: Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals 2013

 OIE: Terrestrial Animal Health Code (2013)


編集:動物衛生研究所動物疾病対策センター疫学情報室、ウイルス・疫学研究領域 宮崎綾子

(平成24年9月3日 更新)

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