届出伝染病

豚流行性下痢(porcine epidemic diarrhea)

牛鹿馬めん羊山羊豚家きんその他家きんみつばちその他家畜
対象家畜:豚、いのしし

1.原因

 

 コロナウイルス科(Coronaviridae)、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)に属する豚流行性下痢ウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus: PEDV)。ウイルス粒子は直径約95〜190nmの球形または不定形で、エンベロープの表面に放射状に突き出たスパイクを持つ。ゲノムはプラス一本鎖RNAである。血清型は単一。同じアルファコロナウイルス属の伝染性胃腸炎ウイルスとはウイルス中和法や蛍光抗体法による交差反応性はない。

 

 

2.疫学


 近年アジア各国で流行発生が報告されている。日齢や季節を問わず発生するが、幼齢豚ほど症状が重く死亡率も高い。ウイルスは糞便中に排泄され、経口または経鼻感染で伝播する。抗体陰性農場では爆発的に流行する(流行型)。また、頻繁な種豚導入を行う農場や大規模一貫経営農場などでは感受性豚が連続的に供給されるためウイルスが農場に常在することがある(常在型)。農場や豚舎内での伝播は伝染性胃腸炎に比較して遅い。

 

 

3.臨床症状


 食欲不振、元気消失に続く水様性下痢が特徴で、伝染性胃腸炎に酷似するが嘔吐の割合は低い。10日齢以下の哺乳豚では脱水によりほぼ100%が死亡する。日齢が進んだ豚では軟便にとどまり、致死率も低下する。母豚では泌乳減少や停止が起こり、哺乳豚の死亡の要因となる。常在型では、新たに離乳舎や育成舎へ移動した豚が移動後2〜3週間で下痢を呈することが報告されている。

 

 

4.病理学的変化


 肉眼病変は小腸腸壁の菲薄化と未消化凝固乳の貯留。組織学的には小腸腸絨毛の萎縮と粘膜上皮細胞の空胞化、扁平化、壊死および脱落が観察される。

 

 

5.病原学的検査


 発症初期の小腸、特に空腸下部から回腸にかけてのホルマリン固定・パラフィン包埋切片を用いた免疫組織染色によるウイルス抗原の検出を行う。培養細胞を用いたウイルス分離は困難である。RT-PCRによる糞便中のウイルス遺伝子検出は迅速性に優れ、伝染性胃腸炎との鑑別に有効である。

 

 

6.抗体検査


 ウイルス中和試験により急性期と回復期のペア血清で抗体価の有意上昇を確認する。

 

 

7.予防・治療


 農場の出入り管理と衛生対策を組み合わせたバイオセキュリティー対策によりウイルスの侵入・蔓延防止に努める。また、乳汁免疫の誘導を目的とした母豚接種ワクチン(弱毒生ワクチンと不活化ワクチン)が市販されている。発生時の治療は二次感染防御のため抗生物質投与、脱水防止の補液投与等の対症療法が主となる。

 

 

8.発生情報


 監視伝染病の発生状況(農林水産省)

 

 豚流行性下痢・発生情報(2004年以前)


 

9.参考情報


 獣医感染症カラーアトラス第2版(文永堂)、動物の感染症第3版(近代出版)
 Diseases of Swine, 10th edition (Wiley-Blackwell)
 豚流行性下痢 (PED)


編集:動物衛生研究所動物疾病対策センター疫学情報室、文責:ウイルス・疫学研究領域 宮崎綾子

(平成24年9月3日 更新)

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