魚粉に起因する鶏の筋胃糜爛

すでに過去の中毒として忘れ去られていた,魚粉による鶏の筋胃糜爛が最近散発しています.私が確認しただけでも,西日本の3県でブロイラーあるいは産卵鶏の筋胃糜爛が発生しています.

このうちの2県の事例では,飼料にエクアドルから輸入した魚粉が使用されており,そのうちの一例では,当該魚粉による再現試験で筋胃糜爛が発生することが確認されています.(2000.11.12現在)

後述のように,中南米産の魚粉には有害なものがある可能性が高いので,その使用には注意が必要です.

筋胃糜爛の原因

鶏の筋胃糜爛はいろいろな原因でおこりますが,最も重要なのは有害な魚粉による筋胃糜爛です.我が国では,1970年代後半にブロイラーの筋胃糜爛が多発しました.その際に行われた研究から,この原因は飼料に使用されていた魚粉で,魚粉が有毒になるにはその製造法に問題があることが明らかになりました.

魚粉は,原料の煮熟による蛋白質の凝固,固形分と水溶性成分(フィッシュソリュブル)の分離,フィッシュソリュブルの濃縮と固形分への再添加,乾燥といった工程を経て製造されます.乾燥工程では,多くの場合スチームによる間接加熱法が用いられています.しかし一部ではバーナーの火を直接原料に当てる直火式の乾燥法が用いられており,このような方法で魚粉が高温にさらされると,有害物質が生成します.

フィッシュソリュブルには,遊離のアミノ酸が多く含まれています.特に,赤身魚といわれるイワシやサバのフィッシュソリュブルには,ヒスチジンが多く含まれています.このヒスチジンが,魚粉蛋白と高温下で反応し,有毒物質が生成します.この時生成する主要な毒性物質はジゼロシンと呼ばれています.

有毒物質の生成には,フィッシュソリュブル中のヒスチジンが重要です.いわゆる白身魚のタラなどのフィッシュソリュブルには,ヒスチジンがほとんど含まれていません.したがって,タラなどの白身魚を原料としている場合には,乾燥工程で高温にさらされても有毒物質はほとんど出来ません.

以上のように,イワシやサバなどの赤身魚を原料とした魚粉が乾燥工程で過熱された場合に限り,有毒物質が出来ます.

1970年代後半のブロイラーの筋胃糜爛の多発とその原因解明を契機に,我が国の魚粉製造工場のほとんどが間接加熱乾燥方式を採用するようになりました.このため,国内産の魚粉は安全といえます.しかし,中南米諸国ではアンチョビーなどの赤身魚を原料に,いまだに直火式の乾燥法で魚粉を製造している工場も多いようです.

筋胃糜爛の症状

有害な魚粉を摂取すると,鶏は飼料摂取量の低下,増体量の減少,産卵率の低下などを呈します.また,筋胃糜爛に特徴的な症状として,黒色の吐物の排出があります.このため,筋胃糜爛は黒吐症とも呼ばれます.

これは,有毒物質によって胃液の分泌が亢進すること,消化管平滑筋が弛緩することなどにより,胃酸で黒色となった筋胃の出血が吐出されるためです.

解剖所見は,筋胃ケラチノイド層の脆弱化および剥離,筋胃粘膜の糜爛や潰瘍,腺胃粘膜の浮腫などが見られ,重症例では筋胃壁の穿孔も見られます.

魚粉の検査法

もっとも確実な方法は,ブロイラーの初生雛を用いた生物検定法です.市販の配合飼料に被検魚粉を20%混合したものをブロイラー初生雛に7日間給与し,剖検して筋胃の病変の有無を調べます.

また,主要な毒性物質であるジゼロシンは機器分析が可能です.独立行政法人農林水産消費安全技術センターで実施可能ですので,必要と判断される場合は依頼してください.

参考文献

宮崎茂,ブロイラーの筋胃糜爛,家畜衛生試験場研究報告,90, 1-8 (1987).
宮崎茂,中毒 (「鳥の病気」(鶏病研究会)),146-149 (1995)

(2000.11.11 登録,2012.6.26 最終更新)

肥飼料検査所が農林水産消費安全技術センターへ改組になったことへの対応 

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