最近日本で発生した中毒の症例報告

 

硝酸塩中毒

硝酸塩中毒予防策としてのサイレージ調製,"畜産の研究, vol44, No12, p1357",1990,増子孝義(東京農大),サイレージ埋蔵中に、硝酸還元菌の働きによって硝酸態窒素が還元されて減少する。埋蔵初期には硝酸が還元されて亜硝酸が増加するが、さらに経過すると亜硝酸も還元されて減少する。

硝酸塩中毒が疑われた牛の急死例について,家畜衛生研修会(生化学),1990,倉上澪(埼玉大宮家保),自場生産イタリアンを使用していた酪農家で育成牛3頭が急死.血液凝固不全,心の出血,全身の循環障害が観察された.同居牛の血清中硝酸態窒素は30-114 μmol/dl,亜硝酸態窒素は2.7-8.2 μmol/dl.牧草の硝酸態窒素は6850 ppm.採草地には生ふんを施肥.

慢性硝酸塩中毒が疑われる牛の死流産の発生例,"全国家畜保健衛生業績抄録, No23, p91",1990,斉藤裕(宮城迫家保),1981-1989までの死流産12例で,粗飼料中硝酸態窒素が500 ppm以上,血中メトヘモグロビンが平均20.6%であった.

搾乳牛のメトヘモグロビン相対値に影響を及ぼす要因について,"全国家畜保健衛生業績抄録, No23, p91",1990,山里比呂志ほか(鳥取鳥取家保),粗飼料中の硝酸態窒素は自家飼料より流通飼料の方が高かった.飼料中硝酸態窒素量と血中メトヘモグロビンには正の相関があった.メトヘモグロビンが高値の個体では,Htの低下,白血球の増加,左転が見られた.

硝酸塩中毒の発生防止指導について,"全国家畜保健衛生業績抄録, No24, p80",1991,武田哲(岩手盛岡家保),硝酸塩中毒の発生した農家に対し,窒素施肥量,刈り取り時期,,偏った給与法を改善するよう指導し,次年度はサイレージの硝酸態窒素の低下等が見られ,周辺農家の意識向上もはかれた.

硝酸態窒素が搾乳牛に及ぼす影響について,"全国家畜保健衛生業績抄録, No24, p80",1991,田中一(鳥取鳥取家保),飼料中硝酸態窒素量と血中メトヘモグロビン量の関係,また疾病,乳質との関連について調査した.

硝酸塩中毒が誘因と思われる牛のHaemophilis somnus感染症,"畜産の研究, vol45, No3, p383",1991,桜井浩子ほか(長野家保),"導入50日目の褐毛和種1頭が死亡,2頭が起立不能.心,腎からH.s分離.血栓栓塞性髄膜脳炎像を観察し,H.s感染症と診断.尿から硝酸塩.給与青刈ソルゴーから5,000 ppmの硝酸態窒素.H.s誘因として各種ストレスが考えられており,本症例では硝酸塩中毒が誘因か?"

肥育牛に発生したヨード欠乏による甲状腺腫,"全国家畜保健衛生業績抄録, No24, p81",1991,梶原渉(北海道十勝家保),自家配一貫経営農家で咽喉頭部腫大が多発.2頭死亡.血漿蛋白結合ヨードの低下(0.9 μg/dl),甲状腺の腫大,濾胞内コロイド乏しい.飼料中ヨードは0.2 ppm以下で欠乏.飼料へのヨード添加(海草末)で続発無し.

育成牛における硝酸塩中毒の発生例と粗飼料中の硝酸塩含量の調査,"全国家畜保健衛生業績抄録, No24, p80",1991,倉上澪ほか(埼玉大宮家保),育成牛の急死例.血液はチョコレート色で凝固不全.全身的な循環傷害.血清硝酸態窒素0.5-1.6 ng/dl,亜硝酸態窒素37.5-115 μg/dl,給与していた夏イタリアンの硝酸態窒素は6850 ppm.県内の飼料の調査では,硝酸態窒素100 ppm以上の検体の37.5%は自家産,56.4%は輸入.

牧草中硝酸態窒素の実態調査,"全国家畜保健衛生業績抄録, No24, p81",1991,片山光正ほか(兵庫姫路家保),管内流通乾草の硝酸態窒素量を調査したところ,スーダン乾草では2000 ppmを越えるものが80%以上,4000 ppmをこえるものが20%であった.

高速液体クロマトグラフィーによる粗飼料中の硝酸態窒素の定量法の検討.,家畜衛生研修会(生化学),1992,田中実ほか(栃木家衛研),カラム:AsahiPak NH2-50,移動相:5 mMリン酸ナトリウム,100 mM過塩素酸ナトリウム,検出:UV210 nm.飼料の水抽出物をろ過後注入.

硝酸塩の関与が疑われた乳牛の流産,家畜衛生研修会(生化学),1992,丸尾喜之(兵庫姫路家保),輸入粗飼料使用農家で流産多発.スーダンで8000 ppm.母牛のメトヘモグロビンは4.3〜9.7%.

硝酸態窒素が関与したと思われる黒毛和種繁殖牛の急死例,"全国家畜保健衛生業績抄録, No25, p86",1992,内藤秀樹ほか(栃木宇都宮家保),成牛4頭が急死.粘膜貧血,肛門・外陰部弛緩,出血,消化管内に黒色水様物.胃内容に44μg/dlの亜硝酸態窒素.本農家では1日2回青刈りソルゴーを10kg給与していたが,急死前日に限り3回給与.ソルゴーの硝酸態窒素は4500 ppm.

粗飼料中の硝酸塩含量調査と継続投与が牛に与える影響,"全国家畜保健衛生業績抄録, No25, p87",1992,倉上澪(埼玉大宮家保),60戸の農家を調査したところ,スーダンの平均は2250 ppmで400 ppm以上が7検体.コーンサイレージの平均は1170 ppm.硝酸塩摂取量と乳汁中体細胞数に有意の相関.受胎率低下などの以上が認められる農家では平均3000 ppmの粗飼料を給与.

管内酪農家の粗飼料中硝酸態窒素濃度及び給与牛の血液性状調査,"全国家畜保健衛生業績抄録, No25, p87",1992,清水景子ほか(山梨東部家保),輸入スーダンで4000 ppm以上のものが見られた.血中亜硝酸態窒素は全例10 μg/dl以下であった.

飼料中の硝酸塩の関与が疑われた牛の流産,家畜衛生研修会(生化学),1993,柿野淳(秋田中央家保),外国産スーダンとルーサン(スーダン1784 ppm,ルーサン460 ppmの硝酸態窒素)を使用していた農家で流産.母牛の硝酸態窒素摂取量は1日20 gだが,流産胎仔の体液のMt-Hbは50%前後,硝酸態窒素が20 μg/dlと高かった.また,高DCP飼料で母牛のアンモニアが400 μg/dlと高かった.

コンパクトイオンメーターを応用した粗飼料中の硝酸態窒素の定量,家畜衛生研修会(生化学),1993,関根貴司(埼玉大宮家保),NO3イオン電極を用いたイオンメーターでの硝酸態窒素の測定法

乳牛の血中硝酸態窒素測定について,家畜衛生研修会(生化学),1993,安永圭介(愛媛中央家保),銅カドミウムカラムを用いた硝酸態窒素測定法の検討

糞尿処理水による豚の硝酸塩中毒,畜産技術,No12,2-4,1993,西田孝文(三重北勢家保),土壌細菌を利用した糞尿処理システムでの処理水を豚房内に散布したところ豚が急死.血液はチョコレート色など硝酸塩中毒を疑う所見.処理水の硝酸塩濃度は200〜50 0ppm(イオンメータ).処理水を飲水させた再現試験でも同様の症状を呈し急死.メトヘモグロビン相対値は高いものでは90%以上.

乳雄肥育牛に発生した甲状腺腫,"家畜診療, No371, p21",1994,松田寿彦ほか(NOSAI高知),1農家の9-10か月の乳雄肥育牛に甲状腺腫が集団発生.この農家は1年前から粗飼料としてコーンカブを使用.ヨウ化カリウムが著効.

摂取飼料及び第1胃内性状が牛の亜硝酸還元能へ及ぼす影響,家畜衛生研修会(生化学),1994,関根貴司(埼玉大宮家保),TDN充足率が低いと,亜硝酸還元能が低い.pH6〜7の間では,pHの影響は顕著でない.VFAとの関連では,酢酸/プロピオン酸比が2.75〜3.71の範囲を越えたものでは,還元能は低かった.

硝酸塩が関与したと思われるアカシカの急死例,家畜衛生研修会(生化学),1994,安里左知子(沖縄家畜衛試),アカシカ牧場で65頭が,食欲不振,嘔吐,起立困難,全身性痙攣で急死.豚の生糞尿を散布した採草地からの牧草を給与していた.牧草及び尿から高濃度の硝酸塩検出.血漿及び消化管内の亜硝酸塩濃度はやや高め.

飼料中硝酸塩の分析法(飼料分析基準), 畜産局長通達, 1995, 農水省, HPLCを使った飼料中硝酸塩分析の公定法

硝酸塩中毒診断のための血清中硝酸塩濃度の定量法, 畜産技術,1996年12月,p38, 1996, 蓮沼俊哉(富山東部家保)ほか, 飼料分析の公定法と同一のカラムを使った血清硝酸塩定量法を開発した.

ホルスタイン種経産牛の受胎時期の遅延要因に関する検討, 畜産の研究 50巻,1105-1108, 1996, 坂本斉ほか(北見共済), 乳牛の分娩後の硝酸態窒素摂取量と繁殖成績を調査.分娩後100日間の平均硝酸態窒素摂取量と,受胎までの日数には正の相関が見られた.

高濃度硝酸性窒素地下水給与例における乳牛の血液性状と疾病との関連性,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,英俊征ほか(神奈川県県央家保),乳房炎の多発等が見られた農家の飲水を調査したところ,硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の合計で17 ppmであった.粗飼料中硝酸性窒素濃度は低値.メトヘモグロビン相対値は異常群で高い傾向があった.

肉用牛繁殖農家に発生した急性硝酸塩中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成16年度),p76,2005,荒井理恵ほか(埼玉県熊谷家保),肉用繁殖和牛40頭飼養農家で,2頭が臨床症状を示さずに急死.感染症は否定.死亡前日から自給ソルゴー乾草を給与していた(8 kg).1頭の心嚢水から74 μg/ml,他の1頭の残血から68 μg/ml,ソルゴー乾草から8600 ppmの硝酸態窒素検出.以上のことから急性硝酸塩中毒と診断.圃場への過剰な生糞尿還元(16.8 t/10 a)が原因と思われたので農家指導.

黒毛和種繁殖牛に発生した硝酸塩中毒とその転帰,全国家畜保健衛生業績抄録(平成16年度),p76,2005,内山浩子(宮崎県宮崎家保),黒毛和種繁殖農家で,ローズグラスを給与した11頭中2頭が死亡,3頭が沈鬱,食欲低下.発症3頭のうち2頭は回復したが,1頭は回復せず廃用.飼料中硝酸態窒素は11000 ppm.血清硝酸態窒素濃度は,死亡牛66および44 μg/ml,発症牛18および11 μg/ml,非発症同居牛6 μg/mlであった.9日後には血清硝酸態窒素濃度は正常レベルに低下.廃用となった牛は中毒発生時には肺炎症状を示していなかったが,廃用時には肺炎,血清急性相蛋白も上昇.硝酸塩中毒が引き金になったものと推測.

その他の植物中毒

長期間のワラビ給与による血尿症の発生,"全国家畜衛生業績抄録, No22, p92",1989,小林政樹ほか(秋田北部家保),激しい血尿を示す症例(褐毛和種繁殖雌).廃用となり膀胱腫瘍と診断.本農家の採草地の20%にワラビが繁茂.乾草中に15.7%のワラビが混入.この乾草を長期間給与したことが本症例の原因と推察.

肥育牛に発生したキョウチクトウ中毒,"全国家畜衛生業績抄録, No22, p92",1989,小沢俊彦(山梨西部家保),"乳用肥育牛70頭に野草を給与したところ,全頭が下痢.重症例では呼吸困難・脱力.第4胃,小腸粘膜の充出血以外著変無し.,血清では血糖,BUNの上昇,コリンエステラーゼ活性の低下.野草中にキョウチクトウがあり野草,胃内容,血清から配糖体検出."

エビス草給与によると思われる乳用牛の起立不能の発生例,"全国家畜衛生業績抄録, No22, p92",1989,平井良夫ほか(長崎県南家保),1農家で全頭(9頭)に起立不能,歩様蹌踉,皮膚知覚麻痺,食欲不振等の症状.本農家では発症前18日間エビス草を給与.エビス草抽出物のラットマウス投与で全頭死亡.抽出物中にアントラキノン誘導体陽性であり,この中毒と思われた.

子牛に発生したイチイの急性中毒死,家畜衛生研修会(生化学),1991,五十嵐康博(北海道十勝家保),自由放牧子牛が起立不能,呼吸浅速,第1胃運動停止等を呈して急死.第1胃内にイチイの葉.また胃内容にアルカロイド反応.

慢性ワラビ中毒に起因すると思われる腫瘍性血尿症の発生事例,"全国家畜保健衛生業績抄録, No24, p80",1991,川戸彰弘ほか(山口東部家保),2産目分娩後血尿,削痩,浮腫で鑑定殺.膀胱粘膜の肥厚,出血,腫瘍.赤血球大小不同,アルブミン低下.疫学調査から,ワラビの継続的採食による慢性中毒と推察.

沖縄県のヘイレージ利用農家で発生した牛の銅欠乏症,"畜産の研究,Vol46, No2, p281",1992,仲宗根一哉ほか(沖縄県畜試),銅欠乏が発生した農家で給与していた粗飼料中からは十分量の銅が検出されたが,ヘイレージ給与量が高い群ほど血清銅が低値であった.これは,牧草が高温発酵でヒートダメージを受け,可溶性の銅が減少するためと考えられた.

キャラ中毒が疑われた牛の急死例,家畜衛生研修会(生化学),1992,陰山潔(千葉家衛研),呼吸困難,眼球振盪,後躯蹌踉で急死.血糖の著しい増加,CPK,乳酸,ピルビン酸も上昇.胃内容にアルカロイド陽性.パドックに沿った生け垣にキャラが植えられており,キャラ中毒(有毒アルカロイド;タキシン)と判断.

管内山間部に発生した肉用繁殖牛の血尿症,"全国家畜保健衛生業績抄録, No25, p86",1992,坂本崇(熊本中央家保),山間部の7農家で褐毛和種成牛に血尿.血清シアル酸,ムコ蛋白高値.うち4頭の膀胱粘膜に腫瘤.各農家ともワラビを混入した野草を給与していたので指導.

異臭乳の原因となる帰化植物「カラクサガラシ」,畜産の研究,50,371-375,1996,佐藤節郎(農水省九州農試),アブラナ科の越年性雑草であるカラクサガラシが九州を中心に侵入している.本草2.5-5 kg一日給与すると,翌日から二日間にわたり牛乳に異常臭が感知されるという.

モロヘイヤの実による牛の中毒,全国家畜衛生業績発表会,1997,濱口芳浩ほか(長崎中央家保),モロヘイヤの実のついた枝を牛に給与したところ,食欲不振,起立不能,下痢等の症状を呈し死亡.死亡牛の心臓およびモロヘイヤの種子から,強心配糖体のアグリコンであるストロファンチジンを検出.

アブラナ属雑草カラシナ類による中毒例,家畜診療,406,25-30,1997,西口示ほか(NOSAI兵庫),河原に自生していた草を繁殖和牛に給与したところ,妊娠牛3頭が食欲廃絶,衰弱,眼球振盪,起立不能等の症状を呈し,2頭が死亡.給与した草は西洋カラシナの一種(Brassica juncea (L.) Czern. et Cross.) と判明.本草からはアリルイソチオシアネートが検出された.

ピーナッツつる乾草を給餌した成肉牛の急性呼吸窮迫症候群,臨床獣医,Vol16,No.2, 46-56 1998, アメリカバージーニアでの症例.1993年,バージニア東部の多くの農場で,ピーナッツつる乾草を給餌した成肉牛に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が大発生.原因は確定されていないが,Fusarium属真菌が作るマイコトキシンによる中毒の可能性が高い.フモニシンではなさそう.

ヤギに見られたハナヒリノキ中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,太田洋一ほか(新潟県下越家保),観光公園で,道路脇の草木を給与されたヤギ7頭中5頭が,流涎,歯ぎしり,体温低下,元気消失等の症状を呈し,3頭が死亡.給与した草木中にハナヒリノキを確認.ハナヒリノキをマウスに経口投与したところ,ヤギと同様の症状を呈した.また,死亡ヤギの胃内容および臓器から,グラヤノトキシンIIIを検出.以上から,ハナヒリノキ中毒と診断.

一酪農家に発生したワラビ中毒とその対応,全国家畜保健衛生業績抄録(平成12年度),p75,2001,八木原幸子ほか(青森県弘前家保),酪農家で血尿症が散発.病理検査では膀胱腫瘍が主徴.自家産牧草には20%ほどワラビが混入.ワラビ中毒と判断し,ワラビ除去乾草の給与,土壌改良等を指導したところ,血尿症は減少.

黒毛和種におけるシキミ中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成12年度),p75,2001,小林弘明ほか(広島県東広島家保),黒毛和種繁殖農家で5頭が発汗,神経症状を呈し,うち3頭が死亡.当該農家は発症前にシキミ等を敷料に使用.死亡牛胃内容からシキミの葉を確認.給与粗飼料の硝酸態窒素濃度は低く,胃内容から主要な農薬は検出できなかった.当該シキミ葉投与マウスは元気消失,歩様異常等を呈した.また,シキミ葉からアニサチンを検出.以上から,シキミ中毒と診断.

オナモミ種子の摂取によると思われる牛の中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成12年度),p76,2001,小林貞仁ほか(長崎県中央家保),黒毛和種繁殖農家で,経産牛32頭にオナモミを含む青刈りソルゴーを給与したところ,2日後に16頭が沈鬱,起立困難,呼吸困難,神経症状を呈して全て死亡.第1胃内に多数のオナモミ種子.病理組織所見は,心の充出血,肝の出血を伴うびまん性小葉中心性肝細胞壊死,尿細管の変性壊死.種子抽出液をマウス腹腔に投与したところ全て死亡し,病理所見も死亡牛と同様であった.

輸入木材屑の敷料による馬の集団中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成12年度),p110,2001,渡邊英史(京都府南丹家保),乗馬クラブで,び爛性口内炎を主徴とする異常が発生.28頭中26頭に,口唇,鼻孔周囲の皮膚のび爛,鼻汁,流涎,肛門粘膜び爛.うち2頭が死亡.伝染性疾病否定.敷料に,南米産輸入木材(カセッター)の木屑を使用.文献調査で,同種の木材木屑を敷料として使用してたための中毒事例の報告.JRAで当該木屑の給与試験を実施したところ,野外例と同様の症状を再現.

野草(アオビユ・ハリビユ)による牛の硝酸塩中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成14年度),p77,2003,東山崎達生(鹿児島県北薩家保),和牛一貫農家で成牛4頭が急死.剖検所見で,空回腸粘膜の一部充血,第四胃粘膜の充血,肝臓の富脈班および実質の退色,心内膜の充血,血液凝固不全を観察.死亡牛の血清硝酸態窒素濃度は54 μg/ml.生存同居牛では16 μg/ml.給与粗飼料の平均硝酸態窒素濃度はおよそ1000 ppmであったが,多量に混入していたアオビユおよびハリビユの硝酸態窒素濃度はおよそ2000 ppmであった.以上より,混入雑草による硝酸塩中毒と診断.

放牧牛におけるワラビ中毒の発生と対応,全国家畜保健衛生業績抄録(平成15年度),p71,2004,岡野康行ほか(兵庫県和田山家保),2放牧場で繁殖牛60頭中2頭が,発熱,可視粘膜の出血を伴い死亡.下牧後も1頭が発熱し,1ヶ月後に死亡.血液所見ではヘマトクリットの低下と白血球の減少.病理所見では,外陰部および主要臓器の出血,腹水,胸水の貯留,肝の変性壊死,骨髄の脂肪化.7,8月の気温が平年より低くワラビの発育に好条件であった.直ちに下牧を指示し良質飼料の給与を指示したところ,9週目には貧血が回復.

管内放牧場におけるワラビ中毒の発生とその衛生対策,全国家畜保健衛生業績抄録(平成15年度),p72,2004,石倉洋司ほか(島根県益田家保),共同放牧場で3頭死亡.白血球数および顆粒球率の減少がみられワラビ中毒と診断.放牧牛の白血球数の推移を調査したところ,臨床症状は示さなくても白血球数,顆粒球率が低値の個体が多く,ワラビ採食の影響が疑われた.そこで,白血球数5000,顆粒球率20%を,放牧不可あるいは下牧の指標とした.

馬(ファラベラ種)に見られたドクゼリ中毒の発生例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成15年度),p104,2004,長内利佳ほか(宮城県古川家保),観光牧場で飼養していたファラベラ種の馬27頭中6頭が,突然旋回運動,歩様異常,痙攣等の神経症状を呈し,うち4頭が死亡.病理所見は,血液凝固不全,臓器の脆弱化,骨格筋退色,全身性出血等.ウイルスおよび細菌の関与は否定.給与飼料にドクゼリ混入.給与ドクゼリおよび死亡馬胃内容からシクトキシン検出.以上から,ドクゼリ中毒と診断.

ワラビ中毒とピロプラズマ症合併症の発生と対策,全国家畜保健衛生業績抄録(平成16年度),p75,2005,山本祐輔ほか(広島県備北家保),北海道から導入直後に放牧した乳用牛8頭および肉用牛1頭の計9頭が死亡.発熱,貧血,黄疸,点状出血等を観察.血液検査では,赤血球数400万以下,ヘマトクリット20%以下,白血球数4000以下.血液塗抹でプロプラズマ原虫.放牧地にはワラビが繁茂.以上から,プロプラズマ症とワラビ中毒の合併症と判断.

金属中毒

子牛の鉛中毒,"全国家畜衛生業績抄録, No22, p92",1989,清宮幸男ほか(岩手盛岡家保),発熱,食欲不振,歩行異常,視力障害,猛進,旋回運動,強直等を示した症例.大脳皮質神経細胞の変性,毛細血管内皮細胞の腫大・増数.肝及び腎の鉛含量はそれぞれ1.3及び9.4 ppm.水道管外側に塗布された防錆塗料を舐めた形跡があり,これからの汚染が疑われた.

銅中毒を疑う子牛の急死事例,"全国家畜衛生業績抄録, No22, p92",1989,新城健一ほか(東京都家保),"子牛が血色素尿を排し急死.赤血球著減,白血球増加,肝の小葉中心性壊死と胆汁栓の形成.γ-GTP,LDH,Bilの上昇等銅中毒を疑う所見.肝の銅含量は10.5 ppm(健康牛1.01 ppm)"

綿羊の銅中毒の発生例と原因究明,家畜衛生研修会(生化学),1990,吉沢重克(千葉家衛研),1農家の綿羊に血色素尿と黄疸を呈する死亡事故が続発.飼料(子牛育成用)中の銅含量は30 ppm.血清銅とGOTが高値.追跡調査から,網状赤血球率及びALAD阻害率が銅中毒の初期変化検出に有効と思われた.

和牛子牛に発生した鉛中毒,"全国家畜保健衛生業績抄録, No23, p91",1990,工藤善民(滋賀湖東家保),子牛2頭が嘔吐,起立不能,神経症状で急死.主要臓器のうっ血,胃内容物に金属粒.肝,腎から鉛検出.胃内容では170 ppm.鉄柵塗料にも41 ppmの鉛.鉄柵塗料摂取による鉛中毒と推察.

牛の鉛中毒例,"全国家畜保健衛生業績抄録, No23, p91",1990,大町深雪ほか(京都南丹家保),"起立不能,首をふる頭の症状を呈し1週間後に肺炎併発死亡例.牛房鉄柵には鉛含有錆止め塗料.消化管粘膜の黒色化,肝の凝固壊死ん,腎尿細管細胞の剥離.鉛濃度は,血液1.79 ppm,肝.92 ppm,腎4.09 ppm,脳4.01 ppm,小腸4.45 ppm,胃内容8.06 ppm."

和牛子牛に見られた鉛中毒,"家畜衛生研修会(生化学),全国家畜衛生業績抄録, No24, p80",1991,"小倉裕司(兵庫洲本家保),丸尾善之ほか(洲本家保)",2軒の農家で,子牛が旋回運動,流えん,起立不能等の神経症状で死亡.心・腎の出血.胃内容に塗料の剥離片.両農家とも,牛房鉄柵塗料の剥離が認められた.

成長ホルモンとセレンの要求量,"畜産の研究, vol44, No2, p231",1990,浜田龍夫,1989年,NRC飼養標準が改訂され,牛のセレン要求量が0.1 ppmから0.3 ppmへ変更された.要求量の7倍の2 ppm給与で中毒の恐れがあることから,米国では200 ppm程度のプレミックスを用い,これを適宜配合するようにしている.

黒毛和種育成牛に発生した銅欠乏症,家畜衛生研修会(生化学),1992,穂崎宏英(広島東広島家保),6か月の育成牛が被毛の褪色,眼窩周囲の脱毛等.イタリアン牧草の銅濃度が2.6 ppmで,欠乏が問題となる3 ppmより低かった.モリブデンは10 ppm以下だった.硫酸銅投与で徐々に回復.

めん羊の銅中毒の発生例について,家畜衛生研修会(生化学),1992,中川浩(北海道網走家保),育成綿羊が急死.眼結膜の貧血,肝細胞の変性壊死,腎尿細管上皮の変性,褐色顆粒の沈着.かんの銅含量は1255 ppm.ほ乳期子牛育成用飼料(銅含量30 ppm,中毒量100 ppm)を給与したためか?

漁網用ロープ内鉛が汚染源と考えられた子牛の鉛中毒,"全国家畜保健衛生業績抄録, No25, p86",1992,石川俊幸ほか(山形最上家保),子牛2頭が2-3週間ほど下痢,発熱等を呈して死亡.このうち1頭は流涎,暴走,痙攣等の神経症状を呈して死亡.腎,肝,脳から鉛(1.4-74 ppm).第2胃内からも鉛.本農家では頭絡等に中古漁網用ロープ使用.この芯には鉛が使われていた.

鉛中毒が疑われたコブハクチョウの病性鑑定事例,家畜衛生研修会(生化学),1994,菊池理之(茨城県北家保),湖岸にコブハクチョウの死体.筋胃内に釣り用鉛おもり.腎・肝から高濃度の鉛.腎糸球体の萎縮,近位尿細管の変性壊死,肝細胞の腫大空胞化,ヘモジデリンの沈着.

和牛繁殖農家で発生した子牛の鉛中毒,"36回九州・沖縄ブロック業績発表会(家畜衛生週報,p85, 1995)",1995,宮崎県,牛舎鉄柵塗料が原因と思われる鉛中毒の症例.

子牛に見られた慢性銅中毒の一症例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,中嶋久仁子ほか(鹿児島県南薩家保),110日齢の子牛が黄疸や血色素尿を呈して死亡.ルベアン染色で,肝および腎に銅陽性.剖検時の血清銅濃度は138μg/dl,肝銅濃度は352μg/g.当該牛は人工哺育期間用プレミックスを日量20〜60 g,銅として100〜300 mg摂取していた.以上より,慢性銅中毒と診断.

畜舎改装時に発生した牛の鉛中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,東條秀一(鹿児島県鹿児島中央家保),繁殖牛舎改装工事中に9頭が泡沫性流涎や起立不能等を呈して死亡.塗装工事で削ぎ落とした古い塗料の飼料への混入を確認.血液中鉛濃度は2.94 μg/ml(25頭平均),剖検牛の肝および腎鉛濃度はそれぞれ12.5および57.0 μg/gであった.塗料からは炭酸鉛が検出された.以上より,防錆塗料摂取による鉛中毒と診断.

和子牛に見られた白筋症を伴った鉛中毒.全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,野間進ほか(兵庫県和田山家保),和牛子牛6頭が,頚部振せん,歩様蹌踉,異常なうなり声等の症状を呈して死亡.全血鉛濃度は平均1.51 μg/ml.運動場にある尿溜めの塗料がはがれたトタン板を除去したところ,その後の発生無し.肉眼所見で骨格筋の退色,病理組織所見で,骨格筋の硝子様変性および塊状崩壊が見られたが,ビタミンEの欠乏はなく,筋肉の病変は鉛中毒に付随したものと思われた.

乳用牛の鉛中毒発生例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成12年度),p75,2001,福田修ほか(栃木県県北家保),乳用牛が集団で死亡.育成牛舎の防錆塗料再塗装後,塗料が生乾きの状態で牛を導入.使用塗料(「鉛丹プライマー」)は四鉛化鉛を含有.血液中鉛濃度は高値で,病理組織学的には急性の尿細管壊死を認めた.

黒毛和種牛に見られた鉛中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成13年度),p72,2002,仲嶺マチ子ほか(沖縄県家衛試),黒毛和種繁殖農家で,母牛5頭が食欲廃絶,神経症状等を呈し,1〜5日の経過で死亡.組織所見では,大脳髄膜の水腫,肝細胞壊死,腎尿細管上皮の変性等が認められた.大脳には自家蛍光無し.肝臓からおよそ9 μg/g,腎臓から90 μg/gの鉛を検出.飼料の鉛濃度は正常で,鉛の出所は不明.

子牛鉛中毒の発生例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成13年度),p72,2002,塩生光男(栃木県央家保),3ヶ月齢の黒毛和種子牛が突然狂騒状態,柵を跳び越え,呻吟,旋回,遊泳運動を呈して急死.一般血液性状,微生物学的検査,剖検所見には著変なし.有機リン,カーバメート,アンモニア中毒も否定.死亡牛の血清,肝および腎から高濃度の鉛.以上より鉛中毒と診断.前年に同様の症状で死亡した子牛のホルマリン固定肝および腎からも高濃度の鉛.牛舎鉄骨の錆と繋留に飼養していたリサイクルロープ(合成ゴムへ一酸化鉛を混合した漁業用高比重ロープ,現在製造中止)から高濃度の鉛検出.

白鳥の鉛中毒とホルマリン固定臓器における重金属測定の試み,全国家畜保健衛生業績抄録(平成14年度),p127,2003,鉛中毒を疑う白鳥の病鑑材料の鉛濃度を測定(n=5).生材料では,肝8.66 μg/g,腎11.08 μg/g,ホルマリン固定材料では,肝13.12 μg/g,腎10.38 μg/gであった.ホルマリン固定材料でも,重金属中毒診断の材料となりうることを確認.

子めん羊で発生した銅中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成14年度),p127,2003,望月洋ほか(山梨県西部家保),観光牧場の2ヶ月齢めん羊が,元気消失,食欲低下,血色素尿,チアノーゼ等を呈し死亡.以後同様の症状で5頭が死亡.当該農場では,牛用の人工乳と配合飼料を使用.病理所見では,全身の黄疸,肝小葉中心性壊死,肝細胞の空砲変性,マクロファージ系細胞への褐色色素の沈着がみられた.肝および腎の銅濃度はそれぞれ760 μg/g,55 μg/gであった.以上から,慢性の銅中毒と診断.

トナカイの銅中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成15年度),p104,2004,小川昭宏ほか(千葉県中央家保),動物園の7歳のトナカイが,数日の軟便後に急死.肝類洞内に緑茶色色素含有大食細胞,肝細胞に空胞,尿細管上皮に硝子様変性.銅染色で,肝細胞および類洞大食細胞に陽性反応.肝,腎および血液の銅濃度はそれぞれ,266 μg/g,22 μg/g,200 μg/dlであった.給与飼料(野菜,青草,乾草等)の銅濃度は2.8から3.3 ppmで,一日あたりの摂取量は17から19 mgであり,さほど高値ではなかった.しかし,臓器には高濃度の銅が蓄積しており,トナカイは銅に感受性が高いものと思われた.

畜舎鉄柵塗料舐食による和牛子牛の鉛中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成16年度),p75,2005,大越啓司ほか(宮城県古川家保),約2ヶ月齢の和牛子牛1頭が突然旋回運動,強直性痙攣,起立不能を呈し,高熱を伴って死亡.給与粗飼料の硝酸態窒素濃度および同居牛の血液生化学所見は正常.1ヶ月後に同居牛1頭が同様の症状.診断的治療目的でキレート剤(DETA-Ca)を投与したところ回復.子牛が鉄柵を舐めていたことから,臓器および鉄柵塗料の鉛を測定.肝,腎および塗料の鉛濃度はそれぞれ,15 μg/g(湿重量),60 μg/g(湿重量),1400 μg/gであった.以上から鉛中毒と診断.

 

農薬等

子牛に発生した有機リン系殺虫剤中毒,家畜衛生研修会(生化学),1989,木村良男(栃木家衛研),乳雄肥育農家で子牛が元気消失,下痢等を呈し死亡.血清GOT,BUN等が上昇,コリンエステラーゼ活性は低下していた.本農家では害虫駆除のためフェンチオンを散布しており,子牛血清からも本剤が検出された.

サルファ剤と消石灰による乳用子牛の中毒発生,"家畜診療, No372, p911",1994,高橋義孝ほか(NOSAI京都),9頭の乳用子牛が体温低下,徐脈起立困難等を呈して死亡した.腎乳頭の結晶物および腎皮質の黒変化がみられ,薬物中毒が疑われた.コクシジウム治療に用いたサルファ剤と消毒に用いた消石灰を疑い,再現試験の結果確認された.

豚のクマリン中毒 , 日本獣医師会雑誌, vol48, No.1, 18-20 ,1995, 竹島由実子ほか(富山東部家保), 肥育豚15頭(110〜115日齢)が,跛行,眼球突出,関節の腫脹を呈し,そのうち6頭が死亡した.眼窩,頸部,上腕部,内股部,四肢肢端に出血と凝固不全の血塊.HPLCにより肝および腎からクマテトラリル検出.

野鳥に発生したクマリン中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,浅野隆ほか(岩手県盛岡家保),リンゴ園内でおよそ50羽の野鳥が死亡.園内には廃棄リンゴが堆積.廃棄リンゴの表面には青色物質付着.剖検では,上部消化管にリンゴが貯留.凝固不全を伴った出血が,胸腔,皮下,骨格筋等に見られた.クマリン中毒を疑い,青色物質の付着したリンゴ,死亡野鳥の胃内容,腎および肝からクマテトラリルを検出.以上より,殺そ剤付着リンゴ摂取によるクマリン中毒と診断.

採卵鶏に発生した薬物中毒と思われる症例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成13年度),p9,2002,日高健雅ほか(広島県福山家保),採卵鶏40000羽を飼養する農場で,約3000羽の鶏が開口呼吸などの症状.感染症関連検査は陰性.肺は充血し水腫性変化.血液総ヘモグロビン濃度はおよそ23 g/dlと増加(宮崎注:クロルピクリン中毒との関連不明.クロルピクリン中毒ではヘモグロビン減少が報告されている.一方,メトヘモグロビンは増加するようだ.).農場に隣接する畑で,土壌薫蒸のためにクロルピクリン注入.異常は畑に一番近い鶏舎で発生.以上から,クロルピクリン中毒が疑われた.

30日齢子豚のクマリン系殺鼠剤中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成13年度),p34,2002,塩谷治彦(静岡県中部家保),一貫経営農家で6頭の子豚が死亡.栄養状態良好.心表面に激しい出血.肺は鮮紅色で割面から血液流出.組織学的には,心,肺,肝,脾および脳に重度のうっ血および出血.直前にネズミ駆除のため殺鼠剤を設置していたことから,クマリン中毒と判断.

豚のワルファリン(クマリン系殺鼠剤)中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成14年度),p31,2003,佐藤則子ほか(茨城県県西家保),一貫経営農場の育成舎で,飼料タンクへの殺鼠剤誤混入によるワルファリン中毒が発生した.混入飼料給与開始後1週間で,豚が元気消失,食欲不振を呈したため,タイロシンを投与したところ,投与部位からの出血が止まらず死亡豚が続出し,2週間で90%が死亡.剖検では全身皮下および各臓器の出血.死亡豚の肝および腎から,それぞれ0.12 μg/gおよび0.04 μg/gのワルファリン検出.給与飼料からも0.06 μg/gのワルファリン検出.混入飼料の長期給与(12日間,混入濃度1 μg/g)によるワルファリン中毒と診断.

豚のワルファリン中毒の発生例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成15年度),p27,2004,小林弘明ほか(広島県東広島家保),60〜70日齢の豚60頭が皮下出血を呈し死亡.当該農場はネズミ対策として0.5%ワルファリン製剤を使用.発生豚房では,殺鼠剤を飼料給餌器の陰に設置.剖検所見は,頚部,筋膜下,関節腔,腸管粘膜面等の出血,肝,腎の退色など.組織所見は,筋膜,筋線維結合織の重度出血,肝は出血を伴った小葉中心性壊死.肝,腎,肺,心,筋肉および血餅からワルファリン検出.既知の急性中毒よりも微量かつ単回のワルファリン摂取と推察できるが,総合的にワルファリン中毒と診断.

 

その他

真菌増殖サイレージによる乳用牛の中毒死,"全国家畜衛生業績抄録, No22, p91",1989,熊木貴博ほか(北海道上川家保),酪農家で3頭急死.1頭は呼吸促迫,痙攣症状.各臓器のうっ血,気管支内泡沫状滲出物.給与中のサイレージに真菌の増殖.Penicillium simplicissimumを分離.マウスに真菌増殖サイレージを投与すると死亡.

K村におけるグラステタニーの発生と予防対策,"全国家畜衛生業績抄録, No22, p92",1989,杉若輝夫(岩手宮古家保),7年間に8牧野で発症.k/Ca+Mgは平均3.25以上(危険水準2.2).対策として,Mg添加土壌改良材の施用,フスマへのMgO添加,入牧後のMg剤注射を実施して改善.

畜産におけるホルモン及びホルモン様薬物の応用と食品の安全性,"畜産の研究, Vol46, No5, p545",1992,Bernd Hoffmann,生産性向上に効果があると考えられるホルモン及びホルモン様物質のうち,ペプチドホルモン(ゴナドトロピン,ソマトトロピン等)及び内因性ステロイドは,経口活性がきわめて低いこと,また人間自身も家畜の可食組織から摂取する量以上を生産していることから,安全である.

降灰付着牧草と酸性水の給与が繁殖(妊娠)牛へ及ぼす影響,家畜衛生研修会(生化学),1992,野尻健二(熊本中央家保),阿蘇山噴火により降灰を受けた牧草及び酸性水の影響を検討.DMの5%に相当する降灰を濃厚飼料中に添加し,酸性水(pH2.8〜3.8)を褐毛和種妊娠牛に自由摂取させたが,なんら影響はなかった.

黒毛和種における腐敗甘藷による中毒の発生例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,久住呂毅ほか(長崎中央家保五島支所),肉用牛繁殖農家で腐敗した甘藷を給与したところ,重度の呼吸器症状を示す異常が発生.7頭中2頭死亡.組織所見では肺間質の気腫,肺胞中隔のうっ血水腫等が見られた.腐敗甘藷からはフザリウム菌が分離され,またイポメアマロンが検出された.以上より,腐敗甘藷による中毒と診断.

エンドファイト中毒が疑われた一症例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,千田広文(広島県東広島家保),黒毛和種繁殖農家で,前肢が震え起立不能となる牛が続発.給与粗飼料はオレゴン州から輸入したペレニアルライグラスストロー.エンドファイト菌糸陽性.ロリトレムB濃度はおよそ1900 ppm.硝酸態窒素濃度はおよそ340 ppm.当該粗飼料の給与量を半減することで症状消失.以上よりエンドファイト中毒を疑った.

繁殖牛に発生したエンドファイト中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,飯田賢ほか(大分県大分家保),輸入ライグラスストローを不断給飼していた黒毛和種繁殖牛に,歩様異常,起立不能.エンドファイト菌糸陽性.ロリトレムB濃度はおよそ1700 ppm.当該飼料の給与停止で回復.以上よりエンドファイト中毒と診断.

輸入乾草によるエンドファイト中毒が疑われた症例.全国家畜保健衛生業績抄録(平成11年度),2000,黒木伸二(宮崎県宮崎家保),県内4農家で,起立不能,首を振るなどの神経症状を呈する異常.アメリカ産ペレニアルライグラスストローを給与していた.硝酸態窒素濃度は基準値以下.ロリトレムB濃度は2200 ppm.以上よりエンドファイト中毒を疑う.

魚粉が原因による採卵鶏の筋胃び爛,全国家畜保健衛生業績抄録(平成12年度),2001,黒田順史ほか(和歌山県紀北家保),採卵鶏農場で筋胃び爛が発生.当該農家は,自家配合飼料にエクアドル産魚粉を10%配合.当該魚粉を20%添加した飼料をヒナに給与したところ筋胃び爛を発症.魚粉による筋胃び爛と診断.

給水管理失宜によって発生した豚の食塩中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成12年度),2001,川田壮一ほか(富山県東部家保),養豚場育成豚舎の2豚房で,11頭が痙攣等の神経症状を呈し,うち6頭が死亡.鑑定殺した豚血清ナトリウムおよび塩素濃度はそれぞれ165 mEq/L および128 mEq/Lと高値であった.病理組織学的検査では,大脳皮質神経細胞の忘血性変化,好酸球やリンパ球性の囲管性細胞浸潤.飼養状況の調査から,52時間に及ぶ給水停止を確認.以上から,給水管理失宜による食塩中毒と診断.

黒毛和種繁殖雄牛におけるエンドファイト中毒再現試験,全国家畜保健衛生業績抄録(平成13年度),p72,2002,石崎五久美ほか(兵庫県和田山家保),管内で,オレゴン州立大学の基準値以下のロリトレムBを含むペレニアルライグラスストローによるライグラススタッガーが発生したので,農家への指導基準作成のため再現試験を実施.当該飼料を飽食させた群ではライグラススタッガーを発症し,黒毛和種ではオレゴン州立大学の基準値以下でも発症することを確認.ストローの半量給与では発症せず.試験結果をふまえ,ストローの使用法を農家へ指導.

輸入粗飼料トールフェスクによるエンドファイト中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成13年度),p72,2002,阿部美紀ほか(鹿児島県鹿児島中央家保),黒毛和種繁殖牛40頭を飼養する農家で,トールフェスクストローを給与したところ,10頭が後肢蹄冠部の腫脹,跛行を呈した.当該飼料の給与を停止したところ,9頭の跛行は軽快したが,受胎成績の低下が3ヶ月継続.1頭は後肢蹄冠部以下の壊死脱落が見られたので鑑定殺.トールフェスクからはおよそ3000 ppmのエルゴバリンを検出.フェスクフットと判断.

ビタミン製剤過剰投与が原因と思われた牛ハイエナ病,全国家畜保健衛生業績抄録(平成13年度),p72,2002,山本賢一ほか(長崎県中央家保),乳雄肥育農家で,導入1〜2週の子牛16頭中11頭に,脱毛,削痩,起立不能の症状がみられ,5頭が死亡.当該農場では,代用乳にVAD3E剤を添加していたが,発生時にはきちんと定量せずに多めに添加していた.VAの推定1日摂取量は140万IU/頭であった.VA過剰症と判断し添加を中止したところ,症状改善.しかし,半年後に同群の7頭に体型異常.鑑定さつを実施し,VA過剰投与による急性中毒が慢性に経過したハイエナ病と診断.

黒毛和種にみられたエンドファイト中毒を疑う症例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成14年度),p72,2003,上松大輔ほか(愛媛県八幡浜家保),黒毛和種繁殖農家の繁殖雌牛に,頚部の振とう,頚部筋肉の痙攣,歩行異常,起立不能がみられ,2頭が廃用となった.給与飼料を検査したところ,カブの葉からおよそ8000 ppmの硝酸態窒素が,ライグラスストローから1000 ppbのエルゴバリンと1700 ppbのロリトレムBが,トールフェスクストローから1500 ppbのエルゴバリンがそれぞれ検出された.当該農場では,輸入粗飼料を一日6〜8 kg給与していた.症状および発生状況から,ライグラススタッガーが疑われた.

子牛に発生したエンドファイト中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成14年度),p73,2003,藤原貴秀ほか(佐賀県中部家保),黒毛和種繁殖和牛を飼養する農家で,オレゴン産ペレニアルライグラスを給与していた子牛が,頭部および四肢のふらつき,体幹皮筋の振せん,起立困難が発生.給与ペレニアルライグラスストロー中ロリトレム濃度は,飼料業者の検査ではおよそ1000 ppbとのことであったが,給与されていたものでは2500 ppbであった.類似疾病を否定してエンドファイト中毒と診断するとともに,畜産関係者に注意喚起.

育成牛に発生したエンドファイト中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成15年度),p71,2004,白岩佑美子ほか(静岡県東部家保),酪農家2戸の育成牛16頭に,頚部筋肉の痙攣,歩様異常,起立困難,頭の上下運動がみられた.両農場ではオレゴン産ペレニアルライグラスストローを給与.ストロー中ロリトレムBは3000および2200 ppb.同一ロットを購入していた他の2農場を調査したところ,同様に育成牛に異常発生.当該飼料給与呈しで症状軽快.4ヶ月後に別農場でも同様の異常.ロリトレムB濃度は2400 ppb.以上をエンドファイト中毒と診断.

給水失宜に起因した豚の食塩中の発生,全国家畜保健衛生業績抄録(平成16年度),p39,2005,葛見敏男(佐賀県西部家保),50〜60日齢の豚6頭に,起立不能,後躯麻痺,旋回運動等の神経症状.大脳実質血管周囲に著しい好酸球浸潤と血管内皮細胞の腫大,大脳皮質の水腫が認められた.感染症は否定.血清ナトリウムおよび塩素濃度は顕著に上昇.飲水の硝酸および亜硝酸濃度は低値.総合的に判断し,給水失宜による食塩中毒と診断.

肉牛に発生したサルファ剤中毒,全国家畜保健衛生業績抄録(平成16年度),p75,2005,小島久美子ほか(徳島県家保),肉牛農場で8ヶ月齢の育成牛が下痢・脱水症状.糞便検査でコクシジウムオーシストを確認しサルファ剤投与開始.5日後にも症状回復せず,BUNおよびクレアチニンが著しく高値を示したので加療したが回復せず9日後に起立不能に陥ったため鑑定殺.腎が腫大・退色.腎杯および膀胱に黄白色の微細顆粒および結晶物.腎臓の結晶物を簡易鑑別でスルファミン尿石.UVスペクトルおよびHPLC分析からスルファモノメトキシンを同定.サルファ剤使用失宜による中毒と診断.

エンドファイト中毒を疑う症例,全国家畜保健衛生業績抄録(平成16年度),p76,2005,小林朋子ほか(鳥取県西部家保),和牛繁殖農家がオレゴン産ライグラスストローを給与したところ,1頭が体幹および四肢の痙攣,歩様異常,神経過敏などの症状.エンドファイト中毒を疑い,飼料の給与を中止したところ,翌日より症状改善.穂の形状からストローはペレニアルライグラスと判定.ロリトレムB濃度はおよそ1000 ppmであった.この程度の濃度でも中毒が発生する可能性があることから,ストローの単独使用を避けるよう農家指導.

(1997.6.4 登録,2005.9.8 最終更新) 

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農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 安全性研究チーム