麦角アルカロイド

おもにライムギに寄生する麦角菌(Claviceps purpurea)の菌核に含まれるインドールアルカロイド.麦角菌のみならず,Neotyphodium属エンドファイトも種々の麦角アルカロイド(ergot alkaloids)を産生することが知られている.

麦角アルカロイドの共通構造であるリセルグ酸の骨格部分であるエルゴリン環は,トリプトファンから生合成される.主要な麦角アルカロイドはリセルグ酸のアミド誘導体である.

麦角アルカロイドの多くは,リセルグ酸に3種以上のアミノ酸が集まった環状ペプチド構造を持っており,ペプチド型麦角アルカロイド(ergopeptine alkaloids)と呼ばれている.主要なペプチド型麦角アルカロイドには,エルゴタミン(ergotamine),エルゴシン(ergosine),エルゴクリスチン(ergocristine)などがある.また,各アルカロイドは溶液中で容易にエピマー体(立体異性体の一種)変化するが,これらには薬理活性がない.エピマー体は元のアルカロイドの語尾を-inineに変えて呼ぶ.たとえば,エルゴタミンのエピマーはエルゴタミニン(ergotaminine)である.

トールフェスクに感染するN. coenophialumが産生する麦角アルカロイドの主体はエルゴバリン(ergovaline)で,そのほかエルゴシン(ergosine),エルゴニン(ergonine),エルギン(ergine)なども検出されている.

 

麦角アルカロイドは,種々の薬理作用を持つことが知られています.

まず,子宮や血管などの平滑筋に直接作用しこれを収縮させます.麦角アルカロイドが古くからヨーロッパで陣痛促進や分娩後の子宮出血抑制に用いられていたのはこの作用を利用したものです.

また,麦角アルカロイドは交感神経α遮断作用を示します.

さらにドパミン作動薬としても働き,プロラクチンの分泌が抑制されます.

そして,LSDで見られるような向神経作用も有しています.

麦角アルカロイド中毒の主症状である四肢の末端や尾の壊疽は,血管平滑筋収縮作用による循環障害によるものです.また,プロラクチン分泌が抑制されるので,泌乳量が低下するとともに体温調節機構が障害されます.

子宮筋収縮作用を利用して分娩促進薬を作れないかと考えた人が現れ,種々のリセルグ酸アミドを合成しました.その中の25番目の物質に,化合物名(Lysergic acid diethylamide)からLとD,そして会社の名前の頭文字のSをとって,LSD-25と命名しました.これが,幻覚剤LSDの誕生です.

LSD-25に幻覚作用があることが見いだされたのは,LSD-25の薬理作用を実験中に不用意に素手でこの物質にさわったところ,幻覚作用が現れたためといわれています.

(1997.7.5 登録,2002.3.4 最終更新)

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