ナルトサワギクについて

特定外来生物の第2次指定について、2005年12月14日付けで公布され,2006年2月1日より特定外来生物に指定されました.

環境省の情報はこちらです.

ナルトサワギク(Senecio madagascariensis,英名は fireweed, Madagascar ragwort )は,キク科キオン属の帰化植物で,1976年に徳島県鳴門市で,1986年には兵庫県淡路島で確認されました.

2001年4月(大阪府堺市)

日本帰化植物写真図鑑(全国農村教育協会,2001)より(撮影:森田弘彦氏(中央農業総合研究センター,現秋田県立大))

 

2004年5月(東京都立木場公園帰化植物園)

撮影:廣田伸七氏(全国農村教育協会)

 

原産地はマダガスカル島で,アフリカ南部に分布するほか,オーストラリアの東海岸,ハワイ,南アメリカにも侵入しています.日本では,徳島県および兵庫県のほか,和歌山県,岡山県,高知県,鹿児島県でも確認されています(徳島県立博物館ウェブペイジ情報).

侵入後まもないにもかかわらず,分布が急速に拡大しているのは,埋め立て地の緑化の種子に混じって拡大したことと,花がきれいで通年開花することから,園芸目的での栽培もされているためと思われます.

また,ナルトサワギクはアレロパシー作用を持っていることが最近報告されました.イタリアンライグラスなどの発芽を抑制する作用があるようです(岩崎ら,2005).

生態学的には,強い繁殖力で在来の植物を駆逐してしまうことが懸念されています.ハワイではかなり問題になっているようです(PDFファイル).日本でも,特定外来生物の第2次指定について、2005年12月14日付けで公布され,2006年2月1日より特定外来生物に指定されました.

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また,キク科キオン属の植物は,肝毒性や発がん性を有するピロリジジンアルカロイドを含んでいます(コンフリーの項参照).

オーストラリアの東海岸(ニューサウスウェールズ州,クイーンズランド州など)では牧草地に侵入し,牧草の生育への影響と家畜の中毒(Small et al., 1993))で,かなりの被害が出ているようです(PDFファイル許可を得てこのペイジの最後に日本語訳を掲載しました).

駆除法についてもいろいろ検討されているようですが,決め手はないようです.

上述のようなアレロパシー作用は乾燥した葉でも維持されるようなので,刈り取ったり引き抜いた植物を放置すると,十分な管理効果が得られない可能性があります(岩崎ら,2005).刈り取った後は除去あるいは焼却する必要があるでしょう.

観賞用として安易に栽培しないよう注意を喚起する必要もあるでしょう.

日本ではまだ牧草地への侵入や家畜の被害は報告されていませんが,注意が必要です.特に西日本の方で,生育を確認された方は情報をこちらへ頂ければ幸いです.

 

参考文献

 

オーストラリア・クイーンズランド州政府作成のナルトサワギクに関する情報

(URL: http://www.dpi.qld.gov.au/documents/Biosecurity_EnvironmentalPests/IPA-Fireweed-PP31.pdf )の日本語訳(農林水産省消費・安全局衛生管理課薬事・飼料安全室担当者(2005.7当時)が作成した仮訳に宮崎が加筆・修正したものです.翻訳に際しては,クイーンズランド州政府の許諾を受けています.この日本語訳に誤りがあった場合,その責は宮崎にあります.また、南半球であることから季節が日本と逆であることに留意して下さい.)

 

Fireweed(日本名:ナルトサワギク)

学名:Senecio madagascariensis

有害クラス2

 

 ナルトサワギクは牧草と競合する帰化植物であり、家畜に中毒を発生させる。

牛の疾病や成長障害、そして体調を悪化させ、最悪の場合、家畜を中毒死させる。

 ナルトサワギクの混入に対して最も良い防除方法は、発芽して間もないナルトサワギクに競合できる通年草地の維持に加え、除草剤や機械的な方法を含む総合的な防除・管理を実施することである。

 

ナルトサワギクとは

 ナルトサワギクは一年生または多年生のキク科草本で,草丈が環境により大きく変化する。乾燥した過酷な条件下では、葉の幅は小さく、草丈は20cm以下で、分枝せず、花数も少ない。好条件下では、ナルトサワギクは多数の分枝があり、葉長、葉幅ともに大きく(6cm×2cm)で、草丈も50cmを超え、約100個の花をつける。

 長さ2〜6cmの濃緑色の葉が互生する。花は明るい黄色で、おおよそ2cmくらいのヒナギクに似た花で、それぞれに100個を超える種子を付ける。このような特徴は、在来のキオン属(セネシオ属)植物に酷似している。

 種子は小さく、円筒形で、長さは2〜3mmである。それぞれの種子は並び、微細な毛と、絹のような冠毛を持つ(風散種子)。花と種子は、成長する季節を通して絶え間なく作られる。平均的なもので、この間に1万個を超える種子を作ることができる。

 ナルトサワギクは、多くの繊維状の根(ひげ根)を有し、浅く張り分枝した主根を持つ。根が浅く張った根はしばしば風で倒れるが、地面に接触した茎から発根できる。

ナルトサワギクの有害性

 ナルトサワギクは耕作地や放牧場における雑草である。ナルトサワギクは牧草より優勢に生育し、家畜とりわけ牛や馬に毒性を有する。ナルトサワギクの蔓延要因として以下の二つがあげられる。

毒性

 ナルトサワギクによる中毒の症状が軽く、ほかの要因でも起こるような体重増加率の減少、乳量の低下などの兆候しか示さないときには、その原因がナルトサワギクであると特定することが難しい。

 重度のナルトサワギク中毒では、食欲の低下、無目的歩行、運動失調、光線過敏症、黄疸、怒責に伴う直腸の外反などの症状が見られ、さらに進行すると死に至る。解剖所見では、慢性的な肝硬変が認められる。

 ナルトサワギクは、植物のすべての生育段階をとおして、肝臓に障害を与えるピロリジジンアルカロイド(pyrrolizidine alkaloids)を含有している。ピロリジジンアルカロイドは乾燥によっても壊れないので、乾草やサイレージに混入したナルトサワギクも有毒である。

 ナルトサワギクは一般に家畜は好まない草なので、ナルトサワギクが牧草中に多く混入して選択が出来ないとき、他に食べるものがない時、牧草の不足により家畜が空腹である時になどに中毒が発生する。

 ヒツジやヤギはナルトサワギクの毒に感受性が低く、少なくとも1シーズンの間はナルトサワギクがある放牧地に放牧することができる。しかし、ナルトサワギク中のピロリジジンアルカロイドは、これを菜食したヤギの乳汁に残留するので、ナルトサワギクの群生した牧野には搾乳用ヤギを放牧すべきでない。

ナルトサワギクのライフサイクル

 ナルトサワギクは一年生の植物であるが、多くのものは夏を耐過するため、あらゆる世代が同期間に存在している。

 種子は、温暖な時期(15℃〜27℃)に光や湿度の存在下で発芽する。もっとも多く発芽がみられるのは3月から6月で(訳注、オーストラリアは南半球であることに留意)6〜10週で最初の花が咲く。

 ナルトサワギクは、通常、春の終わりに枯れ始める。夏を通して根はそのまま残り、秋に再び成長を開始させる。降雨により、これらの植物が再び成長し、夏を通して花と種子を作ることもある。

 乾燥した夏のあと,秋や冬に雨が降ると、ナルトサワギクは猛烈に繁殖する。

原産地と分布地域

 ナルトサワギクはマダガスカルや南アフリカ原産で、1918年にHunter Valleyでオーストラリアへの侵入が初めて確認された。

 侵入経路は明らかでないが、おそらく園芸用として導入されたことに始まり、ゆっくりと広がっていったが、交通手段の発達や農耕地の拡大により、最近30年で、急速に広がったと考えられる。

現在の分布状況

 ナルトサワギクは、Great Dividing Rangeの東にある肉牛や乳牛の放牧地に侵入しており、ニューサウスウェールズから北のブリスベーンにわたる海岸線にも分布している。

 また、Caboolture、Cooroy、Belli Park、Maleny、Yandina、Pelican Water、Gympieなどのブリスベーンより北の地域でも群生が確認されている。

分布拡大の可能性

 ナルトサワギクは分布域を北に広げ、ブリスベーン北部の良質な牧草地に広がる可能性がある。気候や土地の利用形態にもとづく予測では、ナルトサワギクは北のRockhamptonまで深刻な害を及ぼす可能性がある。

 ナルトサワギクは、生育がさほど密でなくとも1ヘクタールあたり100万個の種子を作る。種子は軽く、冠毛により風に運ばれる。また、種子は動物に付着できる並んだ短い毛を持っている。ナルトサワギクは風や家畜により、近距離に拡散する。また、牧草の種子、乾草、芝生、マルチングなどに混入したり家畜の輸送により、より広範囲の牧草地に拡散する。

 ナルトサワギクの種子はhydromulch(訳注:木屑のようなマルチ素材と種子を混合し,水に分散してスプレーしながら播種する方法)や芝草種子のような資材への混入によりにより拡散することもある。

危害植物指定の詳細

 ナルトサワギクは、クイーンズランド州の国土保全法(Land Protection(Pest and Stock Route Management) Act 2002)において、有害クラス2の植物に該当している。有害クラス2とは、すでにクィーンズランド州のかなりの地域に広がっているものであり、その影響が深刻であるため、侵入地域での防除と、まだ被害が拡大していない地域への拡散を防ぐことが必要な植物である。同法は、すべての土地所有者に有害クラス2の植物を土地から排除する努力を求めており、この植物を栽培したり販売したりすることは禁じられている。地方政府は有害植物を防除することの必要性について,土地所有者の理解得るための情報を用意している。

ナルトサワギクの防除

 ナルトサワギクの拡散は農業の生産性や他の土地の利用に悪影響を与えるものである。また、ナルトサワギクは在来の植動物の存続を脅かす。

 予防に勝る防除策はなく、ナルトサワギク群を定着させないため、ナルトサワギクがまだ小さいうちに排除することである。ナルトサワギクの防除にはかなりの費用がかかるが、先送りにするよりも、直ちに実行することが効果的であり、必要な費用も少ない。適切な防除計画により、費用に見合う効果が得られる。

 適切な防除計画を立てるには現状を注意深く把握する必要があります。今生えている草を除去するだけでなく、新たな侵入も防ぐ必要があるのか。法律で求められていることは何なのか。土地の管理法にあった防除法は何か。雑草が侵入した土地をもとにもどし、再侵入を防ぐために何が出来るのか。このようなことを注意深く検討する必要があります。

異なる方法を組み合わせることにより、よりよい成果が得られる。土地の使用形態により除草剤や物理的な方法を組み合わせることいいでしょう。状況に応じて適切な方法を選択する必要がある。

防除戦略

 ナルトサワギク防除の最も良い方法は、秋から冬にかけて牧草地を牧草で十分被覆し、ナルトサワギクの定着を防ぐことである。ナルトサワギクは秋に発芽するので、秋の圃場整備時までに対策をとらないと、施肥やdirect drilling(訳注:牧草種子の播種法の一種)によってナルトサワギクの生育を助長してしまうことになる。

 ナルトサワギクの小さな群生を発見したらすぐ対応することにより、状況が悪化するのを防ぎ、根絶の可能性が高まる。

機械的な防除法

 ナルトサワギクを見つけ次第、抜き取って袋にいれ焼却するか、許可された埋却地に埋却する。ナルトサワギクは毒草なので、家庭の薪用コンロや薪ストーブで焼却すべきではない。また、再び種子を付ける恐れ又は、家畜が食べ中毒を起こす恐れがあることから、放牧場から早急に取り去る必要がある。

スラッシング(刈ったままにしておく)

 刈った草が家畜の口に入る恐れがあるためあまり効果的な方法ではない。

 花がなくなるため効果的に見えるかもしれないが、せいぜい開花と種子の拡散を遅延させるだけであり、最悪の場合、ナルトサワギクにとってよい環境を与えることになり、牧草地に損害を与える。

 ナルトサワギクは刈り取られた後も有毒であるばかりでなく、家畜にとってより食欲をそそるので、中毒が起こることもある。

除草剤による防除

 植物の成熟前に散布できれば、除草剤は最も効果が期待できる防除方法である。また、適切な頻度で散布すれば、開花時期でも効果的である。

 除草剤によるナルトサワギクの防除法の研究は、Alan Fletcher研究所で行われている。研究の結果、秋季の4月に除草剤を散布することが最も効果的であることが分かった。土地所有者は、除草剤散布プログラムの実施前にナルトサワギクによる被害状況(生育状況)をきちんと把握しておく必要がある。

ナルトサワギク対策に用いる除草剤の詳細を表1(省略)に示した(訳注:表1には、有効な除草剤としてブロモキシニル(Bromoxynil)と2,4-D acidが記載されている。しかし、ブロモキシニルは日本では登録されていない。2,4-Dは日本でも登録されているが、一部製剤では失効したものがある。本資料の表1では、2,4-D acid について、7リットルを1000リットルの水で希釈し、ナルトサワギクが盛んに成長している時期に、草全体に散布すると記載されている。)。

 牧草地ではブーム散布(訳注:水平に延びた散布用パイプで、広い面積に均一に散布)するのが有効である。この場合でも、再生あるいは散布を免れたナルトサワギクを見つけたら、個別に除草剤を散布するか、引き抜いて袋に入れるなどの対応が必要である。

 ブーム散布は、未熟なナルトサワギクを見逃して種が飛散してしまうことも防げるので、追加の除草剤散布にも有効である。 

 以下、日本では登録されていない除草剤、ブロモキシニルによる防除法が記述されているが省略。 

 残念ながら、ナルトサワギクの花が咲くまで防除対策がとられないことが多い。しかし、開花してからでは除草剤の効果もあまり期待できない。

生物的防除

 生物の中にはナルトサワギクを攻撃できるものが存在するが、これらの効果は一時的、単発的である。さび病菌のPuccinia lagenophoraeは普通に見られ、クイーンズランド州の南部において一般的な病害菌で、ナルトサワギクにも病害をおよぼす。また、Blue Stem Borer という蛾(学名:Patagoniodes farinari, 訳注:Patagoniodes farinariaを誤記したものと思われる)もいるが、幼虫の成長が遅いため、植物の生長に追いつかない。マダガスカル島から導入した2種類の蛾について、幼虫の植生を調査した。その結果、これらの蛾が在来の重要な植物にまで嗜好を示しために、導入した蛾は実用化されることなく処分された。

 この他にも生物学的な防除の可能性のあるものは見つかっているが、それらがオーストラリアの生態系に悪影響を及ぼさないか十分に検証する必要がある。実用可能な生物農薬の目途は立っていない。

詳細な情報

 より詳細な情報は、地方政府の植生管理、雑草防除あるいは環境保護の担当者から入手できる。

 

 

(2005.7.11 登録,2011.5.23 最終更新) クイーンズランド州政府情報のリンク先の修正

 

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農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所