食欲の秋もたけなわで,銀杏の時期となりました.
しかし,銀杏を多食すると中毒になることが古くは本草綱目(李時珍,1596)にも記載されています.
中毒症状は,強直性痙攣を主徴とするてんかん様発作で,おもに小児の症例が報告されています.
中毒物質は,銀杏の可食部に含まれる4-O-メチルピリドキシンであることが,北海道医療大学の和田らによって明らかにされています(Chem.Pharm.Bull., 33, 3555 (1985)).
4-O-メチルピリドキシンは抗ビタミンB6作用があり,ビタミンB6欠乏によって抑制性の神経伝達物質であるGABAの生合成が阻害されて,強直性痙攣などの症状が誘発されると考えられています.ビタミンB6を投与すると劇的に回復するそうです.
大人の場合,よほど大量の銀杏を食べないと中毒には至らないようですが,小児の場合は中毒を起こしやすく,7粒食べただけで中毒を起こしたという報告もあるので注意が必要です.
ところで,食品栄養標準成分表(四訂版)によれば銀杏にはビタミンB6が豊富に含まれていることになっています.これはいったいどうしたことでしょうか.
じつは,現在のビタミンB6に定量法に問題があるのです.植物成分のB6を微生物学的定量法で測定する場合,まず酸で加水分解します.この分解条件では,ギンナン中の4-O-メチルピリドキシンも加水分解を受け,ビタミンB6になってしまうのです.
銀杏中毒になるのは,人間だけではありません.先日,ミニブタの銀杏中毒に遭遇しました.室内で飼われていたミニブタの子豚が,から付きの銀杏を一掴みほど盗食し,痙攣症状を示しているとの問い合わせがありました.ビタミンB6の大量投与を指示したところ,大事に至らず快復したそうです.
人に限らず,幼弱な動物は感受性が高いのかもしれません.
(1997.10.5 登録,2001.1.25 最終更新)