モロヘイヤの毒性について

モロヘイヤ(mulukhiyya;Corchorus olitorius L.)はシナノキ科の一年生草本で,別名をジュート,日本名では「つなそ」あるいは「コウマ」(黄麻)といい,原産地はエジプトあるいはインドと言われています.ジュートには,カプスラリス種(Corchorus capsularis)とオルトリウス種(Corchorus olitorius)があり,前者は果実が球形で後者は円筒形です.重要な繊維作物としてふるくから栽培されていますが,エジプトでは野菜として葉を食用にしてきました.カルシウムやカロチンなどの栄養素に富むため,エジプトでは「王様の野菜」といわれ,クレオパトラの美の源だったと伝えられています.日本でも,健康食品として栽培されていますが,1996年に長崎県でモロヘイヤの種子による牛の中毒が発生しました.

ジュートの種子には強心配糖体が含まれていることは,すでに1950年に報告されており(Soliman and Saleh, 1950),さらにolitoriside(Turakhozhaev et al., 1970)やサポニン(Watt and Breyer-Branwijk, 1962)も含有していると報告されています.

ジュート種子による家畜の中毒についても,豚(Johnson and Toleman, 1982)や牛(Mckenzie, 1992)の中毒が報告されています.毒物にたいする感受性は動物種によってかなり差があるようで,鶏への給与試験ではなんら変化がなかったと報告されています(Johnson and Toleman, 1984).

長崎県の事例では,黒毛和種の繁殖農家でモロヘイヤの実のついた枝を牛に給与したところ,食欲不振,起立不能,下痢等の症状を呈し,3頭が死亡したというものです(濱口芳浩ら 1998.牛のモロヘイヤ(Corchorus olitorius L.)種子中毒.日獣会誌.51:407-410.).

検査成績

  • 剖検所見:心外膜の点状出血,心耳の充出血,左心室の出血
  • 組織所見:心内膜,心房および心耳の著名な充出血,肝類洞および小葉間血管のうっ血,脾洞内の出血及びヘモジデリンの沈着
  • 血液検査:Ht,TP,GOT,GGT,CPK,BUN,クレアチニン,中性脂肪の増加
  • 毒物確認:給与したモロヘイヤの種子および死亡した牛の心臓からTLC法で強心配糖体のアグリコンであるストロファンチジンを検出

今回の長崎県での事例を受けて,厚生省国立衛生試験所(現在の国立医薬品食品衛生研究所)ではモロヘイヤに含まれるストロファンチジンの分析を行ないました(詳細はこちら).

要約すると,

国立衛生試験所の検査では,モロヘイヤの葉からはストロファンチジンは検出されなかったが,種子や茎からはストロファンチジンが検出された.

厚生省では,食用として市販されているモロヘイヤには,茎や種子の部分は含まれておらず,危険性はないが,家庭などで栽培する際には子供が誤って種子を食べたりすることもありうるので,管理に気をつけるよう呼びかけている.

厚生省の検査で,人が食用にするモロヘイヤの葉には毒物が含まれないことが確認されましたが,種子や茎には毒性があるので,十分注意する必要があるでしょう.

(1997.6.7 登録,2010.7.6 最終更新) 牛の中毒の発表論文記載間違いの修正

 

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