ケール(kale,学名 Brassica oleracea var. acephala DC.)やキャベツ(cabbage,学名 Brassica oleracea L. var. capitata L.)は,アブラナ科(Cruciferae)の植物です.
アブラナ科の植物は,2種類の含硫化合物を含んでいて場合によっては有害作用を示し,家畜に中毒を起こします.
一つは,グルコシノレート(glucosinolate)あるいはカラシ油配糖体といわれる物質で,その代表はシニグリン(sinigrin)です.グルコシノレート,は同じ植物内に含まれる酵素(ミロシナーゼ; myrosinase)による加水分解でグルコースが取れて非糖体(アグリコン; aglycone)になり,さらにLossen 転移という反応でイソチオシアネート(isothiocyanate)になります.
イソチオシアネートは刺激性が強く,多量に摂取すると中毒の原因となります.我が国でもセイヨウカラシナによる牛の中毒が報告されています【9】.
また,β位に水酸基を持つグルコシノレート(プロゴイトリン;progoitrin)はイソチオシアネートになったのち環化してゴイトリン(goitrin)になります.イソチオシアネートやゴイトリンは甲状腺でのよう素の取り込みを阻害するので,甲状腺ホルモンの合成が抑制されます.したがって,多量のからし油配糖体を長期間摂取すると甲状腺腫になります.
ただ,イソチオシアネートは薬物代謝のフェーズ1酵素(シトクロムP450)を阻害し,フェーズ2酵素(グルタチオン S-トランスフェラーゼ)を誘導することにより,化学発がんを抑制することが報告されています【8】.適量のイソチオシアネートは,がん予防に有効かも知れません.
もう一つは,S-methylcysteine sulfoxide という物質です.S-methylcysteine sulfoxide は cystine lyase によって分解され sulfenic acid となり,さらに重合して methyl methanethiosulfinate (dimethyldisulphide oxide) になります.Methyl methanethiosulfinate はさらに水素付加されて,ジスルフィド(dimethyl disulfide) となります【5】.Dimethyl disulfide はグルタチオンのようなチオール基を持つ化合物と反応してこれを酸化し,有害作用を示します【5, 6】.
ケールを給与した牛に溶血性貧血が見られたという報告は,すでに1930年代からありますが【4】,その原因が S-methylcysteine sulfoxide の代謝産物である dimethyl disulfide であることが明らかになったのは,1980年になってからでした【3,5】.
Dimethyl disulfide によって還元作用のあるチオール化合物が酸化されてしまうことが,溶血性貧血の原因と考えられています.Dimethyl disulfideを投与した羊の赤血球でのフリーラジカルの産生が,実験的に確認されています【1】.
キャベツでも,牛や羊で同じような中毒が起こったという報告があります【7】.
上に述べたような S-methylcysteine sulfoxide の代謝反応は,ルーメン微生物の働きで促進されるため,反芻動物でのみ中毒が見られるようです.
ただ,S-methylcysteine sulfoxide からは,S-methyl methanethiosulfonate(前出のmethyl methanethiosulfinate とは違います)という物質も生成し,これには抗変異原性があるという報告もあります【2】.
文献
(2001.5.22 登録)