トリコテセン
毒性物質
トリコテセンは,共通骨格をもつ100種以上のマイコトキシンのグループである.構造上の特徴からさらに3つのタイプに分類されるが,ヒトや家畜の中毒で重要なのはタイプAのT-2 トキシン,HT-2 トキシン,ジアセトキシスシルペノール(DAS)など,タイプBのデオキシニバレノール(DON, ボミトキシン),ニバレノール,フザレノンXなどである(2).
由来
Fusarium graminearum,F. culmorum などのFusarium属のカビは麦類に赤カビ病を起こすカビであり,出穂以降に穂を侵すほか,苗の立ち枯れや紅色雪腐病を引き起こす病原菌である.これらのFusarium属のカビが産生する二次代謝産物は,赤カビ病の病原因子として,麦類の子実の収量・品質を低下されるばかりでなく,これを摂取したヒトや動物に有害作用を示す.
作用機序
トリコテセンはセロトニン介在性ニューロンに作用して,食欲不振や嘔吐を誘発する(5).また,リボゾームの60Sサブユニットに結合することによりタンパク質合成系を阻害し(1),その影響は細胞分裂が盛んな組織である骨髄,消化管粘膜上皮,皮膚などで顕著に現れる(3).さらに,免疫系の細胞にアポトーシスを誘発したり(4),炎症性サイトカインの産生を刺激したりする(6).
家畜のトリコテセンに対する感受性は豚が最も高く,鶏や牛はやや感受性が低い(5).わが国では,飼料中のデオキシニバレノール濃度は1 ppm以下,但し生後3ヶ月以上の牛に給与される飼料は4 ppm以下でなければならないという暫定基準が定められている.
中毒症状
飼料摂取量の低下,嘔吐がもっとも低濃度で現れる.そのほか,胃腸炎,皮膚炎などのほか,無白血球症(ATA)や再生不良性貧血などの血液障害も見られる.さらに,摂取量によって免疫機能の亢進あるいは低下がみられる.
診断
飼料からのマイコトキシンの検出(ELISAキットあるいは機器分析).機器分析については,「飼料分析基準」あるいは厚生労働省の通知法に準ずる.
分析法についてはこちら.
文献
1) Cundliffe, E. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. U S A, 71, 30 (1974).
2) DユMello, J.P.F. et al.: in Handbook of plant toxicant and fungal toxicants, CRC Press, pp287 (1997).
3) 川村理,上野芳夫:臨床獣医,8,44(1990).
4) Miura, K. et al.: Toxicol., 127, 195 (1998).
5) Rotter, B. A. et al.: J. Toxicol. Environ. Health, 48, 1 (1996).
6) Zhou, H.R. et al.: J. Toxicol. Environ. Health, 57, 115 (1999).
(最終更新:2005.1.11)