シキミ

学名:Illicium religiosum Siebold & Zucc.

本州(宮城・石川以西)・四国・九州・中国・台湾に分布する常緑の小高木です。昔から墓地や寺院などに植えられ、墓前や仏前に供える花として日本の仏教と関わりの深い植物です。最近では公園などの造園木にも用いられています。葉は厚くつやがあり、春に直径3cm程の淡黄白色の花を咲かせます。秋から冬にかけて星型の実をつけ、熟すと黄色い種をはじきとばします。枝葉はサフロールを豊富に含有しており、香気が高いことからハナノキ、コウノキなどともよばれ、線香の材料にもなります。シキミという名前も「臭き果実」の意味ともいわれています。

シキミの実は有毒で、これを子供が遊びで食べてしまうなど、ヒトの中毒事故が時々起こります。中華料理に使用されるダイウイキョウ(八角)は同属のトウシキミ(Illicium verum)の果実です。トウシキミには有毒成分は含まれていませんが、実の形や香りがシキミとよく似ています。その昔、日本からドイツに輸出したシキミの実が、ダイウイキョウに混ぜられて食品として販売され、多数のドイツ人が中毒を起こしたそうです。

トウシキミ果実(八角)はシキミ果実よりも大形で芳香がある。シキミの袋果先端は尖っている。

有毒成分

セスキテルペンラクトン構造を持つアニサチン(anisatin)が有毒成分で、全草に含まれますが、特に実に多いようです。アニサチンはピクロトキシンとよく似た構造を持つ痙攣毒で、ドクウツギのコリアミルチンと同様、神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)の作用と拮抗することにより症状を発現すると考えられます。作用部位もピクロトキシンと同じく中脳および延髄です(1,2)。

シキミからは、植物体内での芳香族化合物合成経路(シキミ酸経路)の重要な中間体であるシキミ酸 (shikimic acid )が分離されたことで有名ですが、この物質は無毒です。なお、ミヤマシキミ(Skimia japonica Thunb. )はミカン科の植物で、シキミとは類縁関係にはありませんが、その樹皮や葉にはクマリン配糖体のスキミン(skimmin)が含まれています。

検査法

アニサチンは、LC-MSで分析できます(3、4)。

胃内容からシキミの葉を肉眼的に検出することは比較的容易です(3)。また、植物特異的遺伝子の検出による同定も報告されています(4)。

中毒症状

果実抽出液を犬に投与した実験では、ピクロトキシンと同じようにてんかん様痙攣を示したとされています(家畜有毒植物学)。ヒトの場合、症状は採食後数時間で現れ、嘔吐、下痢などの消化器症状、四肢の間代性痙攣、意識障害を伴う全身性強直性痙攣に至ります(2)。

最近、牛の中毒が散発しています(3、4)。これらの症例でも、神経過敏、強直性けいれん、起立不能等が観察されています。

病理所見

上記の犬の実験では、肺の出血性梗塞、浮腫、漿液膜下の溢血、胃幽門部、腎、肝、脳のうっ血などが報告されています(家畜有毒植物学)。

牛の中毒事例では、肝臓、脾臓での細網内皮系細胞のヘモジデリン貪食像、心筋細胞の壊死およびプルキンエ線維の腫脹、小腸アウエルバッハ神経叢の腫大等が観察されています(3)。

文献

1) Kudo, Y. et al. 1981. Anisatin, a potent GABA antagonist, isolated from Illicium anisatum. Neurosci. Lett. 25:83-88.

2) 藤井眞行 1999. コリアミルチン, アニサチン, チクトキシン. 日本臨床 27:Pt2(別冊)領域別症候群シリーズ p682-684.

3)小林弘明ら 2003. 黒毛和種繁殖牛におけるシキミ中毒.日獣会誌、56:15-20.

4)河津理子ら 2011. 形態的観察、PCR法及びLC/MS分析による育成牛シキミ中毒の診断.、日獣会誌、64:791-796.

 

 

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最終更新日:2012.12.7 日本での症例報告(文献3および4)情報(検査法、中毒症状、病理所見)を追加
        2018.2.8
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