バイケイソウ

学名:Veratrum album subsp. oxysepalum Hulte(e アクサン テギュ)n

コバイケイソウ

学名Veratrum stamineum Maxim.

英名:white hellebore

バイケイソウは、高さ1メートルにもなるユリ科の多年草で、中部以北の深山、高山および北海道の湿地によくみられます。初夏には緑白色の臭気のある花を咲かせます。茎が伸びる前の若葉が、山菜として食用にされるオオバギボウシなどと類似するため、ヒトが誤食する場合があります。薬草としての利用は古く、ヨーロッパでは古代からバイケイソウの根が吐剤として利用されていました。かつてアルカロイド粗抽出物が血圧降下剤として使用されたこともありましたが、吐き気などの副作用が強く、今は使われていません。

コバイケイソウは、外観はよく似ていますがやや小型の仲間です。日本に自生するバイケイソウの仲間としてはシュロソウ(Veratrum maackii var. japonicam)などがあります。また、アメリカではwestern false hellebore (Veratrum calfornicum ) があり、家畜に対して繁殖毒性を持つことが知られています。

 
以上はコバイケイソウ
 
バイケイソウ(栃木県、7月)

オオバギボウシと間違えて食べないで下さい

オオバギボウシはユリ科の多年草で、春先の芽生えや若い葉は山菜として利用されています。しかし、バイケイソウと良く似ているため、オオバギボウシと間違えてバイケイソウを食べてしまう中毒事故がときどき起こっています。

オオバギボウシの葉には葉柄があり、葉脈は主脈から側脈が出ていますが、バイケイソウの葉脈は、葉の付け根から先端に平行に並んでいます。

また、オオバギボウシの芽では葉が巻いていますが、バイケイソウの芽では葉が折り畳まれています。

それから、なにより味が違います。オオバギボウシの若葉には苦味はありませんが、バイケイソウの葉は不快な味がするそうです。

 
オオバギボウシ(左:芽生え、右:若葉、青森県、4月)

有毒成分

ジェルビン(jervine)、シクロパミン(cyclopamin (11-deoxojervine)) 、ベラトラミン(veratramine )、エステル結合を有するプロトベラトリン (protoveratorin)などのC-ノル-D-ホモステロイドを骨格とするステロイドアミン類で、全草が有毒です。 毒素としては特にプロトベラトリンの毒性が強く、アコニチンに匹敵すると言われています。「家畜有毒植物学」には、馬の場合120g 、牛では 180g 、豚では 15g のバイケイソウ根の摂取で死亡したと記載されています。毒性の強いステロイドアミンを含む植物としては、バイケイソウの他にもユリ科 Zygadenus 属(リシリソウの仲間)がありますが、アメリカではこの仲間をdeath camasとよび、羊に大被害をもたらす植物として知られています。最近でもZ. paniculatus による羊の中毒が報告されています(7) 。

ジェルビン、シクロパミンはwestern false hellebore (Veratrum calfornicum )にも含まれています。この草を牛、山羊、羊などの母畜が妊娠初期に摂取した場合、先天性の奇形や胎子死を起こすことが知られており、欧米ではむしろこの分野の研究が進められています(1,2,4,5) 。バイケイソウの他にも、ナス科Solanum属、Nicotiana属、マメ科Lupinus属、セリ科Conium属の植物の中には家畜に対して奇形や胎子死を起こすものがあり、牛、山羊、羊は妊娠中にこれらの植物を摂取しないよう注意が必要です(6)。

中毒症状

羊の急性中毒症状は、局所刺激、呼吸ならびに運動障害、痙攣および麻痺で、動物は食欲不振、流涎、、嘔吐、出血性下痢、呼吸と心拍の減退、血圧降下、呼吸困難を経て通常10-20時間で死に至ります(家畜有毒植物学)。

羊母畜がVeratrum calfornicum を妊娠14日目頃に摂取した場合には頭蓋顔面奇形( monkey-face )が、19-20日目では高率に胎子死が、そして28-33日目では気管狭窄や四肢の形成不全が起きたと報告されています(3,6)。

病理所見

バイケイソウで急性中毒した家畜の病理所見についてはほとんど資料がありませんが、「家畜有毒植物学」にはバイケイソウ根の経口中毒では腸炎を示すと記載されています。

文献

1) Gardner, D.R. et al. 1998. Livestock poisoning by teratogenic and hepatotoxic range plants. In Toxic plants and other natural toxicants. p303-306.

2) James, L.F. et al. 1992) The effect of natural toxins on reproduction in livestock. J. Anim. Sci. 70:1573-1579 .

3) Keeler, R.F. 1978. Cyclopamine and related steroidal alkaloid teratogens: their occurrence, structural relationship, and biologic effects. Lipids 13:708-715

4) Keeler, R.F. 1988. Livestock models of human birth defects, reviewed in relation to poisonous plants. J. Anim. Sci. 66:2414-2427.

5) Keeler, R.F. 1990. Early embryonic death in lambs induced by Veratrum californicum. Cornell Vet. 80:203-207.

6) Keeler, R.F. and Crowe, M.W. 1983. Congenital deformities in swine induced by wild tree tobacco, Nicotiana glauca. J. Toxicol. Clin. Toxicol. 20:47-58

7) Panter, K.E. et al. 1987. Death camas poisoning in sheep: a case report. Vet. Hum. Toxicol. 29:45-48

 

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最終更新日:2008.5.1 オオバギボウシの写真追加
        2018.2.8
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