イヌサフラン 

学名:Colchicum autumnale L.

英名:autumn crocus

イヌサフランはユリ科コルチカム属の球根植物で、ヨーロッパや北アフリカが原産といわれています。コルチカム属には60種ほどがあり、多くが観賞用に栽培されています。球根は径3〜5cmの卵形で、9月から10月に15cmほどの花茎を伸ばし、サフラン(Crocus sativus L.)に似た花をつけます。翌春になると20〜30cmほどのオモトに似た葉を根生します。サフランとイヌサフランは球根も花も非常によく似ていますが、サフランはアヤメ科クロッカス属のまったく異なる植物です。サフランの花の雄しべは3本で大きく垂れ下がっているのにたいして、イヌサフランの雄しべは普通の大きさで6本あることから、花がついていれば両者は容易に鑑別することが出来ます。イヌサフランはたいへん丈夫で耐寒性も強く、何年も植えたままで開花します。また、室内に放置した球根からも開花するほどです。

 

イヌサフランの葉をギョウジャニンニクと間違えて食べ、死亡した事故が起こっています。

イヌサフランの花は秋に咲きますが、花期には上の写真のように葉はありません。

イヌサフランの葉は春先に出ますが、ちょうど山菜の時期です。2007年4月に、新潟県の方がイヌサフランの葉をギョウジャニンニクと間違えて食べ、死亡するという事故が起きました。間違えないように十分注意して下さい。

イヌサフランの葉
ギョウジャニンニク (いずれも4月下旬に青森県で撮影)
北海道立衛生研究所にて(5月)

有毒物質

イヌサフランの有毒物質はコルヒチン(colchicine)です。イヌサフランの球根には痛風に有効な成分が含まれていることが古くから知られていました。その成分であるコルヒチンの構造が決定されたのは1945年のことです(1)。コルヒチンは、細胞分裂を阻害する作用があることでも知られています。これは、コルヒチンが微小管(チューブリン)の重合を阻害し、紡錘糸が形成されなくなるためです。最近、イヌサフランによる急性中毒発現には、コルヒチンのアポトーシス誘発作用が関与しているのではないかという報告がありました(3)。

イヌサフランには、コルヒチンと類似のアルカロイドであるデメコルシン(demecolcine)も多く含まれています。毒性はコルヒチンより低いと言われていますが、中毒への関与は無視できないと思われます。

検査法

イヌサフラン中毒牛の筋肉、肝臓、腎臓、尿、乳汁などのコルヒチンおよびデメコルシンは、高速液体クロマトグラフィーにより定量できます(4)。

中毒症状

牛のイヌサフラン中毒で特徴的な症状は出血性の下痢で、そのほか食欲減退、嘔吐、流涎、起立不能などもみられます。血液所見では、白血球数の減少、AST活性やBUN濃度の上昇が報告されています(2,4)。

文献

1) Dewar, M.J.S. 1945. Structure of colchicine. Nature 155:141-142.

2) Yamada, M. et al. 1998. Histopathological study of experimental acute poisoning of cattle by autumn crocus (Colchicum autumnale L.). J.Vet.Med.Sci. 60: 949-952.

3) Yamada, M. et al. 1999. Supplementary report on experimental autumn crocus (Colchicum autumnale L.) poisoning in cattle : morphological evidence of apoptosis. J. Vet. Med. Sci. 61: 823-825.

4) 米田豊他 1984. イヌサフラン球茎中毒牛からのコルヒチンアルカロイドの検出。食品衛生学雑誌 25: 401-409.

 

目次へ戻る

トップページへ戻る


最終更新日:2010.6.2 北海道立衛生研究所で撮影したギョウジャニンニクとの比較写真を追加
        2018.2.8
本ウェブサイトの情報を無断で転用することを禁じます
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
 

 

農研機構ホーム