トリカブト

トリカブト属(Aconitum)の総称

英名:aconite, monkshood

トリカブトはキンポウゲ科の多年草で、トリカブト属の植物を総称する場合と、中国原産で園芸用に栽培されるハナトリカブト(A. carmichaeli Debx.)をさす場合があります。日本に自生するトリカブト属は40種余りで、主なものにはエゾトリカブト(A. sachalinense F.Schmidt subsp. yezoense ( Nakai) Kadota)、オクトリカブト(A. japonicum Thunb. ex Murray subsp. subcuneatum (Nakai) Kadota)、ヤマトリカブト(A. japonicum Thumb. ex Murray subsp. japonicum)、ホソバトリカブト(A. senanense Nakai subsp. senanense)、タンナトリカブト(A. japonicum Thumb. ex Murray subsp. napiforme (H.Lev. & Vaniot) Kadota)などがあります。茎は直立して高さ1m位になり、夏に濃紫色で烏帽子のような形をした花を多数つけます。トリカブトの名前の由来は、この花の形が舞楽のかぶり物である鳥兜に似ているためです。花がついているときにはトリカブトを見間違うことはないのですが、芽吹きの頃にはニリンソウ、セリ、ゲンノショウコなどと似ているため、山菜と間違えた中毒事故がよく起こります。漢方では、トリカブトの母根を烏頭(うづ)、子根を附子(ぶし)と言い、鎮痛、抗リウマチ、強心作用があるとされています

 

(手前:ニリンソウ、奥:トリカブト  札幌市、5月)

有毒成分

トリカブトからは多くのジテルペンアルカロイドが分離されていますが、構造上エステル結合が2つあるもの、1つのものそしてエステル結合がないものの3種に分けられます。そのなかで、ジエステルアルカロイドの毒性が最も強いことが知られています。このグループの代表的なアルカロイドには、アコニチン(aconitine)およびメスアコニチン(メサコニチン、mesaconitine)があります。前述のようにトリカブトの根は漢方薬として用いられていますが、毒性が強いため「修治」という減毒加工が行われます。これによりアコニチンの基本骨格にエステル結合しているベンゾイル基とアセチル基がはずれ、毒性が低下すると考えられています。

アコニチンやメスアコニチンの毒性は極めて強く、マウスへの皮下注射におけるLD50はそれぞれ 0.308mg/kg および 0.213mg/kg と報告されています。人では2〜5mgで死に至ります。

アコニチンは、ナトリウムチャンネル蛋白のαサブユニットに結合し、ナトリウムチャンネルが閉じる(不活性化)のを抑制します。ナトリウムチャンネルの活性化とこれによる過度の脱分極により、興奮性の低下や疼痛伝達の抑制が起こります(1)。また、海馬シナプトソームでのノルエピネフリンの吸収を阻害することも報告されています(2)。

検査法

植物中のアコニチンの定性試験は、抽出物からアコニチンの結晶を形成させ、その形態から確認する方法がAOACの公定法になっています(3)。血液あるいは尿中の、アコニチンなどのジエステルアルカロイドおよびその生体内代謝物の検出・同定には、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)(4)や液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)(5)が使われます。

中毒症状

アコニチンやメスアコニチンによる中毒症状としては、口唇や皮膚の灼熱感、流涎、嘔吐、歩行困難、呼吸困難などがみられ、呼吸中枢麻痺によって死に至ります。わが国では馬の中毒がいくつか報告されていて、急性中毒では、流涎、全身の筋の痙攣、疝痛、知覚過敏、頻尿、粘膜の鬱血後に貧血、呼吸困難などを呈し、最後には運動や呼吸の麻痺によって死亡したと報告されています。また、少量のトリカブトを50日間にわたって投与した実験では、体重減少、消化管のカタール、心機能障害、四肢の冷性浮腫、赤血球抵抗性の低下などが観察されています(家畜有毒植物学)。

病理所見

急性死することが多く、窒息時に起こりがちな出血と充血以外に著変はみられません。

文献

1) Ameri, A. 1998. The effect of Aconitum alkaloids on the central nervous system. Prog.Neurobiol. 56: 211-235.

2) Ameri, A. and Seitz, U. 1998. Effects of mesaconitine on [3H]noradrenaline uptake and neuronal exitability in rat hippocampus. Exp.Brain Res. 121: 451-456.

3) Anonymous 1965. Official Method of Analysis of the Association of Official Agricultural Chemists. pp538.

4) Mizugami, M et al. 1998. Quantitative analysis of Aconitum alkaloids in urine and serum of a male attempting suicide by oral intake of aconite extract. J.Anal.Toxicol. 22: 336-340.

5) Ohta, H. et al. 1997. Determination of Aconitum alkaloids in blood and urine samples. 1. high-performance liquid chromatographic separation, solid phase extraction and mass spectrometric confirmation. J. Chromatogr. B Biomed. Sci. Appl. 691: 351-356.

 

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最終更新日:2010.5.27 ニリンソウとトリカブトの写真追加
        2018.2.8
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