トウゴマ

学名:Ricinus communis L.

英名:caster bean, castor-oil plant

ヒマとも呼ばれるトウダイグサ科トウゴマ属の木質草本で、熱帯東アフリカが原産です。熱帯では多年にわたって成長しますが、日本のような温帯では冬に枯れるので一年草として扱われます。日本では夏から秋にかけて円錐花序を出します。さく果は長さ2cmほどで、中に楕円形の種子を3個入れています。種子から得たひまし油は、下剤のほか塗料などの工業原料としても用いられます。

 
(青森県、9月)
(茨城県つくば市、11月)

有毒成分

トウゴマの種子には有毒蛋白質のリシン(ricin)やアルカロイドのリシニン(ricinine)が含まれています。

リシンは、分子量32000のA鎖と34000のB鎖からなる糖蛋白質(1,2)で、A鎖のリボソーム不活性化作用(RNA N-グリコシダーゼ)作用によって蛋白質の合成を阻害します(3)。この作用は、腸管出血性大腸菌のベロ毒素の作用と同じです。蛋白質なので、経口毒性より非経口毒性の方が強く、エアロゾル化したリシンが化学兵器として利用されたこともあります。B鎖はレクチンで、細胞表面の糖鎖との結合に関与しています(4)。

リシニンも種子に含まれるアルカロイドで、吐き気やけいれん、血圧降下を起こすことが知られています(5)。

リシン自体は加熱により不活化されますが、種子からひまし油を採取した後のヒマシ粕については、加熱条件によっては毒性が残ることがあるようです。加熱に加え、水酸化カルシウムの添加などにより飼料化を目指す研究も行われています(6)。

中毒症状(CDCの情報から)

リシンそのものをエアロゾルとして吸入した場合、数時間後には呼吸困難、発熱、咳、吐き気などの症状があらわれ、その後に肺水腫や極度の発汗などの症状があらわれます。吸入量が多ければ、血圧の低下や呼吸困難で死にいたります。

トウゴマの種を食べるなどしてリシンを経口摂取した場合は、嘔吐、下痢といった消化器症状を呈します。これにより脱水し血圧が低下します。また、幻覚や痙攣などの症状あらわれることがあります。摂取量が多ければ、数日後には肝臓、脾臓、腎臓の機能が低下し、死にいたります。

文献

  1. Osborne, TR et al. 1905. A STUDY OF THE PROTEINS OF THE CASTOR BEAN, WITH SPECIAL REFERENCE TO THE ISOLATION OF RICIN. Am. J. Physiol. 14: 259-286.
  2. Ishiguro, M et al. 1964. BIOCHEMICAL STUDIES ON RICIN. I. PURIFICATION OF RICIN. J Biochem. 55: 587-592. 
  3. Sperti, S. et al. 1973. Inhibition by ricin of protein Synthesis in vitro: 60S ribosomal subunit as the target of the toxin. Biochem. J. 136: 813-815.
  4. Baenziger, JU and Fiete, D. 1979. Structural determination of Ricinus communis agglutinin and toxin specificity for oligosaccharides. J. Biol. Chem. 254: 9795-9799.
  5. Ferraz, AC et al. 2002. Amino acid and monoamine alterations in the cerebral cortex and hippocampus of mice submitted to ricinine-induced seizures. Pharmacol. Biochem. Behav. 72(2): 779-786.
  6. Gionbelli, TRS., et al. Utilization of castor bean meal treated with calcium hydroxide, fed wet or dry, by lamb.  Livestock Science 168 (2014) 76-83.

 

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最終更新日:2017.2. 毒物情報、中毒症状の修正、種子写真、文献の追加等大幅な更新

  

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