オナモミ

学名:Xanthium strumarium L.

オオオナモミ

学名:Xanthium canadense Mill.

英名:cocklebur

オナモミ属の植物は世界に広く分布する一年草です.日本でも各地でみられ,子供の頃トゲトゲの実を友達の服にくっつけたりして遊んだ人も多いと思います.このトゲは実を動物の体にくっつけて遠くまで運ばせるのに役立っています.オナモミは,漢方で解熱,発汗,頭痛薬として用いられてきました.また葉を揉んでつけると虫さされに効くところから「ナモミ(生揉み)」の名前が付いたとも言われています.メキシコ原産の帰化植物のオオオナモミはオナモミに比べて草全体が大きい種です.今では日本各地に自生しており,都市近郊ではむしろオオオナモミの方が優勢のようです.日本でみられるオナモミ属の植物としては,他にイガオナモミ(X. italicum),トゲオナモミ(X. spinosum) がありいずれも帰化植物です.

 海外ではオナモミ (X. strumarium) による牛(3,7),豚(6)の中毒,X. cavanillesii による牛,羊の中毒(4,5)が報告されています.わが国では、H19年に広島県で牛の中毒事例が発見され(8)、その後も散発しています.

オオオナモミ

オオオナモミ

写真はすべて九州沖縄農業研究センター(現 秋田県立大)森田弘彦氏提供

 

有毒成分

 オナモミの有毒成分としては,カルボキシアトラクティロシド(carboxyatractyloside)が同定されており,LD50は13.5mg/kg 体重(ラット腹腔投与)と報告されています1).カルボキシアトラクティロシドは,細胞内での酸化的リン酸化とミトコンドリア膜におけるATPの転移を阻害します.オナモミ中毒の特徴の一つである低血糖は,この酸化的リン酸化の脱共役と関連しているものと考えられています(2).

 オナモミによる家畜中毒のほとんどは,成長した植物ではなく地面に落ちて発芽した実(子葉期 cotyledon stage, dicotyledonary stage)を食べて起こります.したがって,中毒は多くの場合早春に起きています.中毒量は子牛でcotyledon 7.5-10g/kg体重と報告されています(5).また豚ではcotyledonを体重の0.75 - 3 % あるいはトゲの付いた実を飼料の20-30%給与して中毒を起こしたと報告されています(6).(トゲの付いた実を体重の20-30%という記載は誤りでした.おわびして訂正します.2006.3.7)

検査法

 植物体,第一胃内容物および尿中のカルボキシアトラクティロシドの同定,定量法としては,薄層クロマトグラフィーによる方法が報告されています(7)が,カルボキシアトラクティロシド標準品は市販されていません.

 

中毒症状

 中毒症状は摂取後数時間で現れます.歩様蹌踉,沈鬱,筋収縮,痙攣,横臥,呼吸および心拍数増加し,重症例では12-24時間で死に至ります.

 オナモミ(X. strumarium )から抽出したカルボキシアトラクティロシドを豚に投与した試験では,野外発生の中毒と同様,急性の肝壊死が起こり,同時に著しい低血糖,血清AST, ICDH(イソクエン酸脱水素酵素)の上昇が観察されています(6).

病理所見

 解剖所見,組織所見はどの動物もほぼ共通で,肝臓の腫大,肝割面の点状または斑状出血,また胸腔や腹腔への黄色液体の貯留がみられます.その他,漿膜の点状,斑状出血,膀胱壁の浮腫も報告されています.組織所見としては肝中心小葉の充出血を伴った変成,壊死が観察されます.

文献

1) Hatch, R.C. 1982. Toxicologic study of carboxyatractyloside (active principle in cocklebur- Xanthium strumarium) in rats treated with enzyme inducers and inhibitors and glutathione precursor and depletor. Am. J. Vet. Res. 43:111-116 .

2) Luciani, S. et al. 1971. Effects of carboxyatractyloside, a structual analogue of atractyloside, on mitochomdorial oxidation phosphorylation. Life Sci. 10:961-968.

3) Martin, T. et al. 1986. Cocklebur poisoning in cattle. J. Am. Vet. Med. Assoc. 189:562-563.

4) Mendez, M.C. et al. 1998. Intoxication by Xanthium cavanillesii in cattle and sheep in southern Brazil. Vet. Hum. Toxicol . 40:144-147.

5) Riet-Correa, F. et al. 1998. Recentry encountered poisonous plants of Rio Grande do Sul and Uruguay. In Toxic plants and other natural toxicants. p1-5.

6) Stuart, B.P. 1981. Cocklebur (Xanthium strumarium, L. var. strumarium) intoxication in swine: review and redefinition of the toxic principle. Vet. Pathol. 18:368-383.

7) Witte, S.T. 1990. Cocklebur toxicosis in cattle associated with the consumption of mature Xanthium strumarium. J. Vet. Diagn. Invest. 2:263-267.

8) 玉野光博ら 2009. オモナミ中毒が疑われた肉用繁殖牛の死亡事例 広島県獣医学会雑誌, No.24, 41-45.

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最終更新日:2014.9.3 H19年の広島県での中毒事例情報を追加

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