ギシギシ

学名:Rumex japonicus Houtt.

英名:curly dock

日本全土に分布する多年草で,道ばたによく生えている,これもおなじみの雑草です.初夏に約1mの茎を伸ばし,ソバに似た花を鈴なりにつけます.よく似た植物にスイバ(スカンポ,Rumex acetosa)がありますが,スイバの葉の基部が矢尻型になっているのに対して,ギシギシの葉の基部は丸いのが特徴です.どちらも全草にシュウ酸を含みます.日本では最近中毒の報告はありませんが,海外ではナガバギシギシ(Rumex crispus)による羊の中毒(4),Rumex venosus による牛の中毒(2)などが報告されています.

有毒成分

植物に含まれるシュウ酸には可溶性のものと不溶性のものがあります.不溶性のシュウ酸を含むものとして代表的なのがサトイモ科の植物(コンニャクイモ,ザゼンソウ,ミズバショウなど)ですが,針状結晶のシュウ酸(シュウ酸カルシウム CaC2O4)のため口に入れたときの刺激が強く,大量に摂取することはないと考えられます.一般に家畜が中毒を起こすのは可溶性のシュウ酸を含む植物で,カタバミ科Oxalis属,タデ科Rumex属の植物は,全草に酸性シュウ酸カリウム(シュウ酸水素カリウム KHC2O4 )を10% 程度,あるいはそれ以上含んでいます.この他,アカザ科の植物にも可溶性のシュウ酸(シュウ酸ナトリウム (CO2Na)2 )が10% 以上含まれています(7).

シュウ酸が多量に摂取されると,消化器粘膜を刺激して炎症を起こします.また多量のシュウ酸が体内に吸収されると体液,組織のカルシウムと不溶性の塩を作るため低カルシウム血症を起こします.腎臓ではシュウ酸カルシウムの結晶で尿細管が塞がれることがあり,結晶が脳組織に及ぶと,麻痺と中枢神経系の障害が起こることがあります.

シュウ酸中毒は多くの場合,乾物量に対して10% 以上のシュウ酸を含む植物の摂取によって起こります.しかし摂取シュウ酸量と中毒の程度は必ずしも相関しません(7).これは,飼料中のカルシウム含量,第一胃内でのシュウ酸分解能などの要因によるものと考えられます.シュウ酸は第一胃内の細菌 Oxalobacter formigenes によって分解されます.したがって,日常的にシュウ酸を含む植物を少しづつ摂取することにより,第一胃内でのシュウ酸分解能が高まり,動物のシュウ酸吸収量は少なくなって中毒になりにくくなります(1).

検査法

植物中の可溶性シュウ酸は,薄層クロマトグラフィー法(5)やガスクロマトグラフィー法(6)で分析できます.また,キャピラリー電気泳動法で,硝酸態窒素との同時分析も可能です(3).

中毒症状

中毒の主徴は流涎,胃腸炎,重度の下痢,筋肉の振せん,瞳孔散大,強直性痙攣,発汗,虚脱,体温低下などです.血液生化学的所見では,低カルシウム血症,高窒素血症が急性中毒のよい指標となります.しかし亜急性の場合,これらの変化は明かではありません(4).

病理所見

胃腸炎を主病変とし,そのほか腎炎を伴います.これらの臓器には出血性の変化がみられます.特徴的所見として,腎臓主部,局部の細尿管腔内に無色の多角形様結晶物(シュウ酸カルシウム)が見らます.

 

文献

1) Allison,M.J. 1977. Changes in ruminal oxalate degradation rates associated with adaptation to oxalate ingestion. J. Anim. Sci. 45:1173-1179.

2) Dickie, C.W. et al. 1978. Oxalate (Rumex venosus) poisoning in cattle. J. Am. Vet. Med. Assoc. 173:73-74.

3) Miyazaki, M. et al. 2003. Simple capillary electrophoretic determination of soluble oxalate and nitrate in forage grasses. J. Vet. Diagn. Invest. 15:480-483.

4) Panciera, R.J. et al. 1990. Acute oxalate poisoning attributable to ingestion of curly dock (Rumex crispus) in sheep. J. Am. Vet. Med. Assoc. 196:1981-1984.

5) Roughan PG, Slack CR: 1973, Simple methods for routine screening and quantitative estimation of oxalate content of tropical grasses. J Sci Food Agric 24:803-811.

6) Rumsey TS, Noller CH, Rhykerd CL, Burns JC: 1967, Measurement of certain metabolic organic acid in forage, silage, and ruminal fluid by gas-liquid chromatography. J Dairy Sci 50:214-219.

7) Spoerke, D.G. 1990. Oxalate. In Toxicity of house plant. (CRC press) p29-32.

 

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最終更新日:2004.5.10

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