ソテツ

学名:Cycas revoluta Thunb.

英名:Japanese sago palm

ソテツはソテツ科の常緑低木で、九州南部から沖縄に自生しています。幹は直径30cmくらいで、古い葉柄の基部が残ってうろこ状に見えます。樹高は2mから5mに達し、側方から芽を出して枝分れすることもあります。葉は幹の頂上に四方に広がるようについています。雌雄異株で、雄花、雌花とも茎頂に一つつき、夏に開花します。雌花は多数の大胞子葉の集合で、各大胞子葉の下部に胚珠がつきます。胚珠は秋から冬にかけて成熟し、長さ4cmほどの赤色の種子になります。種子や幹は多量のでんぷんを含むため、かつては食用にされましたが、有毒物質を含むのでしばしば中毒が発生しました4)。

(沖縄県八重山家畜保健衛生所提供)
 
(沖縄県八重山家畜保健衛生所提供)
(沖縄県八重山家畜保健衛生所提供)
 
(沖縄県八重山家畜保健衛生所提供)

有毒物質

ソテツの有毒成分はサイカシン(cycasin)という配糖体です。消化管微生物のβ-D-グルコシダーゼによって糖が取れてアグリコン(aglycon, 非糖体)のメチルアゾキシメタノ−ル(methylazoxymethanol)になります。メチルアゾキシメタノールは容易にホルムアルデヒドに変化し、中毒を起こします。ソテツを食用にする際には、よく水に晒してサイカシンを除くか、十分加熱してサイカシンを分解することが重要です。最近も、愛媛県の中学校で理科の時間にソテツの種子を焼いて食べたところ、生徒が中毒になるという事故がありました。種子の焼き方が不十分で中毒になったようです。

また、アグリコンのメチルアゾキシメタノールは発がん性を有することが知られています(4)。さらに、メチルアゾキシメタノールはホルムアルデヒドを発生する際にジアゾメタンに代謝されますが、ジアゾメタンにも発がん性があります。

ソテツ科の植物を長期間給与した牛などで、脊髄の軸索変性による後肢の麻痺が報告されています(1,3)。また、グアム島などの西大平洋諸島で、ソテツ科の植物からデンプンを採って食用としている住民に、amyotrophic lateral sclerosis/Parkinsonism-dementia complex (ALS/PDC)が多発することが知られています(5) 。サイカシンやメチルアゾキシメタノールではこのような障害は起こりません。ソテツ科の植物に含まれている非タンパク性アミノ酸の一種であるβ-N-メチルアミノ-L-アラニン(β-N-methylamino-L-alanine)に神経毒性があり、人での障害との関連が指摘されています (2)。牛の場合も、サイカシンの投与では野外例のような後躯麻痺を再現できないことから(6)、サイカシン以外の何らかの物質が中毒に関与しているものと思われますが、β-N-メチルアミノ-L-アラニンと牛の後躯麻痺との関連は明らかにはなっていません。

中毒症状

沖縄では、1975年に牛のソテツ中毒が初めて確認され、以後1982年までに116頭の牛が中毒になり、そのうち29頭が死亡したと報告されています(6)。中毒の発生は、草地に草が少なくソテツの新芽がでる4月から6月頃にみられます。中毒症状は、後躯の運動失調と麻痺が特徴で、発症した牛は衰弱し腰部の麻痺や跛行を呈します。また、角が抜け落ちることもあります。血液生化学所見では、ソテツの葉の給与実験開始直後にGGT活性が上昇したと報告されていますが、その他の項目に著変はみられません。

病理所見

脊髄の全長にわたって、白質で髄鞘の変性がみられます。切片をMarchi と Guillery の方法で銀染色することにより、病変の観察が容易に行えます。また、直径10〜50ミクロンの大きな好酸性のスフェロイド(球状体)が脊髄路と延髄で観察されます。

文献

1) Hooper, P. et al. 1974. Axonal dystrophy in the spinal cord of cattle consuming the cycad palm, Cycas media. Aust. Vet. J. 50: 146-149.

2) Seawright, A.A. et al. 1990 Selective degeneration of cerebeller cortical neurons caused by cycad neurotoxin, L-beta-methylaminoalanine (L-BMAA), in rats. Neuropathol. Appl. Neurobiol. 16: 153-169.

3) Shimizu, T. et al. 1986. Hepatic and spinal lesions in goats chronically intoxicated with cycasin. Jpn. J. Vet. Med. 48: 1291-1295.

4) Spatz, M. 1969. Toxic and carcinogenic alkylating agents from cycads. Ann. N.Y. Acad. Sci. 163: 848-859.

5) Spencer, P. et al. 1987. Guam amyotrophic lateral sclerosis-perkinsonism-dementia linked to a plant excitant neurotoxin. Science 237: 517-522.

6) Yasuda, N. and Shimizu, T. 1998. Cycad poisoning in cattle in Japan - studies on spontaneous and experimental cases. J. Toxicol. Sci. 23(suppl.):126-128.

 

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最終更新日:2012.7.20  写真提供者について誤りを修正(4枚とも沖縄県八重山家畜保健衛生所提供
        2018.2.8
      

 

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