キョウチクトウ

学名:Nerium indicum Mill.

英名:oleander

キョウチクトウはキョウチクトウ科の常緑低木です。中国名の夾竹桃は、葉の形状が竹に似ていて、花が桃に似ていることからきています。在来種はインド原産で江戸時代に日本へ入ったと言われており、種名のindicumはインドに由来しています。別種にヨーロッパ原産のセイヨウキョウチクトウ(N. oleander L.)があり、キョウチクトウの花には芳香があるのに対し、セイヨウキョウチクトウには芳香がないなどの点で区別しています。しかし種子から多数の個体を育てると、区別しにくい中間型が多く出現することから、別種とするよりも変種と考えた方が合理的とも言われています。葉は厚く長楕円形で、質感はまったく異なるのですが形状だけは竹の葉に似ています。花は枝の先端に群がってつき、初夏から秋にかけて開花します。多数の園芸品種があり、花色は、白、ピンク、黄色などさまざまで、八重咲きもあります。庭木としてはもちろん、大気汚染にも強いことから高速道路の植栽などにも用いられています。

有毒成分

ステロイドをアグリコン(aglycon、非糖体)とする配糖体のうち、心筋に作用してうっ血性心不全に効果を示すものを強心配糖体(cardiac glycosides)と呼びます。

キョウチクトウには種々の強心配糖体が含まれていますが、量的にもっとも多いのがオレアンドリンです。アグリコンはオレアンドリゲニン(oleandrigenin)で、これとオレアンドロース(oleandrose)と呼ばれる糖がO-グリコシド結合したものがオレアンドリンです。キョウチクトウの生葉中ではオレアンドリンはさらゲンチオビオース(gentiobiose、グルコース2分子がβ1→6結合した二糖類)と結合したオレアンドリンゲンチオビオシドとして存在しています。この物質はオレアンドリンよりも毒性はやや低いといわれています。植物内や動物の消化管内でこの2分子のグルコースが酵素により切断されるとオレアンドリンになります。キョウチクトウ中の有毒物質の量は植物の成熟時期によって異なり、開花時期がもっとも多いと言われています。また致死量については、乾燥葉として50mg/kg(牛、経口)と報告されています7)。

1785年にイギリスの医師Witheringは、ジギタリス(Digitalis purpurea)の葉の抽出物を適量用いることによって心不全に伴う症状を改善できることを発表しました。1869年にはジギタリスの薬効成分として強心配糖体、ジギトキシン(digitoxin)が分離されました。その後、アフリカで矢毒の原料として使われてきたキョウチクトウ科の植物 Strophanthus hispidus からH-ストロファンチン(H-strophanthin)が、Strophanthus gratus からはG-ストロファンチン(G-strophanthin、ウアバインouabain)が分離され、これらの物質の作用機序が研究されてきました。強心配糖体は、細胞膜に存在するNa+・K+・ATPases の細胞外部分に結合し、この酵素活性を阻害します。このため、細胞内に入ったNa+が流出せず、流出したNa+の流入に共役するCa2+の流出も阻害され、結果として細胞内にCa2+が蓄積します。心筋は骨格筋に較べてCa2+濃度への依存性が高く、Ca2+が蓄積すると心筋の収縮が増強されます。これが強心配糖体の心筋への作用機構と考えられています。

本書に収載されている植物で強心配糖体を含むものには、スズラン、フクジュソウ、モロヘイヤがありますので、それぞれの項も参照してください。さらに、ユリ科のカイソウ(海葱、Urginea(Scilla) maritima)、キンポウゲ科のエンコウソウ(Caltha palustris)、クリスマスローズ (Hellebourus niger)、ニシキギ科 Euonymus属(ニシキギ、マサキの仲間)なども強心配糖体を含むことが知られています(9)。また家畜の中毒としては、フクジュソウの仲間のpheasant's eye (Adonis microcarpa)の種子による豚の中毒(2)、ドイツスズランによる犬の中毒(6)、クリスマスローズの仲間 Helleborus foetidus による牛の中毒(5)などが報告されています。

検査法

植物や消化管内容からのオレアンドリンの検出は薄層クロマトグラフィーによる方法が報告されています(1,3,8)。オレアンドリンの確定には、高速液体クロマトグラフ/質量分析計(HPLC/MS)が使われます(10)。

高速液体クロマトグラフィーによる血液中オレアンドリンの測定法も報告されていますが(7)、ラットに致死量のオレアンドリンを投与しても血液からはオレアンドリンおよびオレアンドリゲニンは検出されず、オレアンドリンの脱アセチル体のみ検出されたとの報告もあります(11)。従って、生体成分の分析の際にはオレアンドリンの代謝物についても留意する必要があるでしょう。動衛研毒性物質制御研究室では、ポストカラムラベル高速液体クロマトグラフィー法による、牛血液中オレアンドリンの高感度分析法を開発しています(4)。

中毒症状

中毒症状としては、疝痛、下痢、頻脈、運動失調、食欲不振などが報告されていますが、いずれも特徴的なものではなく、動物の急死によって気がつくこことがほとんどであると報告されています(3)。

病理所見

主病変は重度のカタル性ないし出血性胃腸炎です。場合によっては咽頭の炎症を伴うこともあります。心臓、奬膜および粘膜では、点状あるいは斑状出血がみられます。出血は膀胱および髄膜でも認められ、血色あるいは透明な胸水や腹水もしばしばみられます。馬では、血尿と腎皮質の点状出血、軽度の中毒性肝炎および中毒性尿細管腎症がみられます。皮質尿細管は重度に壊死し、管腔内にはヘモグロビン円柱が観察されます。

文献

1) Blum, L.M. and Rieders, F. 1987. Oleandrin distribution in a fatality from rectal and oral Nerium oleander extract adnimistration. J. Anal. Txicol. 11: 219-221.

2) Davies, R.L. and Whyte, P.B. 1989. Adonis microcarpa (pheasant's eye) toxicity in pigs fed field pea screenings. Aust. Vet. J. 66:141-143 .

3) Galey, F.D. et al. 1996. Diagnosis of oleander poisoning in livestock. J.Vet.Daig. Invest. 8: 358-364.

4) Hamada, K. et al. 2002. Determination of bovine blood oleandrin by high-performance liquid chromatography and postcolumn derivatization. J. Chromatogr. Sci. 40:515-518.

5) Holliman, A. and Milton, D. 1990. Helleborus foetidus poisoning of cattle. Vet. Rec. 127: 339-340 .

6) Moxley, R.A. et al. 1989. Apparent toxicosis associated with lily-of-the-valley (Convallaria majalis) ingestion in a dog. J. Am. Vet. Med. Assoc. 195:485-487.

7) Namera, A. et al. 1997. Rapid quantitative analysis of oleandrin in human blood by high-performance liquid chromatography. Jpn. J. Legal Med. 51: 315-318.

8) Oryan, A. et al. 1996. Morphological studies on experimental oleander poisoning in cattle. J. Vet. Med. A, 43: 625-634.

9) Spoerke, D.G. 1990. Cardiac glycosides. In Toxicity of house plant. (CRC press) p11-13.

10) Tracqui, A et al. 1997. Confirmation of oleander poisoning by HPLC/MS. Int. J. Legal. Med. 111:32-34.

11) 高江洲一ら 1998. キョウチクトウ中毒の生体試料からの証明法の検討 法中毒. 16(2)136-137.

 

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最終更新日:2014.9.3  文献書誌情報の誤りを修正
        2018.2.8
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