動物のインフルエンザ


インフルエンザ治療薬(アマンタジン)の作用機序

    1998年11月末に厚生省は、塩酸アマンタジン(C10H17N.HCl)をインフルエンザの治療薬として、認可した。この薬はA型インフルエンザウイルスのM2(Membrane)蛋白と結合し、その機能を阻害することによりウイルスの増殖を抑制する。
    M2蛋白は第7分節から合成される97個のアミノ酸から成っている。M2蛋白はウイルスのエンベロープに一個の粒子あたり平均20-60分子しか存在しないが、ウイルス感染細胞表面には比較的多く存在する(106-107/細胞)。このM2蛋白4個で構成される四量体が一つの機能する単位となっている。水素イオン(プロトン)などの一価の陽イオンを能動的に輸送するイオンチャンネルとして働いている。
    アマンタジンはこのイオンチャンネルをウイルスの増殖過程の二つの段階で阻害する。ウイルス粒子が吸着して、エンドサイトーシスで酸性エンドソームの形で細胞内に取り込まれる。この時M2イオンチャンネルが活性化して、プロトンが流入しウイルス粒子内が酸性になる。その結果M1(Matrix)蛋白とRNP(ウイルスRNAと核蛋白の複合体)の結合が弛む、それと同時に酸性環境で構造変換したHAによりウイルスのエンベロープとエンドソーム膜が融合し、RNPが細胞質内に放出される。この過程を脱殻と言うがアマンタジンがM2蛋白に結合するとイオンチャンネルが働かなくなりこの脱殻が進まず、ウイルスの増殖は阻害されることになる。
    1997年香港の新型インフルエンザウイルスのような家禽ペスト型ウイルスの中にはウイルス蛋白合成後に、M2イオンチャンネルが働かないとウイルス粒子が形成されないものもある。一般のA型インフルエンザウイルスでは、前駆体のHA0が細胞表面に輸送された後、プロテアーゼ(蛋白分解酵素)によって、HA1とHA2に開裂する。この開裂が起こらないと、ウイルスは感染性を持たない。しかし、家禽ペスト型のウイルスでは、細胞のゴルジ体内のプロテアーゼでこの開裂が起こってしまう。この時、アマンタジンによってM2イオンチャンネルが働かないとゴルジ体内が酸性のため、HAが非可逆的な構造変換をおこし、HA蛋白が凝集して、ウイルス粒子の形成が抑制される。

参考文献:坂口 剛正; ウイルスのイオンチャンネル: インフルエンザウイルスM2蛋白の構造と機能 ウイルス 47(2), 177-186(1997)


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