飼料イネの病害


  南方黒すじ萎縮病 (nampo-kurosuji-ishuku-byo) Southern black-streaked dwarf
病原菌:Southern black-streaked dwarf virus、ウイルス
 イネ株の萎縮、葉先のねじれおよび葉脈の隆起(黒すじ)等を引き起こし、2010年に九州で発生し、その後中国地方にも発生が拡大した。特に生育初期に感染すると株が激しく萎縮し、葉先のねじれ、穂の出すくみ、ろう物質の溢出などが生じ、地上部および穀粒とも収量は大きく減少する。病原ウイルスはセジロウンカにより媒介され、ベトナムや中国で発生していた害虫が日本に飛来し、発病したと考えられている。「北陸193 号」,「タカナリ」等、飼料イネでの発生が多く、食用イネでは今のところ少ない。病原ウイルスは、トウモロコシ、イヌビエおよびミズガヤツリ等にも感染するとされる。


赤かび病 (akakabi-byo) Scab, Fusarium blight
病原菌:Fusarium asiaticum O' Donnell, T. Aoki, Kistler et Geiser, Fusarium incarnatum (Desmazieres) Saccardo, Fusarium sporotrichioides Sherbakoff, Gibberella zeae (Schweinitz) Petch (=Fusarium graminearum Schwabe)、子のう菌
 飼料イネでは関東地方および北海道で発生が報告されている糸状菌病。もみでは初め淡褐色の小斑点を生じ,やがてこれが拡大してもみ全体が褐色に変色し,植物組織が破壊される。多発すると黄熟期からフモニシンなどのマイコトキシンが蓄積され始め、完熟期に蓄積量は最大となる。病原菌Gibberella zeaeは種複合体だが、食用イネではF. graminearum s.str.が病原として報告されている。飼料イネでは、Fusarium asiaticum, F. incarnatumおよびF. sporotrichioidesが病害を引き起こすことが報告されており、F. fujikuroi等も分離される。


いもち病 (imochi-byo) Blast
病原菌:Magnaporthe oryzae Couch (=Pyricularia oryzae Cavara)、子のう菌
 飼料イネの栽培とともに九州を中心に発生が確認されている糸状菌病。葉に初め灰緑色、水浸状の病斑を形成し、後に周縁部褐色の紡錘形病斑となり、激しい葉枯を引き起こす。病斑の大きさは長さ2〜10mm、幅1〜3mm程度。飼料イネ品種には抵抗性が導入されていることが多いが、病原菌のレース分化に注意が必要である。


稲こうじ病 (inakouji-byo) False smut
病原菌:Villosiclava virens E. Tanaka & C. Tanaka (= Ustilaginoidea virens (Cooke) Takahashi)、子のう菌
 冷涼地で発生の多い病害。初め籾に黄緑色の塊が現れ、後に肥大・黒化し、厚壁胞子を多量に形成して粉状となり、収穫期に近づくと黒色の菌核を形成する。低温多湿などの好適条件下では大発生し、半数以上の穂が罹病する。特に飼料イネでは発生が多い。病原菌はマイコトキシンであるウスティロキシン(Ustiloxin)を産生する。罹病イネのホールクロップサイレージ(WCS)は牛への嗜好性低下が見られるが、通常のWCS給与量では家畜の健康への影響は見られないとされる。


紋枯病 (mongare-byo) Sheath blight
病原菌:Rhizoctonia solani Kuhn AG-1 TA、担子菌
 激発すれば植物体全体の枯死にもつながる重要な糸状菌病。梅雨入り前から地際部で発病し、病斑が葉鞘を伝って上部へ進展する。病斑は周縁部褐色、中心部灰白色の雲形斑となる。発生後期には病斑上に褐色で表面が滑らかな菌核をつくり、これが地面に落ちて翌年の感染源となる。高温(特に30℃以上)高湿条件で多発し、1日1cm以上病斑が進展する。イネでは病原菌はR.solani菌糸融合群AG-1 培養型TAであり、これは牧草葉腐病、トウモロコシ・ソルガム紋枯病などと共通している。


葉鞘腐敗病 (yosho-fuhai-byo) Sheath rot
病原菌:Sarocladium oryzae (Sawada) Gams & Hawksworth、担子菌
 飼料イネでは2003年に初めて発生が確認された。葉鞘に長さ5-10mmの褐色斑紋を生じ、健全部との境界は明瞭となる。発生後期には病斑は大きく拡大し、穂が褐変したり、葉鞘内部で枯死して抽出しなくなる。飼料イネ品種に特異的に多発生した。病原菌は3,4本に分岐した分生子柄上に、無色、単細胞、楕円形の分生子を形成する。


心枯線虫病 (shingare-senchu-byo) White tip
病原菌:Aphelenchoides besseyi Christie、線虫
 古くからホタルイモチ、シロイモチなどとして知られ、葉先が白く枯れ、異常生育や黒もみ(黒点米)を引き起こす。種もみの汚染によって引き起こされる種子伝染性病害であり、苗床で発生が拡大する。病原のイネシンガレセンチュウはアワ不稔病も引き起こす。

最初のページに戻る