ライムギの病害


かさ枯病 (kasagare-byo) Bacterial halo blight
病原菌:Pseudomonas syringae pv. coronafaciens (Elliott 1920) Young, Dye & Wilkie 1978、バクテリア
 茨城県で最近発生が確認された細菌病。葉に灰褐色から黄褐色、楕円形の病斑を形成し、病斑の中心部は壊死し、周縁部は黄化・退緑して「かさ枯れ」となる。病斑の大きさは「かさ枯れ」部分を含めて、長さ5〜20mm、幅2〜5mm程度となる。


赤さび病 (akasabi-byo) Leaf rust
病原菌:Puccinia recondita Roberge ex Desmazieres、担子菌
 ライムギの代表的なさび病。葉、葉鞘、稈上に表皮が破れた粉状の夏胞子堆を形成する。夏胞子堆は小さく、赤褐色で、多くは互いに融合せずに散在する。後に冬胞子堆を形成し、表皮は破れず、黒褐色である。


麦角病 (bakkaku-byo) Ergot
病原菌:Claviceps purpurea (Fries) Tulasne、子のう菌
 穂に麦角(菌核)を形成し、これが家畜毒性を持つ。開花直後から穂にあめ色の蜜滴を形成し始め、蜜滴内に含まれる多量の胞子が風雨で飛散して伝播する。感染した穂には種子のかわりに表面白色、その下は黒紫色、牛の角状で、長さ15〜25mm、幅2.5〜3.5mmの麦角を形成する。麦角は地上に落ち、翌年に発芽して伝染源となる。病原菌は寄主範囲が広く、オーチャードグラス、チモシー、フェスクなどにも感染する。麦角中のアルカロイドはエルゴバリンなど毒性の強いものであり、家畜の流産などを引き起こす。


斑点病 (hanten-byo) Leaf blotch
病原菌:Cochliobolus sativus (Ito et Kuribayashi) Drechsler ex Dastur (=Bipolaris sorokiniana (Saccardo) Shoemaker)、子のう菌
 主に葉に発生する斑点性の糸状菌病。初めは水浸状の斑点であるが、徐々に拡大し、淡褐色、紡錘形、長さ0.5-1cmの大型病斑となる。これが後に融合して、葉全体を枯らす。秋に幼植物に発生すると被害が大きい。病原菌はいわゆるヘルミントスポリウム菌で、宿主範囲は広い。


紅色雪腐病 (koushoku-yukigusare-byo) Pink snow mold
病原菌:Monographella nivalis (Schaffnit) Muller、子のう菌
 積雪下で株枯れを引き起こし、関東以北に分布する糸状菌病。積雪下の茎葉が軟化・枯死し、ピンク色に見える。菌核は形成しない。非積雪地域の芝地でも、発生が報告されている。病原菌はマイコトキシンとして、ニバレノールおよびデオキシニバレノールを産生するとされてきたが、最近の研究で日本産の菌は産生しないことが分かっている。


うどんこ病 (udonko-byo) Powdery mildew
病原菌:Blumeria graminis (de Candolle) Speer f.sp. secalis Marchal、子のう菌
 地上部全体に白いかびを生じる。初め白色の菌叢を植物体上に生じ、これが直形5mm程度の楕円形病斑となり、うどんこを撒いたような様相となる。菌叢は後に灰色または淡褐色となり、植物体全体が黄化していく。病原菌は他の多くのイネ科植物のものと同種だが、寄生性が分化し、ライ麦にのみ寄生する。


雪腐褐色小粒菌核病 (yukigusare-kasshoku-shouryuu-kinkakubyo) Typhula snow blight
病原菌:Typhula incarnata Lasch:Fries、担子菌
 株枯れを引き起こし、主に北海道で発生する重要病害。病徴は黒色小粒菌核病と類似するが、枯死部表面に形成される菌核が粟粒大、赤褐色である点が異なる。菌核は枯死植物の茎、葉、根などに形成される。病原菌は黒色小粒菌核病菌と近縁だが、より腐生性が強く、黒色小粒が発病した後に侵入し、混発するとされる。

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