【表題】 北海道畑作・酪農地帯における物質循環と水質保全

【著者名】 大村邦男
【所属】 北海道立中央農業試験場
【発行年】 1995
【雑誌名】 北海道立農業試験場報告
【巻】 86
【頁】 1−63
【要約】 酪農地帯における排泄物処理が周辺水域の水質環境に及ぼす影響を検討した。@ 畑作・酪農地帯(モデル地域202ha)における窒素の収入は、耕地系で33,577kgで、その内訳は、降雨7%、肥料負荷85%(化学肥料37%、ふん尿48%)、マメ科牧草による窒素固定8%である。支出割合は、生産物65%(内残渣12%)、流出量10%、揮散量4%で、残りの一部は土壌に保持されているものと考えられる。一方、家畜系(200頭)の収入は24,754kgで、その内訳は購入飼料32%、自給飼料及び放牧による採食が68%であった。また、支出割合は牛乳21%、ふん36%、尿35%、流出量2%と推定された。A 同様に、リンの収入は耕地系で12,159kgで、化学肥料76%、ふん尿24%とほぼ100%が肥料負荷である。支出の割合は、生産物24%(内残渣4%)、流出量2%で収入の約75%が土壌に固定されるものとみられた。一方、家畜系の収入は3,830kgで、購入飼料が40%を占めており、支出割合は牛乳22%、ふん80%、尿1%未満で、ふんの割合が高い。B モデル地域全体(202.2 ha)から年間に流出する窒素負荷量は、3,837kgで、その内訳は土地系88%(草地27%、畑地56%、林地等5%)、家畜系11%で、浸透流出の割合が高かった。窒素の河川への流達負荷量は発生負荷量の46%に相当する1,743kgで、作物・土壌を介した農地における浄化機能の大きいことが示唆された。C リンの河川への流達負荷量は窒素に比べると少なく、土地系93%(草地30%、畑地60%)、家畜系3%、生活系3%で、表面流去水による流出が主体であった。D裸地条件で牛ふんを大量に施用した場合、10kgm-2では流出水濃度の上昇は小さかったが、50 kgm-2では裸地条件で高濃度の窒素の流出が認められた。一方、草地に大量にふんを施用した場合、ふん中の窒素が牧草の発芽、生育量及び流出水濃度に及ぼす悪影響は認められなかった。これらの結果から、水質保全を考慮した許容限界は裸地で10t/10aまでと考えられる。E 牛の尿を施用した場合、牧草の飼料としての品質を考えた場合の限界量(適正品質維持容量)はN20kg/10a相当、牧草が性状に維持される限界量(生育維持容量)はN50kg/10a相当である。草地でも尿を大量に施用した場合には高濃度の窒素流出が認められることから、周辺の水質を保全するための施用限界量(環境容量)はN50kg/10a相当までと考えられる。なお、裸地条件では尿施用に伴う窒素の流出が著しく、植生の保持されていない条件の畑地では尿の施用は避けられるべきである。
【要約者】 竹中洋一

[ 2013/12/26 掲載 ]


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