【表題】 家畜糞尿を多量施用した土壌での窒素の動態

【著者名】 新美 洋
【所属】 九州農業試験場
【発行年】 1995
【雑誌名】 圃場と土壌
【巻】 316+317
【頁】 21−28
【要約】 今回、家畜糞尿施用試験圃場で実施している土壌溶液による硝酸態窒素移動モニタリングの方法(土壌溶液直接採取法)をその結果を交えて紹介する。[2.]全畜種のふん尿に含まれる窒素を全農地に施用した場合の県別平均負荷量は宮崎県が1位(全国平均の4倍を超える)、鹿児島県が2位で、3位以下を大きく引き離している。ふん尿多量施用試験を行っている都築盆地はこの2県にまたがり、2県の中で特に畜産が盛んな所である。都築盆地では肉牛、乳牛、豚、採卵鶏、ブロイラー、馬と主要な畜種がすべて飼養されており、地域全体に偏ることなくランダムに分布している。その中で乳牛の液状きゅう肥(スラリー)を供試した。外への持ち出しが困難であり、自給飼料生産に活用されることが多い反面、圃場へ多量に施用される場合も多いという点から選定した。飼料作物を生産するための液状きゅう肥標準施用量として60t/ha、その2.5倍量の150t/ha、5倍量の300t/haを、夏作作付前の4月と冬作作付前の9月の年2回各量を施用し、3試験区とした。[3.]本試験の多孔セラミックを用いた土壌溶液直接採取法はライシメータやカラム、土壌の直接採取法(土壌溶液間接採取)の問題点をカバーしている。土壌溶液採取装置の直径は20mm程度で、同径の穴を空けて挿入するため、土壌特に深層土壌をほとんど乱すことなく採取装置を設置することができる。そのためあらゆる圃場試験に組み入れることができる。また1度設置すれば、長期間何のメンテナンスも必要とせずに使用できる。我々のモニタリングは既に7年を経過したが、全く採取に支障がない。採取方法も簡単で、その上制作費は1本3千円程度に抑えることができるため、測定点数を相当増やすことができる。[4.]硝酸態窒素が浅層(クロボク)を移動する過程の結果から、耕深である20cmを起点とすると、この土壌では硝酸態窒素の移動速度は水深で表した浸透水量と一致することが分かった。この移動速度はその間の作物の生育を考えると著しく速いものである。いずれの区も播種後40日の6月6日時点で硝酸態窒素は深さ60cmを中心とした位置まで降りていた。吸着力の強いトウモロコシでもこれを吸収するのは困難であろう。地下水硝酸態窒素汚染の対策として最も有効な方法は、作物生産に利用することである。裏返せば作物に利用されなかった分が汚染の原因となっていると言える。浅層の土壌溶液採取はそうした観点から環境への影響を把握する上で効果的である。
【要約者】 竹中洋一

[ 2014/12/02 掲載 ]


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