【表題】 メタン発酵法とエネルギー利用

【著者名】 田中康男
【所属】 (独)農研機構 畜産草地研究所 畜産環境研究領域
【発行年】 2011
【雑誌名】 畜産技術発達史
【巻】
【頁】 343−346
【要約】 1)畜産分野におけるメタン発酵技術の歴史:@ 第一次ブームは、昭和30年代で、農家の生活改良普及事業の一環として、バイオガスを炊事などの自家用燃料として利用した。構造・操作が簡易で安価であったことから、180件近くの実施設が設置された。その後は、燃料事情も改善されてバイオガスの魅力が薄れ、また冬期のガス発生低下の問題もあり、施設は減少していった。A 第2次ブームは昭和48年と昭和54年の石油ショックの時期で、エネルギー問題の観点からメタン発酵が再度注目され、合計34件が全国で稼働していた。しかし、エネルギー問題の緩和、および消化液の利用面の問題からメタン発酵への関心は薄れていった。B その後、21世紀を迎える頃になると、第3次のブームとして、資源循環の観点から再びメタン発酵が見直されるようになった。この時期には、従来型のメタン発酵装置に加えて、欧州諸国からの技術導入が目立つようになった。C 第3次ブームの際には、糞尿混合スラリーの液肥化目的ではなく、省力的な畜舎汚水浄化処理の目的で、UASB方式のメタン発酵リアクターを利用する検討も始められた。このUASB方式はメタン細菌を高密度に含む直径数ミリメーターの顆粒(グラニュール)を利用することで、従来のメタン発酵に比較して格段に滞留時間が短縮される長所がある。このUASBリアクターの後段で、好気性処理を行うことで放流可能な水質まで浄化可能であり、電力費は通常の活性汚泥法の2/3〜1/2と見積もられた。D また、栗田工業鰍フ三崎岳朗氏を中心として、消化液の発生しない乾式メタン発酵法を家畜排せつ物に適用する検討が実証規模プラントで行われた。この技術は、通常のメタン発酵の場合と異なり、水分60〜80%程度の流動しにくい原料をピストン式のポンプで発酵槽に投入する。E 岩手金葛巻町に設置されたメタン発酵パイロットプラントでは、バイオガスの脱硫手法、バイオガス濃縮精製技術、小規模固体高分子燃料電池によるバイオガス発電の確立を主な目標とした。燃料電池の利用については、メタンガス濃度60%まで低下させても発電に支障は無く、実用化への目処がつけられたとしている。F 2001年には「家畜排せつ物を中心としたメタン発酵処理施設に関する手引き」が(財)畜産環境整備機構から公表され、メタン発酵は消化液の液肥利用ができないとメリットが生かせないという点と、バイオガスで発電した電力の買い上げ単価が高く設定されるなどの制度的な支援が普及に重要であることなども指摘された。2)畜産分野におけるメタン発酵技術の将来:バイオガスシステムを支える社会システムを構築しなければ普及は望めない。
【要約者】 竹中洋一

[ 2016/1/4 掲載 ]


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