【表題】 家畜ふん尿からのリン資源の回収

【著者名】 鈴木一好
【所属】 (独)農研機構 畜産草地研究所 畜産環境研究領域
【発行年】 2014
【雑誌名】 環境技術(環境技術学会)
【巻】 43−2
【頁】 72−78
【要約】 家畜ふん尿中には年間で約11万tのリンが排出されるが、その大部分は純品として回収されることなく堆肥中に含有される形で農地などにて再利用されている。一方、鶏ふん焼却灰や畜舎汚水はそのままでは再利用が困難で堆肥の流通システムにも入りにくいことから、これらに含まれるリンのリサイクルを目指した回収技術の研究開発が行われている。本稿ではこれら家畜ふん尿中のリンのリサイクルの現状について概説する。4.鶏ふん焼却灰中のリン:鶏ふん焼却灰はおよそ8%程度のリンを含んでいるが、これは下水汚泥焼却灰中のリン濃度に匹敵するレベルである。この焼却灰からリンを回収する手段として、水を加えてスラリー状にした焼却灰に塩酸を添加してpHを1.5程度にすることで焼却灰中のリンを酸抽出したのち、この酸抽出液に苛性ソーダを添加してpHを4程度に調整することでリン酸水素カルシウム二水和物(DCPD)を、さらにpHを10程度にすることでハイドロキシアパタイト(HAP)を沈殿分離させる技術が開発されている。5.畜舎汚水中のリン 5.1 ジルコニウムフェライト樹脂吸着法:リン酸が飽和になった資材は約7%の苛性ソーダ溶液内でリン酸を脱離させ、この溶液を再結晶法で精製するとリン酸ナトリウムの結晶が回収できる。この結晶は肥料としての利用は困難であるが、工業原料としての利用が期待される。5.2 非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)吸着法:CSHはヒドロキシアパタイトとしてリンを吸着する能力に優れた資材で、高アルカリ性を示す。畜舎汚水用に改良されたものは、リンの除去回収のみならず、排水の脱色および消毒の効果を同時に発揮する。回収CSHはく溶性リン酸を約20%含み、有害物質はほぼ含まれない。現在、実規模プラントによる農家実証試験が進行中であるが、早期の実用化が期待される。5.3 MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)法 @ 豚舎汚水の成分特性を利用しMAP反応を人工的に誘導することで、豚舎汚水中のリンを除去回収できる。MAP反応はpHが8〜9付近で最大となることが知られているが、豚舎汚水でもpH8以上でMAP反応を誘導できる。A この技術を普及させるためにはさらなる簡易化・低コスト化が必要である。そこで、MAPリアクターを新設するのではなく、既設の最初沈殿槽などにばっ気装置などを付加するなどの簡易法を考案し、有効であった。B MAPは天日乾燥後に肥料会社などにおける加工を経ることなく、ただちに肥料として利用できる。また、市販のリン酸肥料よりもゆっくりと溶出することなどから、タマネギ栽培にMAPの方が優れており、それ以外の作物でも遜色ない肥効を示す。
【要約者】 竹中洋一

[ 2016/1/4 掲載 ]


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