【表題】 熟成堆肥による脱臭と肥料価値の向上

【著者名】 田中章浩
【所属】 (独)農研機構 九州沖縄農業研究センター 畜産草地研究領域
【発行年】 2011
【雑誌名】 (続)マニュアマネージメント
【巻】 デーリィマン臨時増刊号
【頁】 164−168
【要約】 既存の化学脱臭の場合、設備費は比較的安価でも薬剤代や廃液処理などのランニングコストが高くなり、一方、生物脱臭の場合、ランニングコストが安価でも設備費が高額になる。そこで、設備費やランニングコストが比較的安価で管理作業も容易、しかも脱臭費用の一部回収も期待できるローダ切り返し方式を対象とした堆肥脱臭システムを開発した。【堆肥脱臭の概要】@ 熟成堆肥には臭気を吸着する能力があり、堆肥に臭気を通過させるだけで、低コストに脱臭を行うことができる。最初の2週間でアンモニア発生全体の9割が出ることから、1、2週目発酵槽からの臭気を処理することで、低コストで効果的に臭気を低減できる。A 堆肥に吸着したアンモニアは、堆肥中の微生物によって硝化され無臭化される。この硝酸態窒素は酸性であり、堆肥化過程発生量臭気の主要成分であるアンモニアと反応し、硝酸アンモニウムの形態で窒素成分が堆肥に回収される。従って、脱臭に用いた堆肥は窒素濃度が増加し肥料的価値が高まり、減化学肥料栽培や有機農業用の速効性有機質肥料となる。【脱臭の方法】悪臭吸収槽には、堆肥化原材料と同堆積(堆積高1.8m程度)で含水率50〜60%程度の2次発酵が終了した熟成堆肥を入れ、臭気を床面から導入する。【脱臭能力】堆肥脱臭によるアンモニアの除去率は97%で、堆肥脱臭処理後の濃度は20ppm程度になる。硫黄酸化物に対しても高い除去効率を得る。アンモニアの次に排出量の多いメチルメルカプタンも、95%程度除去可能である。また、低級脂肪酸に関してはプロピオン酸を除き50〜60%程度を除去することができる。古紙(5%程度)や鶏ふんを添加すると窒素の回収効率が向上する。【製造コスト】牛ふん処理量21t/日の堆肥センターにおける堆肥脱臭システムのイニシャルコストは約982万円。電力費は126万円/年程度。【運転上の留意点】堆肥に吸着させたアンモニアは、好気性の硝酸化成菌で無臭の硝酸に変えるか、好気性のアンモニア資化菌により菌体タンパクに変化させる必要がある。そのための菌体添加として、最初の立ち上げ時に活性汚泥などを2、3%添加する。2回目からは、吸着済みの堆肥を約10%程度混合したものを使用する。吸着に用いる堆肥は窒素成分が増加するので3〜4ヵ月毎に交換する。【窒素付加堆肥の窒素肥効】窒素肥効率70%、化学肥料と同程度の速効性有機肥料である。【ニンジンの有機栽培農家実証試験】商品化率は無施肥区および慣行区の約80%に比較して、窒素付加堆肥区および窒素付加堆肥に鶏ふん堆肥をブレンドした区では約90%と高くなったことから、窒素負荷堆肥を用いると慣行区に比較して収益が多くなった。
【要約者】 竹中洋一

[ 2016/1/4 掲載 ]


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