【表題】 近隣の好感度と衛生的安全性の向上した畜舎排水を目指して

【著者名】 田中康男
【所属】 (独)農研機構 畜産草地研究所 畜産環境研究領域
【発行年】 2013
【雑誌名】 養豚の友
【巻】 2013−5
【頁】 20−23
【要約】 畜舎排水の着色を改善しなくてはならない場合、通常の汚水浄化法では対応できないので、何らかの新たな装置の導入が必要になる。このような場合に、非ケイ酸カルシウム水和物(CSH)資材の添加を行うと、色が薄くなるだけではなく、消毒とリン酸除去が同時に可能になり、また回収したCSHはリン酸肥料と同様の成分であることが確認された。【技術の概要および特徴】@ CSHを排水に添加するとリン酸が除去され、回収したCSHはリン酸肥料として利用できることは下水道分野では以前より知られていた。我々が畜舎排水処理で検討したところ、リン酸に加えて、着色と大腸菌群の低減もできることが確認された。A この発見を土台に、リン酸、着色、大腸菌群を効率よく低減させる装置を考案した。この装置では、まず既設の浄化処理施設で処理された排水にCSHを添加し、反応槽の下部から流入させる。反応槽ではCSHが沈殿し、上澄みが流出する。この上澄みはアルカリ性のため、そのままでは放流できないので中和する。ボンベを置いて炭酸ガスを吹き込むのが最も簡便である。引き抜いた沈殿物は、専用の布袋に入れると水分が抜けて、リン酸の吸着したCSHが回収できる。【管理法・事例】@ 養豚農家に反応槽を置き、農家の浄化施設処理水を原液として、約2年間の試験を行った。この結果、着色の程度を示す色度は、水量1t当たり1.5kgの添加量で40〜80%低減できた。大腸菌群、リン酸は、どちらも水量1t当たり1kg程度添加すれば、ほぼ完全な除去ができた。A 色度が30%程度除去されると大腸菌群はほぼ完全に除去される。色の変化を見ていれば消毒がどの程度確実に行われているかを判断できることになる。回収したCSHは、肥料として効果のある形のリン酸を約20%程度含み、作物に対して無害であることも確認された。市販のリン酸肥料とほぼ同様な使い方ができると考えられる。【今後の課題および展望】@ 消毒効果については、CSH添加で一時的にpHが10〜11程度のアルカリ性になることで発揮されるものと思われる。このようなアルカリ条件では、大腸菌群以外の有害微生物も消毒される可能性がある。A 回収物を粘度のような状態にした後に、堆肥に混ぜ込んで造粒堆肥を製造する手法を現在検討している。適度な粒径で造粒され、化学肥料肥料散布機でも施肥できるようになった堆肥は、耕種農家の需要が高く、通常の堆肥よりも高値で販売できるようになると考えられる。また、回収CSHを混合すると、もし大腸菌が残存していた場合でも消毒される可能性がある。
【要約者】 竹中洋一

[ 2016/1/4 掲載 ]


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