【表題】 乳牛の放牧と糞尿

【著者名】 三枝俊哉
【所属】 (地独)北海道総合研究機構農業研究本部 根釧農業試験場 研究部飼料環境グループ
【発行年】 2011
【雑誌名】 (続)マニュアマネージメント
【巻】 デーリィマン臨時増刊号
【頁】 174−178
【要約】 【放牧草地におけるふん尿・養分の流出防止対策】[牧区ごとの放牧密度]放牧計画を立てる場合、最初に検討すべきは、放牧頭数と放牧草地面積の兼ね合いである。調査の結果、延べ放牧時間が8千頭・時/haを超えると、土壌溶液中の硝酸態窒素濃度が上昇を始め、環境負荷の発生リスクが高まった。この調査を行った北海道天北地方では、搾乳時間を除く1日19時間の昼夜放牧を年間170日間程度見込めるので、8千頭・時/haは年間2.5頭/haに相当する。道東のチモシーを基幹とする集約放牧草地では、1日15時間の昼夜放牧で、5月下旬〜7月下旬まで4頭/ha、以後、兼用草地で面積を拡大し、10月下旬まで2頭/ha、合計150日程度の放牧飼養が推奨されている。この場合、延べ放牧時間は6,300頭・時/haとなるので、環境負荷の発生リスクは全体では低いと判断できるが、条件の異なる牧区で無理のない延べ放牧時間を順守することが重要である。[放牧草地の養分偏在に伴う環境負荷]養分とそれらに含まれる窒素の還元量は、牧区全体では年間57kg/haの窒素が草地に還元される試算となった。これは毎年約40t/haの堆肥を連用した場合の窒素供給量に相当するので、直ちに過剰な量とはいえない。しかし、実際に地上に落下したふん尿が被覆する面積の割合は牧区の面積に対してふん3%、尿14%、合計でわずか16%である。このため、ふん尿が落下した地点にしてみれば、ふんで年間881kg/ha、尿で243kg/ha、ふん尿全体で351kg/haと大量の窒素施肥が行われたことになる。このようなふん尿の被覆面積は、放牧密度が高いほど増大する。延べ放牧時間を環境負荷の発生する8千頭・時/haに増やすと、1日15時間150日間の放牧では年間3.56頭/haで放牧することになり、ふん尿の被覆面積は21%と試算される。さらに環境負荷発生リスクの高い1万3千頭・時/haでは34%に増大する。こうして放牧密度を高めると、養分損失を起こし易いふん尿排泄地点の占める面積割合が増えて、環境負荷の発生リスクが高まる。[水飲み場周辺の環境負荷発生防止対策]【放牧草地におけるふん尿の有効利用〜養分循環に基づく施肥管理】北海道の放牧草地48事例の調査によると、放牧草地の生産を支えている窒素の内、施肥が支えている割合は1/3以下であり、草地の中で循環している窒素が多く担っていると算出された。ふん尿の偏在はふん尿に含まれる肥料養分の利用効率を低下させる。できるだけ、採食場所とふん尿排泄場所が固定されにくい牧区の形状や施設の配置が望まれる。
【要約者】 竹中洋一

[ 2016/1/4 掲載 ]


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