【表題】 宮古島における窒素負荷発生量と地下水窒素濃度の長期的推移

【著者名】 田代豊;高平兼司
【所属】 財団法人沖縄県公衆衛生協会
【発行年】 2001
【雑誌名】 水環境学会誌
【巻】 24−11
【頁】 733−738
【要約】 沖縄県宮古島は、地下水窒素汚染が顕在化している典型的な島で、かつ水文条件が比較的均一で地下水涵養過程をモデル化して捉えやすい調査地である。同島では、地元関係諸機関が協力して宮古島地下水水質保全対策協議会(MGCC)を組織し、地下水質並びに地上の環境要因について、1989年以降継続的に調査している。本報告は、隆起サンゴ礁島嶼での人為活動による窒素負荷が地下水帯水層へ浸透する過程を実証的に解明することを目的とし、同協議会の調査報告等これまでに公表されてきた資料を解析し、窒素負荷発生量と地下水窒素濃度の長期的な推移について研究したものである。宮古島の大部分の地質構造は、透水性の低い島尻層群泥岩の基盤の上を透水性の高い琉球石灰岩層が被っている。隣接する小島を合わせた宮古本島部の土地利用は、耕地面積56.8%、森林面積14.4%であり、作物作付け面積の76%はサトウキビで、以下飼料作物7%、葉煙草7%、野菜3%である。13観測地点の硝酸性窒素の1977年から99年の間の年度平均濃度を平均すると、1977年が最低約4mg/Lで、87年のピーク8mg/Lに向かって直線的に増加し、その後99年6mg/Lまで緩やかな減少を示している。地下水窒素濃度を自然起源と人為起源の和と考え、人為起源窒素濃度が低かったとみられる1966年の琉球政府企業局の21地点測定値から、地表からの影響を強く受けていると見られる値を除いた最低値は0.50mg/Lでこれを自然起源窒素濃度と仮定した。全硝酸性窒素から、この値を差し引いてた値を人為窒素濃度とした。一方島内の人為起源窒素負荷発生量を、島内の化学肥料販売実績、家畜排せつ物、生活排水を合計した窒素負荷量は、1976年から1998年の間で1980年にピークを示し、その後漸減する。化学肥料はこれと平行した傾向を示しているが、家畜排せつ物と生活排水はほぼ横ばいで、全体の傾向には貢献していない。窒素負荷発生総量と地下水窒素濃度との関係について、年次をずらして相関を求めると、7年ずらしたときに相関係数が最大値r2=0.582を示し、地表負荷の影響が7年後に地下水に現れることを示した。硝酸性窒素の降下浸透速度、水の降下速度との関係、窒素負荷率と地下水窒素濃度予測について、詳細な考察を行っており、読者のメカニズム理解に有益である。地表で発生した窒素負荷が地下水に負荷負荷を与える平均負荷率(地下水に移行する割合)を39%と推定している。まとめとして、@宮古島の地表で発生した窒素負荷の推移は、その7年後の地下水窒素濃度と最も高く相関している、A窒素分の平均的な降下浸透速度はおよそ3m/年と推定され、他の知見と整合する、B地表で発生する人為起源窒素の地下水位への平均負荷量は39%と推定される、C最近の窒素負荷量の発生量の推移から、少なくとも2000年代前半の地下水の窒素濃度はおおむね横ばいと予測されるとしている。
【要約者】 渡邉昭三

[ 2005/03/15 掲載 ]


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