【表題】 あらためて水系感染症を考える:原虫類によるわが国水環境の汚染状況

【著者名】 保坂三継
【所属】 東京都立衛生研究所環境保健部
【発行年】 2003
【雑誌名】 水環境学会誌
【巻】 26−1
【頁】 2−7
【要約】 我が国の河川、水道水源のクリプトスポリジウムとジアルジア汚染の最新の実態報告である。水系感染する原虫類には多くの種類が知られている。その中で微生物的に安全な水道水を確保する上で、今日最も警戒を要するものは、クリプトスポリジウムとジアルジアである。これらの水環境中の存在形態であるオーシストあるいはシストは水道の塩素消毒に耐性であり、とりわけクリプトスポリジウムのオーシストは、浄水処理レベルの塩素消毒では十分な不活化が期待できない。水道水の原虫問題が顕在化した当初わが国には汚染実態に関する広範囲な調査事例は皆無であった。最近になり主要河川の調査結果が公表されるようになった。しかし検査試料の体積が不統一なので、著者は厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課長通達(平成10年6月19日付け衛水第49号)「水道に関するクリプトスポリジウムのオーシストの検出のための暫定的な試験方法」に従い、20L中の個数に換算して整理報告している。水源における原虫類の調査事例では、@全国水源地点等における調査が厚生省により全国94水系について、水道原水採取地点を中心に282地点の調査が1997年3〜7月に行われた。その結果、クリプトスポリジウムは6水系8地点から、ジアルジアは16水系24地点から検出された。検出された濃度レベルはクリプトスポリジウム2〜8個・20L−1、ジアルジアは2〜46個・20L−1であった。この濃度レベルは、米英カナダ等の河川等の報告に比べて、クリプトスポリジウムでは小さく、ジアルジアでは大差無かった。しかしこの調査では、検査試料の体積が5Lと少なく検出感度に制約があった。A関東地方主要河川における調査が諏訪・鈴木により1996年6月から1998年3月まで、B相模川水系における調査が橋本らにより、1997年4〜12月間11地点で、C多摩川における調査が保坂らにより1999年9月から2000年1月、2000年11月、2001年1月の間、D猪又らによる多摩川水系上流域における調査、E北千葉広域水道事業団と東京都水道局による利根川・江戸川水系における調査(2000年11月〜2001年2月)、F地もと水道関係部局による淀川水系における調査(2000年7月、2001年1月)、Gその他北上川水系、兵庫県河内川、大分県河内川他各地で調査され、それぞれ両原虫が検出されている。汚染の原因は、人為的汚染のない上流水域でも野生動物による排出が示唆されているが、ヒトの下水や畜産排水並びにその処理水の放流の影響は大きく野生動物の比ではない。処理場へのに流入下水、処理放流水の原虫の存在については、現在報告がが少なく今後の解明に待たれる。水道水原因の原虫類感染症防止のためには、水道水源とその汚染源に対して、より低レベルの検出が可能な方法での不断の監視と汚染防止対策の強化が必要である。
【要約者】 渡邉昭三

[ 2004/01/21 掲載 ]


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