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雑草からのイネ苗立枯細菌病菌の分離と保菌コウヤワラビの分布


[要約]
水田畦畔、農道および排水路周辺に生息する雑草からイネ苗立枯細菌病の 病原細菌を分離したところ、コウヤワラビなど4種からPseudomonas plantariiが 分離された。コウヤワラビでは明らかな病徴を示し、また病原細菌を保菌した コウヤワラビの山形県内での分布は、本病の多発性地帯である最上町で確認された。
山形県立農業試験場・病理昆虫部
[連絡先] 0236-44-5571
[部会名] 生産環境(病害虫)
[専門]  作物病害
[対象]  稲類
[分類]  研究

[背景・ねらい]
イネ苗立枯細菌病の伝染環をあきらかにするため、水田ほ場周辺に生息する雑草の 中に本病の伝染源となりうるものが存在しないか検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. 1991年7月に、最上郡最上町の苗立枯細菌病既発生農家水田周辺に生息している 16科28属の雑草から細菌を分離したところ、コウヤワラビ、ヘビイチゴ、 キツネノボタンおよびゲンノショウコからP.plantariiが分離された (表1)。 また1992年に、山形県内各地の水田周辺からコウヤワラビの褐変葉239試料を採集して 細菌を分離したところ、最上町で採集した77試料からP.plantariiが分離された (表2)。 従って本病の多発生地帯である最上町においては、P.plantariiを保菌した コウヤワラビが広く分布していることが明かになった。
  2. 分離細菌を戻し接種した結果、コウヤワラビのみが発病した。症状は、有傷接種により 接種部が、無傷接種により葉緑部が紫褐色〜淡黒褐色を呈した。

[成果の活用面・留意点]
イネ以外にもP.plantarii保菌植物の存在が明かになったことは、今後の伝染環を 解明する研究に広く活用できる。なお。コウヤワラビ葉の褐変がすべてP.plantarii によるものではないので、分離にあたっては注意が必要である。

[その他]
研究課題名:育苗期に発生する種子伝染性イネ細菌病の制御技術の開発
予算区分 :地域重要
研究期間 :平成2年〜平成4年
発表論文等:(1)udomonas plantarii田周辺雑草からの分離、日植病報58:596-597(1992)
      (2)山形県におけるudomonas plantariiコウヤワラビの分布と同植物での病原菌の生存、
        平成5年度日本植物病理学会大会、講演要旨集:93(1993)