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ケグワを交配親とする5倍性桑系統の飼料効率
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[要約]
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5倍性系統Aは飼料価値はやや劣るものの、飼料効率は改良鼠返と大差なく、系統Bでは
いずれも劣るものと判断された。飼料効率からみた5倍性桑給与に対する適合性について、
普通蚕品種と広食性蚕品種を比較したが、その差は判然としなかった。
東北農業試験場畑地利用部養蚕研究室
[連絡先] 0245-93-5151
[部会名] 蚕糸
[専門] 育種
[対象] 工芸作物類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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密植桑園、機械収穫の普及など桑栽培技術の変革により、桑に求められる特性も
多様化しており、伐採後の再生長が優れる品種の育成も重要な育種目標のひとつと
なっている。一方、ケグワ、クロミグワなどのゲノムを導入した高次倍数性系統は
枝条伸長が旺盛であることが知られており、これらを実用品種として利用できれば、
桑園の生産性向上が期待される。そこで、高次倍数性桑品種育成の可能性を探るために、
「剣持」4倍体xケグワの交配によって得られた5倍性系統A及びBの飼料効率について、
最近育成された広食性蚕「しんあさぎり」及び従来の蚕品種「綿秋x鐘和」(普通蚕)を
用いて比較検討した。
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[成果の内容・特徴]
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5倍性系統を給与した場合、対照とした改良鼠変と比べ、いずれの蚕品種でも5齢経過時間
が延長した。最大成長倍率は系統Aでは対照と大差なく、系統Bは低かった。
(表1)
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繭重及び繭層重は5倍性系統で軽く、特に系統Bではかなり劣った。繭層歩合は系統が
普通蚕よりやや高く、広食性蚕ではやや低かった。
(表1)
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桑葉乾物率は対照と系統の間に差は認められなかった。食下量は系統で少なく、系統Bは
その傾向が著しかった。系統の消化率は普通蚕で低く、広食性蚕では高かった。
(表2)
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5齢期飼料効率は概ね系統が高い傾向にあったが、広食性蚕の系統Bはやや劣った。
繭層生産効率は普通蚕ではほぼ同等であったが、広食性蚕では系統が劣った。
(表1、表2)
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総体的には系統Aは繭の計量形質は対照より劣ったが、5齢飼料効率では勝り、
繭層生産効率は大差なかった。系統Bは飼料価値、効率ともに劣るものと判断された。
飼料効率からみた5倍性桑給与に対する適合性の蚕品種間差については判然と
しなかった。
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[成果の活用面・留意点]
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高次倍数性桑品種育成のための基礎資料とする。
[その他]
研究課題名:桑の倍数性育種とその利用
予算区分 :経常
研究期間 :平成4年度(昭和58〜平成5年)
研究担当者:小山朗夫、遊佐富士雄
発表論文等:日本蚕糸学雑誌に投稿予定