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農業労働力確保のための農協の対応方法


[要約]
労働力が逼迫しているリンゴ産地では農協が中心となり、 野菜などの農繁期の異なる産地の農協との間での地域的な労働力交換や、 無料職業紹介所の開設による労働力の掘り起こしに取り組むことによって、 労働力不足を効果的に緩和することができる。
青森県農業研究推進センター・経営研究室
[連絡先] 0177-73-4502
[部会名] 経営
[専門]  経営
[対象]  果樹類
[分類]  指導

[背景・ねらい]
リンゴ作農家では、これまで雇用してきた熟練した労働力の高齢化が進展しており、 作業員確保が極めて難しくなってきている。されにリンゴ産地では選果場にも 相当数の人員を確保する必要があるため、農協などが中心となった 労働力確保の取組への期待が大きくなっている。

[成果の内容・特徴]
県内外の先進事例を踏まえて、リンゴ産地に有効な労働力不足への取組方法を 抽出した。
  1. 異種作物産地との間での労働力交換
    選果場などでは、労働力不足により未熟練労働の構成比率が高まっているが、 作業能率の低下を避けるためには熟練労働力の確保が求められる。
    S農協とK農協で実施されているように、情報交換を通じ信頼を高めながら 相互の支援体制を強化し、農繁期の異なる作物を基幹とする農協間で、 両地域内の熟練した農家労働力を交互に活用することで、 双方とも熟練した作業能率の高い労働力を確保できる。( 図1表1)
  2. 農協による無料職業紹介所の開設
    山形県のサクランボ地帯で開設されている無料職業紹介所は、 求職者と求人者との間の仲介・斡旋を実施して成果をあげている この方法によれば、 (1)被雇用者からの信頼が得られやすいこと、(2)求人・求職情報の収集・伝達が 地域として一元化されること、(3)掘り起こし対象の拡大や就労条件改善がされ易い こと等から、雇用促進効果が大きい。そして、 リンゴ産地の農協選果場のように、これまでに臨時雇用してきた人のデータが 蓄積されている場合は、そのデータの活用も可能であるため、 リンゴ産地においても有効な労働力確保手法と判断できる。( 図2、 表2)
  3. これらの労働力確保のための取組を農協が積み重ねることによって、 労働力不足を解消するとともに、 農協を中止として産地の体制を強化することができる。

[成果の活用面・留意点]
農家・農協段階にあっては、農作業に慣れていない人が働きやすくなるよう 労働条件や作業環境の改善に努めることが大切である。

[その他]
研究課題名:「北東北園芸産地における農業労働力の確保・利用調整システムの確立」
予算区分 :国庫
研究期間 :平成6年度(平成4〜6年度)
発表論文等:東北地域の園芸産地における農業労働力確保の現状と課題
            東北農業経営・農村計画研究資料  NO.15  1994