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水田におけるアカトンボの羽化と水稲栽培法


[要約]

 常時湛水区は、中干し区よりアカトンボの羽化個体数が著しく多い。羽化個体数には、化学肥料施用の有無による差はみられない。また、有機栽培区並びに減農薬栽培区では、慣行栽培区より羽化個体数が多い。

[キーワード]

アカトンボ、常時湛水、中干し、無化学肥料、減農薬、有機栽培

[担当]福島農試・冷害試験地
[連絡先]0242-62-3606
[区分]東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]技術・参考


[背景・ねらい]

 現在、化学肥料や農薬の投入量を減らした、環境負荷軽減型の有機栽培や減農薬栽培が注目されており、生産物のみならず環境への影響を評価する試みがなされている。しかしながら、水稲の栽培法の違いが水棲生物に与える影響を調査した例は少ない。そこで、アカトンボに着目して水稲栽培法の違いが羽化に与える影響を調査する。

[成果の内容・特徴]

1.

常時湛水の慣行栽培区では、中干し区よりアカトンボの羽化個体数が著しく多い(図1表1)。

2.

慣行栽培区と無化学肥料栽培区の間では、アカトンボの羽化個体数に大きな差はみられない(図1)。

3.

有機栽培区および減農薬栽培区では、アカトンボの羽化個体数は慣行栽培区より多い(図1表2)。

4.

アカトンボの羽化期間は7月中旬の約20日間であり、その開始日およびピーク日は代かき日から起算した日平均気温の積算がそれぞれ約870℃、約1000℃となる日で一定である(表3)。

5.

収量は常時湛水の慣行栽培区で多く、有機栽培区で少ないが、区間差は小さい(表1)。

[成果の活用面・留意点]

1.

中干しを省略した減農薬栽培や有機栽培を行う場合、3万頭/ha以上のアカトンボの発生が見込まれ、特色ある米づくりのための一手段となり得る。

2.

アカトンボの羽化ピーク日経過後は、田面水を落水して田面の固化に努める。福島県猪苗代町における平年の羽化ピーク日は、一般的な代かき日5月20日から日平均気温を積算すると7月15日になる。

3.

調査を実施した福島県猪苗代町では、アカトンボは90%以上のアキアカネと10%未満のミヤマアカネで占められ、その羽化時期は代かき日起算の積算気温約1000℃でピークとなったが、アカトンボの種、羽化個体数および羽化観察日までの積算気温は地域により異なると推察される。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

栽培法の異なる水田における水棲動物の生態調査

予算区分:

県単

研究期間:

2000〜2001年度

研究担当者:

矢島豊、菅家文左衛門、佐藤紀男

発表論文等: なし

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