自動搾乳システムによる省力管理技術と生産性
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[要約] |
自動搾乳システム(搾乳ロボット)を用いることで、搾乳関連の労働時間の削減と作業の軽労化が図られた。また、乳成分及び乳質を維持しながら産乳量の増加が図られた。 |
[キーワード] |
乳用牛、農業機械、搾乳ロボット |
[担当]岩手県農業研究センター・畜産研究所・家畜飼養研究室
企画経営情報部・農業経営研究室
[連絡先]019-688-7316
[区分]東北農業試験研究・畜産(乳牛)
[分類]技術・普及
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[背景・ねらい] |
搾乳ロボット(以下ロボット)は、飼養管理に関わる労働時間の約半分を占める搾乳作業を大幅に削減し、現行の搾乳作業を軽労化することを目的に開発された技術である。
そこで、搾乳ロボット導入後の省力管理技術の確立と、生産性への影響を明らかにすることを目的に、1998年6月から2001年10月の期間、搾乳牛の誘導・馴致、自発的搾乳率、搾乳回数、搾乳に係る労働時間・内容、産乳量・乳成分について検討した。 |
[成果の内容・特徴] |
1.
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ロボット導入当初、ロボット未経験牛は3週間程度誘導・馴致することにより、80%が自発的にロボットを訪問し、搾乳行動を示す(時間経過に伴い未経験牛の誘導・馴致期間は短縮する)。また、牛舎からロボットまでの移動を一方通行に制限することで、自発的搾乳行動がさらに向上する(表1)。
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2.
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搾乳関連の1日当たりの労働時間は、パーラー搾乳と比較して約1/2(1時間15分程度)に削減され、その内容も著しく軽労化する(表2)。
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3.
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完全混合飼料(TMR)の不断給餌飼養形態で不等間隔多回搾乳(平均3回/日)を実施することにより、産乳量を約11%増加させることができる(図1、表3)。
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4.
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ロボットは電気伝導度による乳房炎検査機能を装備しているが、摘発率が低い(46%)ことから、乳量の減少、CMT変法による乳質検査等との併用が必要である。
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5.
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ロボットの分房毎ティートカップ離脱方式は比較的過搾乳を防止でき、乳房炎発生率は低いが(頭数割合19%、分房割合8%)、ライナースリップの有無に注意を要する。
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6.
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ロボット搾乳では、乳器形状(乳頭間隔や角度等)が原因で、搾乳不適合牛が発生(16%)するため、不適合牛へは従来搾乳施設の一部併用を検討する必要がある。
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7.
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ロボットの故障等への対応は、一部消耗品の交換を除き、任意のメンテナンス契約(1,200千円/年)をロボット販売店と締結し、迅速な復旧体制を整える必要がある。
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8.
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ロボットの導入条件は、経産牛72頭(搾乳牛60頭)、乳価80円、経産牛1頭当たり乳量7,830kgのパーラー方式から移行した際、搾乳ロボット・牛舎等の取得資金を全額借入れし、それが償還できる乳量水準は8,480kg(乳量増加率109%)である。
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[成果の活用面・留意点] |
1.
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この成績は、レリー社製1ボックスタイプ搾乳ロボットを用い24時間稼働により得た。また、試験対照のパーラー搾乳はヘリンボーン式5頭2列を用い定時2回搾乳を行った。
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2.
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供試牛は、ロボット(平均産次2.47産)とパーラー(平均産次2.53産)各20〜25頭である。
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3.
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ロボット搾乳では、1群管理とTMR自由採食が一般的な飼養管理方法になると予想されることから、泌乳初期牛の乳量増加によるエネルギー不足が起因する発情回帰の遅延、あるいは泌乳後期牛の過肥による周産期病の発生に注意が必要である。
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4.
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ロボット搾乳への移行については、現段階でフリーストールとパーラー搾乳を活用しており、パーラーの更新時期を迎えている酪農家を提案する。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名: |
完全自動(ロボット)搾乳機等を応用した超省力管理技術の確立
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予算区分: |
国庫等
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研究期間: |
1997〜2001年度
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研究担当者: |
山口直己、川村輝雄、清宮幸男、大和貢、菊池文也、谷藤隆志、高橋達典
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発表論文等: |
1)川村・清宮(2000)日本家畜管理学会誌 第36巻1号
2)山口・川村(2001)東北畜産学会報 第51巻2号(要旨)
3)岩手県農研セ畜産研究所(2000)搾乳ロボット〜開発から実用段階へ〜
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