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高品質豚肉質の品種間比較


[要約]

 交雑豚の産肉、肉質形質のうち脂肪蓄積、筋肉内脂肪、皮下脂肪融点、脂肪酸組成などは止め雄の影響を強く受ける。肉質分析結果と食味テストとの関連から、加熱損失率、軟らかさ、筋肉内脂肪含量が食味性の優れた肉質の条件といえる。

[キーワード]

食味テスト、客観的肉質分析、豚肉質、品種間比較、止め雄

[担当]宮城県畜産試験場・種豚家きん部・原種豚チーム
[連絡先]0229-72-3101
[区分]東北農業・畜産
[分類]科学・普及


[背景・ねらい]

 近年、海外から低価格の輸入豚肉が増加する中で、日本の国産豚肉にとっては高品質な豚肉の生産が求められている。そのため、肉豚を生産する基礎となる純粋種の組み合わせや給与する飼料内容に特徴を持たせた銘柄豚が各地で生産されている。豚の肉質について客観的に測定される肉質形質と食味テストなどの主観的な方法で測定された結果との関連についての試験の報告はきわめて少ない。本研究は、高品質で美味しい豚肉と評価され国内では高価格で小売販売されているバークシャー種と筋肉内脂肪含量の高いデユロック種およびそれらとランドレース種との交雑種(LDD、LDB)を用い、客観的な方法で測定した肉質形質と主観的な食味テストの結果から食味性の優れた肉質の条件を探ることを目的とした。

[成果の内容・特徴]

1.

バークシャー種(B)とデユロック種(D)の純粋種およびランドレース種とこれらの交雑豚(LDD、LDB)の去勢と雌豚合計37頭の胸最長筋を用い、体重が105kgまで単飼した。と殺24時間後、最後胸椎から3胸椎分前のロース肉について、肉色(PCS、L*、a*、b*)、ドリップロス、加熱損失率、化学成分(水分、脂肪)、マーブリングスコア、物理的特性(Tenderness、Pliability)、皮下脂肪及び筋肉内臓肪の脂肪酸組成と皮下脂肪及び腎周囲脂肪の融点を測定した。また、消費者モニター99名による食味テストを4回実施し、軟らかさ、香り、豚臭さ、肉色、多汁性、弾力性、総合的なおいしさについて品種間の比較を行った。

2.

交雑豚の枝肉形質のうち皮下脂肪厚は純粋種の影響を受け、BとLDBがDとLDDより厚く、ロース断面積はDとLDDがBとLDBより太かった(表1)。

3.

肉質形質のロース肉の脂肪含量はLDDとDがLDBとBより有意に多く、ドリップロスではBがDとLDDより優れたが、加熱損失率ではDとBがLDDとLDBより優れた。物理的特性値であるTendernessは品種間および性間で有意差が認められなかった(表2)。

4.

皮下脂肪内層と外層脂肪酸組成及び融点も交雑豚は純粋種の影響を受け、LDBとBはLDDとDに比べパルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)などの飽和脂肪酸が多く、オレイン酸(C18:1)やリノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)等の不飽和脂肪酸が少なかった。そして、内層、外層とも脂肪融点はLDBとBがLDDとDより有意に高かった(表3)。

5.

1,2回目の食味テストでは香り、マーブリング、総合評価でLDD>LDB>B、3と4回目の食味テストでは軟らかさ、多汁性、柔軟性、マーブリング、総合評価からD>B>LDD=LDBの傾向が示唆された(表4)。食味テストの結果を肉質形質の品種比較結果と関連させると軟らかさ、筋肉内脂肪に加え加熱損失率が重要な形質であることが示唆された。

[成果の活用面・留意点]

1.

バークシャー種はエネルギー含量の低い飼料あるいは制限給餌で飼育すべきだが本試験では通常の肉豚用飼料(TDN77-78%)を使い肥育したため、バークシャー種およびLDBの脂肪蓄積が多かったことに留意。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:

スーパーデユロック豚を利用した高品質豚肉生産に関する試験

予算区分:

県単

研究期間:

1997〜2001年

研究担当者:

鈴木啓一、門脇宏、豊島たまき、阿部博行、柴田知也

発表論文等:

Meat Science誌投稿中


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