研究所トップ研究成果情報平成13年度

帰化雑草ハルザキヤマガラシの東北水田地帯における分布と拡散経路


[要約]
ヨーロッパ原産の帰化雑草ハルザキヤマガラシは、東北全県に広く分布し、定着している。種子の3割程度は2年間の水中貯蔵後も発芽力を有し、河川や用排水路が拡散経路の一つである。
[キーワード]
帰化雑草、ハルザキヤマガラシ、分布、拡散経路
[担当]東北農研・水田利用部・雑草制御研究室
[連絡先]0187-66-2771
[区分]東北・雑草
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
近年、輸入飼料・農業資材とともに数多くの外来植物が我が国の農耕地に侵入定着し、農業に被害を与えている。海外で小麦やアルファルファ等の減収の原因となっている北方系の帰化雑草ハルザキヤマガラシは明治時代に渡来したとされるが、東北地方の転換畑において発生が認められる。その分布拡大による問題の広域化が懸念されることから、東北の水田地帯における分布状況、さらに秋田県仙北地域における生育場所等を調査し、発生の実態を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
 
1. アンケート調査によるとハルザキヤマガラシは、1993年頃に既に東北全県に発生したとされており、2001年の実態調査でも東北全県に広く分布し、定着している(図1)。
2. 秋田県仙北地域における2001年の発生状況を1994年と比較すると、高密度発生地点は増えていないが、発生確認地点が多く、発生地点は増加している(図2)。両調査年とも河川周辺および用排水路周辺の水田畦畔・道路端における発生が多い(表1)。
3. ハルザキヤマガラシ種子の3割程度は2年間の水中貯蔵後も発芽力を有する(表2)。秋田県仙北地域において、用水整備などで畦畔に上げられた用排水路底の土からハルザキヤマガラシの発生が確認されている(データ略)。
4. ハルザキヤマガラシは東北地方において年々その分布を拡大しているが、河川や用排水路がその重要な拡散経路の一つである。
[成果の活用面・留意点]
 
1. ハルザキヤマガラシの分布と拡散経路に関する知見は拡散防止法を作成する際に参考となる。
2. 今後転換畑が増加した場合にハルザキヤマガラシが侵入し、蔓延する可能性がある。
[具体的データ]
 
   
[その他]
研究課題名: 前作作物残さ被覆による雑草発生抑制効果の解明と被覆技術の開発(一部特研「強害雑草」)
予算区分: 交付金
研究期間: 1993〜2003年度
研究担当者: 橘雅明、伊藤一幸(農環研)、渡辺寛明
発表論文等: Tachibana and Itoh (1997) International Workshop on Biological Invasions of Ecosystem by Pests and Beneficial Organisms Proceedings :282-295