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高アミロース小麦の澱粉特性


[要約]
高アミロース小麦の澱粉は通常の小麦よりアミロース含量は約9%高い37%で、アミロペクチンの鎖長分布が変異しており、澱粉は結晶性を消失している。また、澱粉の膨潤度が低下し、ラッピドビスコアナライザーによる最高粘度なども低い。
[キーワード]
小麦、澱粉、高アミロース、糊化特性
[担当]東北農研・作物機能開発部・資源作物育種研究室
[連絡先]019-643-3655
[区分]東北農業・畑作物
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
小麦澱粉粒に結合したタンパク質SGP−1は澱粉合成酵素Starch Synthase IIであり、これを小麦が欠失すると小麦粉の澱粉は高アミロース化する。しかし、高アミロース小麦の澱粉構造や特性については未知であったので、その解明をねらいとする。
[成果の内容・特徴]
 
1. 高アミロース小麦の澱粉は変形し、種子の澱粉含量は約49%と少なく、青価が高い。アミロース含量は通常の小麦より約9%高い37%である。(表1)。
2. 陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC−PAD)によると、アミロペクチンの重合度6〜10の鎖が増加し、重合度11〜25の鎖は減少しており、短い鎖が多くなっている(図1)。
3. 示差走査熱量分析(DSC)のアミロペクチンに由来する吸熱ピークが検出できないこと、X線回折でピークがないため結晶度を算出できないこと(表2)、偏光顕微鏡による偏光十字が澱粉粒に現れないことから、高アミロース小麦の澱粉は結晶性を失っている。
4. 澱粉を用いたラッピドビスコアナライザー(RVA)分析の最高粘度、最低粘度、最終粘度が低く、膨潤度は低下し(表3)、新規な糊化特性を示す。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 小麦粉の新規用途を開発するための素材として活用できる。
2. 本小麦の高アミロース性などの澱粉特性は3つの遺伝子(Sgp-A1、Sgp-B1、Sgp-D1)によって支配されている。
[具体的データ]
 
 
 
 
[その他]
研究課題名: 小麦澱粉の構造改変のための新規育種素材の開発
予算区分: 21世紀プロ
研究期間: 1999〜2001年度
研究担当者: 山守誠、加藤晶子、由比真美子、藤田修三(三重短大)、早川克志(日清製粉)、松木順子(食総研)、安井健(近農研)
発表論文等: (1)Yamamori et al. (2000) Theor. Appl. Genet. 101:21-29
(2)山守(2001) 農業技術56 :363-367