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大豆のイソフラボン含量の品種間差と栽培条件の影響

[要約]
大豆子実中のイソフラボン含量およびその年次間変動には品種間差が認められる。含量は子実肥大期の気温に大きく左右され、枝豆適期前後の低温処理で高くなる。多くの品種で普通畑晩播、水田転換畑標播、普通畑標播の順で含量が高いことから、品種および栽培条件の選定で、高位安定イソフラボン含有大豆が生産できる。
[キーワード]
  大豆、イソフラボン、気温、含量変動、品種、栽培条件
[担当]東北農研・水田利用部・大豆育種研究室
[連絡先]電話0187-75-1043、電子メールsakat@affrc.go.jp
[区分]東北農業・畑作物、作物・夏畑作物
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
水田での本作化に伴い、生産量が急増し価格が低下傾向にある大豆作では、より高付加価値な大豆生産への要望が強い。大豆子実中に含まれるイソフラボン類は抗ガン作用、抗コレステロール作用および骨粗鬆症等に対し薬理効果を示す機能性成分として大きく注目されている。しかし、その含量は年次間・栽培環境等による変動が大きいため、大豆子実自体の付加価値として十分な評価は得られていない。高位安定イソフラボン含有大豆の生産に資するため、品種と栽培条件がイソフラボン含量に与える影響を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
 
1. イソフラボン含量には開花期以降、莢最大伸長期から2週間目まで(開花〜子実肥大初期)の低温処理の影響はみられなかったが、子実の充実する枝豆適期前後の低温処理で高くなる(表1)。
2. 一般的に転換畑標播(5月下旬〜6月上旬播種)、普通畑標播(5月下旬播種)より普通畑晩播(6月下旬〜7月上旬播種)では含量が高く年次間変動も少ない。また、’99年度の全品種平均の収量は普通畑晩播で普通畑標播の約10%減収であったが、含量は約40%増であった。
付加価値の高い高位安定イソフラボン含有大豆の生産には晩播栽培が有効である(図12)。
3. 晩播栽培で含量が高まるのは、他の栽培条件下よりも枝豆適期前後の気温が低くなるためと考えられる。
4. いずれの栽培条件下でもふくいぶきの含量が高く、また、スズユタカはタチユタカより高位安定しており、年次間変動も少ない。このことから、高位安定イソフラボン含有子実の生産にあたっては品種選定が最も重要である(図12)。
5. イソフラボン含量に及ぼす栽植密度の明確な影響は認められない。
[成果の活用面・留意点]
 
1. イソフラボン含量は晩播栽培によって高まるため、通常より大豆の播種時期が遅い大豆−麦類輪作体系等では、付加価値の高い高イソフラボン大豆の生産が期待できる。
また、栽植密度のイソフラボン含量への影響は認められないことから、晩播栽培による収量低下は栽植密度を高めることで、ある程度補えると期待される。
2. イソフラボン含量の変動に及ぼす栽培条件を把握することで、高位安定大豆品種の選抜・育成に活用できる。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 高位安定イソフラボン含有遺伝資源の探索・評価と系統育成
予算区分: 21世紀2系
研究期間: 2002〜2005年度
研究担当者: 境 哲文、黒崎英樹(道立十勝農試)、河野雄飛、高田吉丈、島田信二