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移行抗体残存期における豚マイコプラズマ性肺炎ワクチンの効果

[要約]
豚マイコプラズマ性肺炎ワクチン接種時に移行抗体が残存していた群と残存していなかった群において、と畜体重(110kg)到達日齢では移行抗体が残存していた群の方が約12日間短かった。また、両群の肺病変保有率は同レベルであった。
[キーワード]
  MPSワクチン、移行抗体
[担当]山形県立養豚試験場
[連絡先]電話0234-91-1255、電子メールyotonshi@pref.yamagata.jp
[区分]東北農業・畜産
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
Mycoplasma hyopneumoniae(以下、Mhp)の移行抗体が残存している時期の子豚に豚マイコプラズマ性肺炎(以下、MPS)ワクチンを接種した場合、その効果が低下するとの報告が多数ある。しかし、野外では移行抗体の残存時期とされる1および3週齢あるいは2および4週齢で同ワクチンを接種しており、報告と矛盾する状況となっている。そこで、L種の供試豚34頭に対し生後1および3週齢で同ワクチンを接種し、3週齢の時点でMhpの移行抗体が残存していた群(16頭)と残存していなかった群(18頭)の成績を比較して、移行抗体残存期間中における同ワクチン接種の有効性を検証した。
[成果の内容・特徴]
 
1. 移行抗体が残存していた群ではワクチン接種後の抗体価の上昇は認められなかったが、移行抗体が残存していなかった群ではワクチン接種2週間後に18頭中10頭(55.6%)が陽転していた。(図1
2. と畜体重(110kg)到達日齢では、移行抗体が残存していた群が残存していなかった群に比べ約12日間と有意に短かったが、肺病変保有率では有意差は認められなかった。(表1
3. 移行抗体の残存レベルの高低と肺病変保有との間に関連性は認められなかった。(表2
4. 移行抗体が残存していなかった18頭中、同ワクチン接種後も抗体が陰性であった個体は8頭で、うち肺病変を保有していたのは1頭のみであった。(表3
[成果の活用面・留意点]
 
1. 同ワクチンの接種率向上によって、豚呼吸器複合病(PRDC)による事故率の低減が期待できる。
2. 同ワクチンを用いる場合には、農場のPRRSウイルス等の動態把握およびワクチンプログラムに留意する必要がある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 豚マイコプラズマ性肺炎(MPS)へのワクチン4剤の効果
予算区分: 県単
研究機関: 2000〜2001年度
研究担当者: 須藤英紀、齋藤常幸、五十嵐宏行
発表論文等: 須藤ら(2002)日本養豚学会誌 39(2):125