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リンゴ樹の季節現象から推定するトビハマキ越冬幼虫のまゆ脱出時期
[要約]
トビハマキ越冬幼虫のまゆ脱出時期は、リンゴ樹の季節現象の早晩とほぼ同調し、「ふじ」の展葉期から始まり、開花期までに終了する。リンゴの1回目の薬剤散布時期である「展葉1週間後頃」におけるリンゴコカクモンハマキを対象とした薬剤散布は、トビハマキの越冬世代幼虫に対する防除効果が高い。
[キーワード]
トビハマキ、越冬幼虫、リンゴ、発生予察、交信攪乱
[担当]
青森農林総研・りんご試・病虫部
[代表連絡先]
電話0172-53-6132
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
トビハマキは交信攪乱剤による防除効果が低く、交信攪乱剤を利用した害虫管理体系下では増加が懸念されるため、その防除対策の確立が重要である。本種は樹皮のしわなどに薄いまゆを作り、その中で幼虫で越冬する。幼虫越冬性のハマキムシ類の防除は、越冬後にまゆから脱出し、葉などの寄生部位へ移動を開始した幼虫を対象に行うので、効果的な防除のためには越冬幼虫のまゆからの脱出時期を知ることが不可欠である。そこで、トビハマキ越冬幼虫のまゆ脱出時期を明らかにするとともに、その時期を簡易に推定するため、リンゴ樹の季節現象との関係を解明する。
[成果の内容・特徴]
- トビハマキ越冬幼虫のまゆからの脱出は、リンゴ「ふじ」の展葉期から始まり、開花期までに終了する(図1)。
- トビハマキ越冬幼虫のまゆからの脱出時期は、リンゴ樹の季節現象の早晩(表1)とほぼ同調する(図1)。
- 青森県におけるリンゴの1回目の薬剤散布時期である「ふじの展葉1週間後頃」は、トビハマキ越冬幼虫のまゆ脱出率が57〜78%に達した時期にあたり(図1)、この時期にリンゴコカクモンハマキ防除剤として使用する殺虫剤は、トビハマキに対しても効果が高い(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- これまで明らかになっていなかったトビハマキ越冬幼虫の活動開始期をリンゴ樹の季節現象から把握できる。
- 交信攪乱剤を利用した防除体系で増加が懸念されるトビハマキの効率的な補完防除時期が提示されることで、交信攪乱剤を基幹とした害虫管理技術の活用促進及び安定化が期待できる。
[具体的データ]



[その他]
- 研究課題名
- 東北地域における農薬50%削減リンゴ栽培技術体系の確立
- 予算区分
- 農薬削減リンゴ
- 研究期間
- 2006〜2008年度
- 研究担当者
- 石栗陽一、櫛田俊明、木村佳子、雪田金助
- 発表論文等
- 石栗(2007)北日本病虫研報、58:166-169