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収穫期に樹上凍結したリンゴ「ふじ」果実の取り扱い方法
[要約]
こうあ部に裂果を生じた果実が樹上凍結すると、収穫後の早い時点で果肉褐変が発生しやすいため、生食用として流通させないようにする。また、こうあ部に裂果がみられない果実でも、生食用としての流通は年内のできるだけ早い時期とする。
[キーワード]
リンゴ、ふじ、樹上凍結、品質、貯蔵性
[担当]
青森農林総研・りんご試・栽培部
[代表連絡先]
電話0172-52-2331
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
収穫期に樹上凍結したリンゴ果実の品質や貯蔵性については不明な点が多く、これまでその取り扱い方法は明らかでなかった。2007年産「ふじ」において樹上凍結が発生した(表1)ため、果実品質と貯蔵性について調査し、取り扱い方法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- (1)凍結状態で収穫後、冷蔵庫内(0℃)で解凍した果実、(2)凍結状態で収穫後、倉庫内(2〜9℃)で解凍した果実、(3)樹上で自然解凍後に収穫した果実のいずれも、貯蔵後の品質は凍結発生前に収穫した果実と同等である(図1)。食味はシャキシャキ感がやや失われ、アルコール臭が感じられるものもあるが、極端に劣らない。
- 樹上凍結した果実の貯蔵後の果肉褐変の発生率は、樹上凍結発生前に収穫した果実よりも高い(図2)。なお、前述の収穫方法及び解凍方法の違いによる差はみられない(図
2)。
- 前述の収穫方法及び解凍方法の違いによって、品質や果肉褐変の発生に差はみられないが、収穫時の作業性(果実が凍結した状態で収穫すると滑りやすく落としてしまう等)を考慮すると、樹上凍結した果実は樹上で自然解凍した後に速やかに収穫することが望ましい。
- 外部裂果した果実や大きく内部裂果した果実は、収穫後の早い時点で果肉褐変の発生率が高いことから(図3)、生食用として流通させないようにする。
- こうあ部に裂果がみられない果実でも、収穫翌年の1月以降はみつ褐変等の果肉褐変の発生率が高いことから(図3)、生食用としての流通は年内のできるだけ早い時期とする。
[成果の活用面・留意点]
- 収穫期に樹上凍結した果実を適正に取り扱うことで、下等品の流通を防ぐことができ
る。
- 凍結した果実の流通は凍結していない果実と区別する。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 気象変動に対応できる栽培技術の確立
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2007年度
- 研究担当者
- 葛西智、工藤智、鈴木均、福田典明、浅利欣一
- 発表論文等
- 葛西ら(2008)東北農業研究、61:133-134