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建設業の農業参入プロセスと参入条件

[要約]

建設業の農業参入では、シナジー効果を高めるような作目等の選択と経営資源の調達が条件になる。参入企業は、農業の発展段階に応じて、農業生産法人形態を選択し、賃金水準を農業労賃に調整することにより、建設従業員を農業部門で利用できる。

[キーワード]

建設業、企業参入、プロセス、参入条件、農工間賃金格差

[担当]

東北農研・東北地域活性化研究チーム

[代表連絡先]

電話019-643-3490

[区分]

東北農業・基盤技術(経営)、共通基盤・経営

[分類]

行政・参考

[背景・ねらい]

農業労働力の高齢化が進み、農業従事者の不足が深刻となる中で、耕作放棄地を解消するために農外企業の農業参入が認められつつある。特に、公共事業の縮減が地域経済に大きな影響を与える東北地域などでは、建設業の受注額減少への対応策として農業参入が注目されていることから、建設業の土地利用型農業への参入条件を明らかにすることが求められている。そこで、北東北地域における建設業の参入事例の分析結果に基づき、企業の農業参入プロセスを営農に関わる意思決定のステップとして定式化し、各プロセスにおける意思決定のための考慮事項や具体的方策を検討した上で、参入条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 農業への参入企業は新規参入であることから、参入理由が明確であり、農業参入はここからスタートする(図1)。営農に関わる最初の意思決定のステップは「参入形態の選定」であり、続いて「作目等の選択」、そのために必要な「経営資源の調達」、「販路の選定・開拓」が行われ、営農が始まる。その結果として成果が生まれ、課題が明らかになる。課題は「作目等の選択」にフィードバックされ、営農改善のループを形成する。また、課題が「参入形態」の変更に結びつく場合もある。
  2. 公共事業縮減に伴う受注額減少への対策が共通する参入理由であり、その方策が農業分野進出による従業員の雇用確保としてあらわれる(表1)。「参入形態の選定」には農業生産法人と特定法人があり、それらは農地集積のあり方に関わる。また、本格的に参入する場合は前者あるいは後者、試行的に参入する場合は後者が適している。「作目等の選択」は工閑期労働力利用などシナジー効果の発揮できる作物、有機栽培等による自社・地域ブランドなど高収益が期待できる作物が対象になる。営農のために必要な「経営資源の調達」では労働力と機械についての本業との利用共同の実現、「販路の選定・開拓」では高収益販売の可能性がある直売や契約販売への取り組みが重要である。経営成果は有機や特栽など高度な生産技術の習熟度と販路により左右される。
  3. 農業への参入が成功するためには、後発企業としての独自市場の開拓や賃金の費用化への対応として高付加価値・高収益作物生産の確立が必要であり、そのためにシナジー効果が高まるような作目等の選択や経営資源の調達、建設従業員の農業利用、ならびに販路の選定・開拓が条件になる(図2)。また、建設従業員の農業利用の際に障害になる農工間賃金格差は、農業生産法人形態を選択し、賃金水準を農業労賃に調整することにより取り除くことができ、経営収支の均衡も図られる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 県庁等の行政組織が建設業の農業参入施策を策定する際の参考情報として活用できる。
  2. 北東北地域における建設業からの参入事例調査(7社)に基づき作成した。調査事例の経営収支は赤字基調であるが、地域農業の担い手として認知されている。なお、調査対象地域の一般的な建設賃金は農業賃金の5割高程度である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
北農業の動向解析に基づく新たな担い手像の解明と地域食材を活かした産地戦略による地域活性化手法の開発
課題ID
211-a.2
予算区分
基盤
研究期間
2006〜2008年度
研究担当者
鵜川洋樹
発表論文等
鵜川(2008)東北農業研究61:219-220.