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油かすの有機農家への販売は産地搾油ナタネの採算性を大きく改善する

[要約]

国産油かすは有機農家による50円/kgかそれ以上の価格での購入が期待できる。この価格で販売できればナタネ生産に要した物財費の約半分に相当する部分を回収でき、ナタネ栽培の採算性が改善し、ナタネ油の自家利用向け燃料化も視野に入る。

[キーワード]

ナタネ、油かす、供給コスト圧縮、バイオディーゼル、有機農業者

[担当]

東北農研・寒冷地バイオマス研究チーム

[代表連絡先]

電話019-643-3494

[区分]

東北農業・基盤技術(経営)、バイオマス

[分類]

行政・参考

[背景・ねらい]

国産ナタネは輸入ナタネとの競争で栽培面積が減少したが、近年バイオマス利用の関心の高まりから、新たに取り組む産地が増えている。しかし搾油した油は高価となり、販売に苦戦するケースが多い。この場合、副産物の油かすを有利販売できれば供給コストを圧縮できるが、油かすを商品化している産地は未だ少ない。ナタネを機械搾油する場合、乾燥時重量の70%程度の油かすが生じるため、油かすの販売は極めて重要である。輸入ナタネを原料とする肥料用油かすは40円/kg強(盛岡周辺店頭2008年)、エサ用油かすの工場納入価格も同様(全酪連聞き取り調査2007年)で流通しており、国産ナタネ油はその特徴を活かしたより有利な販売も考えられる。そこでナタネの生産振興のため産地搾油の油かす販売によるナタネ供給コスト圧縮効果を明らかにし、バイオディーゼルの自家利用の可能性を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 山形県金山町の転作集団の事例および統計資料から試算すると、50円/kgで販売できれば機械化されたナタネ栽培に要した物財費の約半分に相当する部分を回収することができる。また自家利用のために直接バイオディーゼル化した場合、市販の軽油価格に近い物財費とすることができる(表1)。
  2. 国産油かす利用に対して専業的あるいは副業・自給的有機農業者は非GM、国産、無農 薬といった点に強い興味があり(表2表3)、有機農家への油かすの販売が考えられ る。
  3. アンケート回答者の国産油かすを購入する場合の上限価格は、50円/kgと100円/kgを二つのピークとする分布となった(図1)。平均値は78.8円/kg であり、専業的有機農業者で65.56円/kg、副業・自給的有機農業者で80.75円/kgになる(10%水準で有意)。50円/kgはどちらの農業者にも受け入れられる水準である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 自治体やJA が新たにナタネ産地を育成する際の参考情報として活用できる。
  2. 物財費の算出は市町村等の施設を農家が利用して自ら搾油するケースを想定している。このとき、労働報酬は販売する食用油の価格に転嫁し、バイオディーゼルは自家労賃評価を無視して自家消費する事を想定した試算である。
  3. 専業的有機農業者が近隣・地域内にいない場合でも、副業・自給的有機農業者や自給野菜を有機栽培する者を見いだせる可能性がある。
  4. 油かす販売は地域内および隣接地域を想定して、流通経費を考慮にいれていない。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
寒冷地における未利用作物残さ等のカスケード利用技術の開発
課題ID
411-b
予算区分
基盤
研究期間
2008年度
研究担当者
野中章久
発表論文等
1)野中(2007)農業と経済73 (2):63-73.
2)野中(2009)東北農業研究センター研究報告110:187-198.