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卵低温保存によるアカヒゲホソミドリカスミカメ同日齢個体の確保

[要約]

コムギ幼苗に産み付けられたアカヒゲホソミドリカスミカメの卵を24時間ごとに回収し、まとめて4℃に保存後25℃で保温することにより、4日間の低温保存で約2.5倍、7日間保存で約3.5倍の成虫および幼虫をそれぞれ同一日に得ることができる。

[キーワード]

斑点米、アカヒゲホソミドリカスミカメ、卵低温保存、同日齢個体

[担当]

東北農研・斑点米カメムシ研究東北サブチーム

[代表連絡先]

電話019-643-3466

[区分]

共通基盤・病害虫、東北農業・基盤技術

[分類]

研究・参考

[背景・ねらい]

カメムシ類の吸汁加害による斑点米被害は全国的に問題となっており、特に、北海道、東北、北陸地域の水稲栽培におけるアカヒゲホソミドリカスミカメの加害は深刻である。したがって、本種の効果的な防除技術の開発が喫緊の課題となっているが、そのためには日齢の揃った個体を多数試験に供する必要がある。そこで、アカヒゲホソミドリカスミカメの同日齢個体を同一日に多数確保することを目的として、コムギ幼苗に産み付けられた卵の低温保存が孵化率および幼虫の生存や発育期間に及ぼす影響を調べ、その効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. コムギ幼苗への24時間の産卵で、通常飼育では7日目に全体の54%の幼虫、20日目に全体の51%の成虫が得られる(図1)。
  2. 卵を4℃に保存した場合、通常(非保存)飼育に対する孵化率の低下は4日間保存で8%、7日間保存で16%であるが、10日間以上の保存では50%前後の低下となる(図2)。
  3. 卵の低温保存は、幼虫の生存率や卵期間、幼虫期間に影響しない(表1)。
  4. 毎日同数個体を得られると仮定した場合の通常(非保存)飼育に比べて、最長4日間の低温保存で2.5倍以上の幼虫、2.3倍以上の成虫、最長7日間の保存で3.6倍以上の幼虫、3.4倍以上の成虫が同一日に得られる(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 特殊な機材を必要とせず冷蔵庫さえあれば、この方法をアカヒゲホソミドリカスミカメの防除技術を開発するための種々試験に簡便に用いることができる。
  2. 上記の数値は、約2年間室内で累代飼育された個体群および飼育条件(25±1℃、16L8D)によるものであるため、あくまで目安とする。野外から採集したばかりの個体群では発育期間がばらつく傾向があるため、同一日に得られる同日齢の個体数は、上記の数値から期待されるよりもやや減少すると予想される。
  3. 採卵間隔を短縮することにより孵化日や羽化日のばらつきが抑えられるため、上記の数値より多くの個体を同一日に得ることが可能である。例えば、12時間間隔で採卵した場合には、孵化幼虫の多くを保温後7日目に確保できることが期待される。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
斑点米カメムシ類の高度発生予察技術と個体群制御技術の開発
課題ID
214-g
予算区分
基盤、実用技術
研究期間
2006〜2008年度
研究担当者
櫻井民人、榊原充隆( 東北農研)
発表論文等
1)Sakurai and Sakakibara (2008) Appl. Entomol. Zool. 43 (3) :437-442